Job選択
朝。
エファス村は、いつもより慌ただしい空気に包まれていた。
村の警備兵たちは、すべての門で警戒に当たっている。
変異したMonsterの出現報告を受け、Guildからも何人かの冒険者が村へ到着し始めていた。
Eidenは自室の窓辺に立ち、外の様子を眺めている。
しかし。
頭の中にあるのは――
昨夜届いた、あのMessageだった。
《“Playerを名乗る者を――誰も信用するな。”》
その言葉が。
何度も頭の中で繰り返されている。
「本当に他にもPlayerがいるなら……」
「俺だけが元の世界から来たわけじゃないってことだ」
だが。
彼らは誰なのか?
なぜ、その中にはすでに人間ではない者がいると言われたのか?
そして。
あのMessageを送ってきた《Unknown》とは、一体何者なのか?
どの疑問にも――
まだ答えはなかった。
コン、コン。
「Eiden」
扉の向こうからEveの声が聞こえた。
「村長さんが呼んでるわよ」
「俺を?」
「ええ」
「Guildの人が、あなたに会いたいそうよ」
Eidenは少し驚いた。
「分かった」
「すぐ行くよ」
――――――――
エファス村の集会所。
中にはGuildの制服を着た冒険者たちが何人も集まっていた。
その中で。
Dariusが、一人の白髭の老人と話している。
老人は胸元にGuildの紋章が刻まれた、濃紺のコートを着ていた。
頭上には――
名前。
《Gareth》
Eidenは気づかれないようにSearch Barを開く。
《Gareth Holy World》
Enter。
――――――――
【Gareth】
役職:
Astera支部 Guild職員
Rank:B
専門:
Talent Appraisal
新米冒険者のJob Awakeningを担当するNPC。
――――――――
「Job Awakening……」
Eidenの目が僅かに輝いた。
Holy Worldでは。
一定の条件を満たすことで――
PlayerはJobを選択できる。
そして。
その条件の一つが。
Level 50へ到達すること。
「俺……条件を満たしてる」
Eidenに気づいたDariusが手を上げた。
「Eiden」
「こっちへ来い」
Eidenが二人のところへ向かう。
Garethは。
頭から足元まで。
Eidenをじっくりと観察した。
「ふむ……」
「この少年か?」
Dariusが頷く。
「ああ」
「俺が話していた子だ」
Garethは。
拳ほどの大きさがある透明なCrystalを取り出した。
「これを持ってみろ」
Eidenは言われた通り。
Crystalを手に取った。
その瞬間――
FLASH!
Crystalから。
強烈な金色の光が放たれた。
部屋全体が。
静まり返る。
「何だ!?」
一人の冒険者が声を上げた。
「Crystalが、あんなに強く光ってるぞ!?」
Garethでさえ。
驚きを隠せない。
「凄まじいManaだ……」
真剣な表情でEidenを見る。
「少年」
「お前のLevelはいくつだ?」
Eidenの心臓が。
一瞬。
強く跳ねた。
本当のLevelを。
言えるはずがない。
「……分かりません」
「何?」
「自分のLevelを見ることができないので」
それは。
十分に通用する言い訳だった。
この世界の普通の住人には――
EidenのようなUIは存在しない。
Garethも。
ゆっくり頷いた。
「確かにな」
もう一度Crystalを見る。
「ならば……」
Eidenを見る。
「Awakeningを行う条件は満たしている」
その瞬間。
TING!
Eidenの目の前に――
System通知。
――――――――
【System】
条件を達成しました。
Job機能が解放されました。
――――――――
「……!」
Eidenは表情を変えないようにしながら。
新しく追加されたMenuを開いた。
そこには。
大量のJob。
・Swordsman
・Knight
・Mage
・Archer
・Assassin
・Priest
・Spearman
・Berserker
・Alchemist
そして。
まだ。
数え切れないほどのJobが並んでいる。
だが――
「……?」
一番下。
そこにだけ。
明らかに他とは違うJobがあった。
文字の色は。
金。
《???》
「何だこれ?」
Eidenが触れる。
すると。
文字が――
ゆっくり変化した。
《Searcher》
「……」
見たことがない。
Holy Worldを遊んでいた頃にも。
一度も。
聞いたことのないJob。
EidenはすぐにSearch Barを開いた。
《Searcher Job Holy World》
Enter。
《検索結果:0》
「……?」
もう一度。
《Hidden Job Searcher》
Enter。
やはり。
《検索結果:0》
「このJob……」
「Internetにも情報がない?」
つまり。
可能性は二つ。
まだ誰一人として発見したことのないHidden Job。
あるいは――
そもそも。
Game版Holy Worldには。
存在していなかったJob。
その時。
《Searcher》の下へ。
新しい説明文が表示された。
――――――――
【Hidden Job】
Searcher
《Search Systemによって認められた者だけが取得できる専用Job》
【主な能力】
・Search Bar機能拡張
・Monster Analysis
・Item Analysis
・Lie Detection
・Hidden Search
――――――――
Eidenの目が大きく開いた。
「このJob……」
「完全に俺のために作られてるじゃないか」
このHoly Worldで。
Search Barを持っている人間は。
自分以外には――
いない。
つまり。
このJobを取得できるのも。
おそらく。
自分だけ。
Eidenに迷いはなかった。
《Searcher》
選択。
TING!
――――――――
【Congratulations】
Hidden Jobを取得しました。
《Searcher》
――――――――
その瞬間。
Eidenの身体を。
薄い光が包み込んだ。
爆発はない。
派手なTransformationもない。
だが。
確かに。
身体の中で――
何かが変わった。
Search Barを見る。
そこには。
今まで存在しなかったMenuが追加されている。
《Analyze》
《History》
《Bookmark》
《Scan》
「……」
Eidenの口元に。
小さな笑みが浮かんだ。
「ますます面白くなってきた」
この世界で。
力とは――
剣や魔法だけではない。
情報も。
使い方次第では――
武器になる。
――――――――
同じ頃。
あの謎の洞窟。
その最深部。
黒いRobeを纏った男が。
ゆっくりと。
自分のUIを開いた。
そこには――
新しい通知。
――――――――
【WARNING】
Hidden Job《Searcher》が
別のPlayerによって発見されました。
――――――――
「……」
男の顔から。
笑みが。
ゆっくり消えていく。
「……そうか」
「ついに……」
拳を握る。
「……手に入れたか」
そして。
視線を上げる。
「なら……」
「俺も、もっと早く動く必要がある」
男の背後。
Demon Manaを放ち続ける黒いCrystalが――
これまで以上に激しく脈打った。
ドクン。
ドクン。
ドクン。
まるで。
これから始まる。
大きな戦いを――
告げているかのように。




