↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
15/29

もう一人のPlayer

Eidenの足が――


ぴたりと止まった。


「……Player?」


洞窟の奥から聞こえた小さな声が――


まだ耳の中に残っている。


「勇者」ではない。


「人間」でもない。


ましてや。


この世界の住人が使う言葉でもない。


Player。


それは――


Eidenがいた元の世界でしか使われないはずの言葉だった。


「Eiden?」


Dariusが振り返る。


Eidenが後ろについてきていないことに気づいたらしい。


「どうした?」


Eidenはすぐに洞窟から視線を逸らした。


「いや……」


「何か聞こえた気がしただけ」


「聞こえた?」


Dariusが眉をひそめる。


「俺には何も聞こえなかったぞ」


「……」


つまり。


あの声を聞いたのは――


自分だけ。


Eidenはもう一度。


洞窟の入口へ視線を向けた。


だが。


先ほどまで暗闇の中からこちらを見ていた――


二つの赤い目は。


もう。


どこにもなかった。


まるで。


すべてが――


幻だったかのように。


「行くぞ」


Dariusが強い口調で言う。


「ここは危険すぎる」


Eidenは頷いた。


「うん」


二人は――


その場を離れた。


だが。


村へ戻るまでの間。


Eidenの頭は――


まったく落ち着かなかった。


もし。


本当に他にも――


「Player」という言葉を知っている人間がいるのなら。


これまで。


あり得ないと思っていた可能性が――


現実になる。


もしかすると。


自分は――


一人ではない。


――――――――


夕方。


EidenとDariusは――


ようやくエファス村へ戻った。


二人の姿を見た途端。


何人かの村人たちが――


すぐに集まってくる。


「Dariusさん!」


「森はどうでした?」


Dariusは――


落ち着いた表情を作った。


「Monsterは増えている」


「だが――」


「今のところ、村へ近づいている個体はいない」


Slime King。


そして。


あの洞窟。


その二つについては――


意図的に話さなかった。


村人たちを――


必要以上に不安にさせないためだ。


村長が安心したように頷く。


「それなら良かった」


「今夜も――」


「警備は強化しておこう」


Dariusも頷いた。


「それがいい」


簡単な報告を終えると。


Dariusが――


Eidenの肩を軽く叩いた。


「今日は助かった」


「お前がいてくれて――」


「かなり助かったよ」


Eidenが小さく笑う。


「どういたしまして」


「ただ……」


Dariusが――


しばらくEidenを見る。


「一つだけ――」


「まだ聞きたいことがある」


Eidenの心臓が――


再び強く鳴った。


「聞きたいこと?」


「ああ」


Dariusが――


真っ直ぐEidenを見る。


「どうして――」


「Corrupted Slimeの弱点を知っていた?」


「……」


ついに。


その質問が――


来た。


Eidenも。


いつか聞かれるだろうとは思っていた。


もちろん。


Search Barで調べた――


なんて。


言えるはずがない。


「それは……」


Eidenは――


少し考える。


そして。


できるだけ自然な表情で答えた。


「父さんの古い本で――」


「昔、読んだことがあるんだ」


「父さんはMonsterの情報を――」


「よく記録してたから」


嘘。


だが。


表情は――


できるだけ変えない。


Dariusは。


少し黙った。


「その本は――」


「今どこにある?」


「……燃えた」


Eidenは――


すぐに答えた。


「俺が小さい頃――」


「家で小さな火事があって」


Dariusが――


数秒間。


Eidenの顔を見つめる。


そして。


薄く笑った。


「そうか」


「信じるよ」


そう言ったものの。


その目には――


まだ僅かな疑いが残っていた。


――――――――


夜。


Eveと夕食を済ませたあと。


Eidenは――


自分の部屋へ戻った。


扉を閉め。


鍵をかける。


そして。


すぐにUIを開いた。


「Open UI」


透明なWindowが現れる。


時間を無駄にせず。


Search Barへ。


今回。


入力した言葉は――


一つ。


《Player》


Enter。


大量の検索結果が――


画面に表示された。


しかし。


ほとんどは。


元の世界に存在していた――


Holy WorldのPlayerについての記事。


Gameの中へ閉じ込められた人間。


転生した人間。


そういった情報は。


一つもない。


「うーん……」


次の言葉。


《Holy Worldへ転生した人間》


検索。


結果――


なし。


「……」


そこで。


Eidenは。


洞窟で聞いた言葉を――


思い出す。


《……最初のPlayerが到着した……》


その文章を。


そのまま。


Search Barへ入力した。


《最初のPlayerが到着した》


Enter。


すると。


Guugleの画面が――


数回点滅した。


「……?」


すべての検索結果が。


突然――


消える。


画面が――


真っ黒になった。


「何だ……?」


数秒後。


黒い画面の中央へ――


白い文字が現れる。


《Access Detected.》


Eidenの目が細くなる。


次の文字。


《Administrator Serverへ接続中……》


「……は?」


Server?


Administrator?


心臓が――


さらに速く鳴る。


そして。


新しいMessage。


《Verification Failed.》


《Access Authority Insufficient.》


《Session Closed.》


次の瞬間。


画面は――


元のSearch Barへ戻った。


「……今のは何だ?」


Eidenは。


同じ文章を――


もう一度検索する。


《最初のPlayerが到着した》


Enter。


だが。


今度は――


何も起きない。


普通の検索結果。


さっきの現象が――


最初から存在しなかったかのように。


「Administrator……」


Eidenが呟く。


どう考えても。


Fantasy世界には――


似合わない言葉。


むしろ。


Online Gameの――


System管理者。


そちらの意味に近い。


「つまり……」


Eidenは――


画面を見る。


「この世界そのものが――」


「本当にSystemで動いてる……?」


その考えを整理するより先に。


TING!


新しい通知。


――――――――


【新機能解放】


Inbox


――――――――


「Inbox?」


こんなMenu。


今まで――


なかった。


Eidenは。


迷わず開く。


中には――


一件だけ。


Message。


送信者。


《Unknown》


「……」


本文は。


とても短かった。


《“Playerを名乗る者を――誰も信用するな。”》


Eidenの表情が――


固まる。


そして。


次の文章。


《“その中には――すでに人間ではない者もいる。”》


「……何?」


Eidenは。


画面を凝視する。


だが。


意味を理解するより先に。


Messageが――


薄くなっていく。


「待て!」


指を伸ばす。


だが。


遅い。


Messageは――


完全に消えた。


まるで。


最初から――


存在していなかったかのように。


部屋に――


再び静寂が戻る。


Eidenは。


真剣な表情で――


UIを見続けていた。


もし。


本当に――


他にもPlayerが存在するのなら。


その全員が。


味方とは――


限らない。


むしろ。


その中には。


今まで出会ったどんなMonsterより――


危険な存在がいるのかもしれない。


――――――――


同じ頃。


あの謎の洞窟。


その。


さらに奥深く。


黒いRobeを纏った男が――


透明なSystem Windowを閉じた。


そして。


小さく笑う。


「……会う時まで」


「まだ生きていろよ――」


「Eiden」


男の背後。


数十体のCorrupted Slimeが――


従順に跪いている。


そして。


ひび割れた石の玉座。


その上では――


黒いCrystalが。


ゆっくりと。


脈打っていた。


ドクン。


ドクン。


そこから放たれる――


濃密なDemon Mana。


そのEnergyは。


今も。


東の森全体へ――


広がり続けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。