第77話:砕かれた自我と傀儡の完成
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前回までのあらすじ:神田への嘘を口にしつつ佐藤の上で自ら狂乱的に腰を振り後背位でも蹂躙された陽菜が、その不実と隷属の全貌を覗き見た神田の精神を完全に崩壊させる一方、佐藤は夜のギルド長室で心酔しきったカティアの忠誠を受け、エンデ掌握の盤面を確固たるものに仕上げた。
それでは、第77話をお楽しみください。
※本作は規約遵守のR15作品です。過激な描写にご注意ください。
エンデという名の街に足を踏み入れてから、十一回目となる眩い朝の陽光が、宿屋「グリューネ・ラテルネ」の薄汚れた窓硝子を白く塗り潰していた。
薄い壁を隔てた外の世界――冒険者ギルド「エンデ支部」や併設された酒場から流れてくる喧騒は、この薄暗い部屋にまで容赦のない毒となって染み込んできていた。
「佐藤悠」という、元の世界では同じアパートに住んでいた冴えない配送員に過ぎなかった男の名が、今や街の最高権力者の一角であるバルト侯爵家の次女・クラリス令嬢を囲い込み、冷徹無比で知られるギルド長カティアからさえも「街の将来を左右する存在」と絶賛されているという、狂った現実。
耳を塞ぎたくなるようなその噂話以上に、神田英雄の心を完全に叩き割っていたのは、昨夜、彼自身がこの目で目撃してしまったあまりにも凄惨な光景と、その後に自らの部屋で繰り広げられた、決定的な破滅の儀式だった。
――時計の針を、昨夜の情事の直後へと巻き戻す。
佐藤の部屋から戻ってきた石堂陽菜は、何事もなかったかのように、神田と共有している薄暗い部屋の扉を開けた。
神田はベッドの上で膝を抱え、まるで幽霊でも見るかのような虚ろな目で彼女を見つめていた。衣服は整えられているものの、陽菜の肌からは、先ほどまで別の男の部屋でたっぷりと浴びてきた、生々しく濃厚な熱気が微かに漂っている。その事実に、神田の胸は張り裂けそうだった。
「あ、神田くん、起きてたんだ? ちょっと佐藤さんとお仕事のお話をしててさ……」
陽菜は持ち前の天然なノリでそう言うと、悪びれもせずベッドに腰掛け、神田の腕にすがりついてきた。その無防備な笑顔の裏にある残酷な隠し事に、神田の悲鳴が上がる。目の前の女は、ついさっきまで床に跪き、佐藤の圧倒的な力に魂まで支配されていたのだ。それだけではない。佐藤の猛りに自ら貪欲に腰を打ちつけ、歓喜に身体を震わせていたのだ。自分を救ってくれた恩人と呼びながら、その実、心の底では佐藤の暴力的な快楽に魂まで売り渡している。
「陽菜……っ」
込み上げる激しい嫉妬と、彼女を自分の元へ繋ぎ止めたいという狂おしいほどの焦燥感が、神田を突き動かした。彼は陽菜の細い腕を強引に引っ張ると、そのままベッドの上へと激しく押し倒した。
「なに?……どうしたの?」
陽菜がそう言い切るよりも早く、神田は自らの唇で彼女の口を完全に塞いだ。遮二無二その唇を奪う、激しく貪るような接吻。すぐさま神田の手は彼女の衣服のボタンを乱暴に外していき、露わになった乳房を直接、形が歪むほどに必死に揉みほぐした。配置を確かめる余裕もなく、その先端の乳首を指先で強く捏ね回す。
「痛っ!……ちょっとやめてよ……っ」
陽菜が顔をしかめて明確に拒むものの、焦燥感に駆られた神田は聞く耳を持たず、容赦なくその身体を責め立てた。左手が乳首を執拗に捏ね回すと同時に、右の乳首を貪るように口にする神田。必死にその肢体を貪るものの、それは神田への愛によるものではなく、先ほど別の男に徹底的に支配された名残に過ぎない。
神田の必死すぎる愛撫を受けながら、陽菜の脳裏に、先ほどまでいた部屋での佐藤の言葉がふとよぎった。
『陽菜、部屋に戻ったら神田に抱かれてやれ。あいつの哀れなプライドを、お前のその身体でせいぜい慰めてやるんだな』
絶対者である佐藤から下された、残酷な命令。それを思い出した瞬間、陽菜の頑なだった身体からすっと力が抜けた。神田への愛ではなく、ただ「佐藤に言われたから」という理由だけで、彼女は目の前の哀れな男を受け入れるスイッチを入れたのだ。
陽菜はふっと表情を和らげると、胸を舐める神田の頭を撫でながら、そっと声をかけた。
「神田くん。ごめんね。ここに来てから、シてなかったもんね。いいよ」
そう言って、陽菜のほうから神田の唇に優しくキスを交わした。
「神田くんの好きにしていいよ」
それは、迷子をあやすかのような、あまりにも慈悲深く、そして決定的に冷めた受け入れの言葉だった。しかし、焦燥しきっていた神田は、その偽りの愛撫に完全に救われたような錯覚を覚えてしまう。彼女はまだ俺の女だ、という歪んだ全能感が脳内を支配した。
「……じゃあ、後ろ向いて、四つん這いになって」
神田は優越感を取り戻したかのような口調で、陽菜にそう指示を出した。陽菜は言われるがまま、自ら進んでベッドの上で四つん這いの姿勢を取り、衣服を広げていく。
神田はそんな陽菜に背後から覆い被さるように抱きつくと、その豊かな胸を乱暴に揉みしだきながら、顔を強引に後ろへと向かせて熱いキスを交わした。首をねじ曲げられ、不自然な姿勢で口づけを受け入れながらも、陽菜の瞳には神田を男として求める熱など一滴も宿ってはいなかった。ただ、佐藤の命令を淡々と遂行しているだけの空虚な従順さだった。
しかし、そんな彼女の冷ややかな内面に気づくこともなく、じっとりと濡れそぼったままの陽菜の最奥へ、神田は勝ち誇ったような笑みを浮かべ、自らの力を一気に挿入した。
激しくぶつかり合うような音はなく、神田はただ必死になって腰を抽送した。後ろから陽菜の細い腰をがっちりと掴み、何度も、何度も、自らの存在を彼女の肉体に刻み込もうと躍起になる。俺の女だ、佐藤のものじゃない、俺が救ったんだ――その必死の主張が、ただ無音の虚しい摩擦となって部屋に響く。
だが、神田がどれだけ汗を流し、激しく身体を動かそうとも、陽菜の口から漏れるのは、ただ形ばかりの、どこか上の空の吐息だけだった。佐藤に後ろから激しく支配された際、美しく背をのけ反らせて歓喜の声を上げていたあの狂おしい陶酔は、神田の突き上げからは一向に引き出される気配がない。
それどころか、陽菜は何度も繰り返される神田の単調な抽送に、次第に退屈そうな色さえ見せ始めた。
激しく腰を振る神田の真下で、陽菜はシーツに突っ伏した顔を横に向けて、悪びれることもなく、純粋に問いかけるように言った。
「指はもう……いいから、神田くんの挿れて?」
「――え?」
神田の動きがピタリと止まった。
耳を疑った。自らの力はすでに彼女の最奥を破らんばかりに深く挿入されており、何度も激しく突き上げている最中なのだ。それなのに、陽菜にとっては、この必死の抽送すらも、本番前の退屈な「指での前戯」程度にしか感じられていなかった。
佐藤悠という怪物の、規格外の太さと、子宮を直接押し潰すような圧倒的な力に脳まで調教されてしまった陽菜の肉体にとって、神田の平均的なサイズと青臭い突き上げは、中に入っていることすら自覚できないほどに物足りなく、刺激の薄いものでしかなかったのだ。
「あ、あれ……? もう挿入してたんだ……。ごめん、全然気づかなくて……」
陽菜が悪気もなくぽつりと呟いたその言葉が、神田の男としてのプライドを完全に粉砕した。
自分にとっては全力の、魂を込めた愛撫のつもりだった本番が、彼女にとっては「入っているかどうかも分からない」程度の、卑小な摩擦に過ぎなかったという絶望的な現実。
胸の奥からせり上がる敗北感と、佐藤に対する圧倒的な劣等感。その瞬間、神田の全身から急速に熱が引いていった。
陽菜の最奥に包まれていたはずの彼の力は、急激にその硬さを失い、しなびた肉の塊へと変わっていく。どれだけ奮い立たせようとしても、脳裏に焼き付いた佐藤の凶暴な力と、陽菜の冷めた視線が呪縛となり、二度と使い物にならないほどに萎縮してしまった。
「……あ、怒っちゃった? ごめんね、神田くん」
神田の力が完全に萎えてしまったことに気づき、自分の発言のせいで彼を傷つけてしまったのだと、陽菜は少しばかり責任を感じた。
彼女はベッドの上で四つん這いの姿勢のまま、神田の股間に顔を寄せると、そのしなびた肉の塊をそっと口に含んだ。先ほど佐藤の巨大な熱を貪ったときと同じように、今度は神田のモノを大きくしようと、必死に舌を動かして吸い上げ、健気に奉仕を試みる。
しかし、一度砕かれた神田の自尊心と恐怖心はあまりにも深く、彼女の口内がどれだけ温かく動こうとも、神田のモノが再び生命を宿すことはなかった。ピクリとも反応しない、ただ虚しい肉の塊。
「もういいよ……っ」
自分の無力さを極限まで突きつけられた神田は、羞恥と屈辱に耐えかね、泣き出しそうな顔で陽菜の身体を突き放した。男としての機能を完全に失った現実から逃げ出すように身を丸める神田を見て、陽菜はそれ以上追及するのをやめ、シーツを引き寄せた。
「ごめんね、神田くん。私、ちょっと疲れちゃったから、先寝るね」
陽菜はため息混じりにそう言うと、神田を置き去りにしたままシーツに潜り込んで目を閉じてしまった。そこには、男としての神田への敬意も、夜の営みへの期待も、何一つ残されてはいなかった。
静まり返った暗い部屋の隅、乱れた寝床の中で、十一日目の朝を迎えた神田は、泥にまみれた獣のように膝を抱えて身を丸めていた。
一度完全に機能しなくなってしまった自身の股間を、壊れた機械のように執拗に弄り続けてみるものの、いくら擦ろうが、脳裏をよぎる圧倒的な敗北感のせいで、二度と生命の灯がともることはなかった。涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃに濡らしながら、彼はただ虚空を見つめることしかできない。
どれほどの時間が経っただろうか。カチャリ、と静かに部屋の扉が開く音が響いた。
神田はびくりと身体を跳ね上げ、汚れきったシーツを引っつかんで自身の無様な姿を隠そうとした。しかし、部屋に足を踏み入れてきた影を見た瞬間、その指先は完全に凍りついた。
逆光を背負って現れたのは、ガタイの良い、それだけで周囲の空気を圧殺するような質量を感じさせる男――佐藤悠だった。
外へと出かけていった陽菜と入れ替わるようにして現れたその怪物の背後には、彼に従う所有物であることを証明するかのように、辻有美と辻亜美の姉妹が静かに佇んでいた。
特に妹の亜美は、昨夜、佐藤の部屋へと入っていく陽菜の後を、まるで惨めなストーカーのように陰からこっそりと追跡していた神田の姿をすべて目撃していた。その時の哀れな未練を知っているからこそ、亜美の瞳には憐れみの欠片すら含まれず、ただゴミを見るような冷徹な光だけが宿っている。姉の有美もまた、すべてを見透かすような冷たい視線で、床を這う神田を容赦なく射抜いた。
「……ずいぶんと励んでいるようだな、神田」
佐藤の低く地響きのような声が、狭い部屋の空気を一瞬で支配した。その目は、肥溜めに落ちた哀れな虫けらを見下ろすかのように冷然としており、唇の端には不気味な笑みが浮かんでいる。
「あ、あ……佐藤、お前……なんで、ここに……っ」
神田は虚ろな目を激しく泳がせ、喉を鳴らした。昨夜の陽菜との哀れな顛末すらも、この男にはすべて見透かされているのではないかという恐怖が、彼の全身を狂ったように震え出させる。
「陽菜が俺のところに来たぞ。お前は一人の女さえ満足させることもできないのか? 陽菜はお前を裏切り、俺の足元で従順な雌として這いつくばった。お前がどれだけ過去の絆を訴えようが、あの女が俺の圧倒的な力の前に蕩け、お前の貧弱な突き上げでは満足できない身体になった事実は変わらない。陽菜は俺の所に来たいそうだ。……お前には、あの女を繋ぎ止める力も、この街で成り上がる器量もないんだよ」
容赦のない、そして決定的な事実の宣告。神田は反論しようと口を張ったが、乾いた喉からは掠れた呼吸が漏れるだけで、何一つ言葉を紡ぐことができなかった。脳裏には、床に跪いて佐藤に従属の歓びを捧げていた陽菜の卑しい姿と、昨夜の冷酷なやり取りが何度もフラッシュバックし、そのたびに精神がズタズタに引き裂かれる。
「だが、安心しろ。俺はお前を殺しも放置もしない」
佐藤は冷徹に言い放ち、懐から一通の重厚な書状を取り出すと、床で這いつくばる神田の目の前へ無造作に放り投げた。
それは冒険者ギルドの最高印が押された、特定の魔物討伐に関する特級の依頼書だった。だが、これはまだ世に出ていない代物であり、街の誰もが知り得ない、まだ起きてもいない大事件の内容が克明に記されている。佐藤がギルド長カティアに圧力をかけて事前に無理やり作らせたものだった。
「お前には『英雄』になってもらう。近いうち、この街を揺るがすような獣の群れがやってくる。お前はその最前線に立ち、華々しく魔物を狩り、街の救世主として愚民どもからの崇拝と称賛を一身に浴びるんだ。最高に都合のいい、きらびやかな神輿としてな。……ただし、その糸を引くのは全て俺だけどな」
佐藤の昏い瞳が、神田の精神に残されていた最後の足場を完膚なきまでにすり潰していく。
陽菜を奪われ、コミュニティのすべてを掌握され、男としての機能すら完全に破壊された男。神田の瞳から完全に光が消え去り、濁った硝子玉へと変わっていく。
(ああ……俺は……)
声にならない思考が、神田の壊れかけた脳裏を虚しく駆け巡る。
突きつけられた残酷な依頼書をただ見つめながら、彼は自分という存在が完全に終わったことを痛烈に自覚していた。
(俺は……佐藤の、傀儡だ。俺は、お前の言う通りに動く、ただの……人形だ……)
完全な屈服、環境への完全な同化、精神の調教の完了。かつてアパートの住人たちから期待の眼差しを向けられ、この異世界転移の主役になるはずだった男は、自らの内側で静かに、完全に、佐藤の忠実な駒、都合のいい奴隷へと成り下がった。
「お前はもう俺の傀儡だ」
佐藤の冷徹な宣告が響き渡る。神田はもはや反論する力すらなく、ただ、虚ろな目で床の汚れを見つめてその言葉を内側で受け入れることしかできなかった。
「役に立てば、いくらでも好きな女を抱かせてやるよ。相手が受け入れればな。ことによってはコイツらだって可能だぞ」
佐藤はそう言って、自らの背後に佇む辻姉妹を顎で無造作に指し示した。
神田の濁った瞳に、かすかな、そして惨めな期待の光が一瞬だけ宿る。しかし、そんな男としての微かなあがきは、姉妹の冷酷な一言によって一瞬で叩き潰された。
辻有美は、床で這いつくばる神田を蔑みきった冷たい目で見下ろしたまま、吐き捨てるように言った。
「こんなやつ、こっちからごめんだわ」
一切の容赦のない、ゴミを見るような姉の拒絶。さらに追いうちをかけるように、一歩後ろにいた亜美も、哀れみすら含まない冷徹な視線を向けながら、静かに首を振った。
「……私もごめんなさい」
姉妹のあまりにも冷酷な言葉に、神田は言葉を失い、自らの無力さと価値のなさをこれ以上ないほどに突きつけられて、ただ絶望に身を震わせる。機能しなくなった股間を隠すように小さく丸まる神田の姿を見下ろし、佐藤は満足げに、そして不気味なほどの全能感を漂わせて豪語した。
「大丈夫だ。任せておけ。なんとかする」
佐藤は満足げに唇の端を吊り上げると、完全に自尊心をすり潰された神田の背を見下ろしたまま、有美と亜美を伴って部屋を後にした。
後に残されたのは、ただ薄暗い部屋の中で、虚空を見つめながら壊れた人形のように静かに震え続ける、哀れな英雄の残骸だけだった。
外では陽菜が、自分を満足させてくれる佐藤の次の呼び出しを心待ちにしながら、何も知らずに街を歩いている。これが、表と裏の絶望的な格差の、完全な始まりだった。
佐藤たちが部屋を後にしてから、宿屋の廊下には静寂が戻っていた。周囲に他人の気配がないことを確認しつつも、まだ神田の部屋に近い廊下であるため、辻有美は「佐藤さん」と呼びつつ、ふう、と小さくため息をついて佐藤の横顔を見上げた。
「佐藤さん、これで神田くんも完全にあなたの手の中ね。あそこまで徹底的に壊してしまえば、もう二度と反抗する意志すら持てないでしょう」
その言葉には、かつて同じアパートで暮らしていた青年への同情などは微塵もなく、ただ佐藤の計画が寸分の狂いもなく進行していることへの確信と、彼に対する深い傾倒だけが含まれていた。
「ああ。神田が名実ともにこの街の『英雄』として祭り上げられれば、ギルドも領主もあいつの動きを無視できなくなる。その英雄の行動指針が全て俺の意のままである以上、俺が直接表舞台に出る必要すらなくなるわけだ」
佐藤は冷徹な声を響かせながら、自身の『支配庫』の内部へと意識を向けた。その暗黒の空間の奥深くでは、これまでじっくりと時間をかけて育成し、肥大化させてきた不気味な存在――「蠱毒の王」が、次の命令を待ちわびるように禍々しく蠢いている。
「亜美、お前は神田の様子を陰から監視しておけ。万が一にも、妙な宗教や他の勢力が接触してくるようなことがあれば、すぐに俺に報告しろ」
佐藤の言葉に、一歩後ろを歩いていた辻亜美が、小さく背筋を伸ばして頷いた。二人だけの心の距離感に戻ったかのように、その口からは自然と彼を慕う愛称が漏れる。
「……うん。悠さんの邪魔をするものは、私が全部、影から消すから」
普段の少女らしさからは想像もつかないほど、その声には昏い決意が満ちていた。彼女もまた、この過酷な異世界で自分たち姉妹を引き上げ、絶対的な力で保護してくれた佐藤に対し、狂信的なまでの忠誠を誓っているのだ。
「頼むぞ。さて……次は森の最深部だな。そろそろ『王』を解き放ち、この街に心地よい緊張感を与えてやるとしよう」
佐藤悠の冷酷な呟きが、薄暗い宿屋の階段へと吸い込まれていく。
バルト侯爵家の令嬢クラリスの掌握。ギルド長カティアの服従。石堂陽菜への完全な囲い込みと、それを利用した神田英雄の完全な傀儡化。エンデの街を奈落の底へと引きずり込み、自らの絶対的な帝国へと作り変えるための網の目は、誰にも気づかれることなく、さらに深く、確実に張り巡らされていくのだった。
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