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アパートごと異世界に転移したが、俺だけ収納スキルだったので住民を支配することにした  作者: 飯尾 意緒
第4章 英雄の傀儡と王都の胎動

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第65話:英雄の覚醒と測れぬ王

いつもご愛読ありがとうございます!

前回までのあらすじ:言葉の通じない世界の理から外れた存在であることを悟った佐藤が、結衣の機転で借金によるギルド登録と大部屋の確保を済ませ、適性を指摘された神田や奴隷制度に歪んだ野心を抱く健太らが夜の闇で悲喜交々を胸に眠る中、結衣と咲希から服従の奉仕を受けつつ冷徹に街の支配権へと狙いを定めた。


それでは、第65話をお楽しみください。


※本作は規約遵守のR15作品です。過激な描写にご注意ください。

 佐藤悠は、背中に伝わる板張りの硬さを感じながら、ゆっくりと目を開いた。

 隣では北川結衣と五十嵐咲希が佐藤に寄り添い、まだ深い眠りの中にいる。昨夜の激しい情愛の余韻か、彼女たちの肌はわずかに汗ばんでいた。佐藤は二人を起こさぬよう、静かに身を起こす。

 部屋を見渡すと、他の面々はまだ寝静まっていた。神田と陽菜は昨夜のまま、互いの手を握りしめるようにして眠っている。その傍らでは田中健太と川瀬涼太が、浅い眠りを繰り返していた。彼らの表情には、昨日の出来事への疲労と、この街で生き残らなければならないという焦燥が滲んでいる。

 佐藤は湿った空気を肺に吸い込み、小さく溜息をついた。支配者として盤面を動かすための、長い一日の始まりだ。

 冒険者ギルドは、昨夜以上の喧騒に包まれていた。

 一行は門番の指示通り、正式登録とスキル診断のために列に並ぶ。受付カウンターには、事務的な冷徹さを湛えたギルド受付嬢のミナ・ヴァルターが、膨大な書類を捌きながら待ち構えていた。

「……全員揃ったわね。まずはギルドへの正式登録と、スキル診断から始めましょうか」

 ミナは手慣れた手つきで、カウンターの奥から水晶球のような魔導具を取り出した。これが、この世界の理において個人の能力――『スキル』を測定する装置だという。

 診断は淡々と、しかし容赦ない緊張感の中で進行した。

 次々と呼び出され、水晶球に触れる仲間たち。金井綾香は『灯火』を、金井智哉は『機敏』を、鈴木舞香には『風穴』の適性があると判明した。辻有美と亜美は『双環連鎖』というスキルに目を丸くし、石堂陽菜は『小康』という生存に適した力を確認する。北川結衣の『月下の統御』、五十嵐咲希の『淡影』といった希少な能力も明らかになる。田中健太は『浅掠』という好戦的なスキルにニヤつき、田中美咲は『自愛の微光』で周囲を癒せる可能性を見出した。川瀬涼太は『微速』という微妙な判定に首を傾げた。

 個性豊かな能力が露わになる中、最後に神田英雄の番が来た。

 神田が水晶球に触れた瞬間、ギルド内を圧倒する眩い黄金色が弾け飛ぶ。

「こ、これは……ッ!?」

 ミナが思わず席から立ち上がった。

「神の英雄……『勇敢なる者』? 嘘……伝説級のスキルじゃないの……!」

 ギルド内が静まり返る。全員の視線が神田に集まり、住人たちの顔には安堵と熱狂的な興奮が広がった。

 田中健太は、その光景を横目にギリリと奥歯を噛み締める。

 ――負けた。

 今まで力で彼を追い詰めてきたはずだった。だが、今の神田が纏う輝きを前にして、健太は悟った。自分たちの暴力も、些末な小競り合いも、すべて無価値になったのだと。

 健太は嫉妬に顔を歪ませそうになるのを必死に堪え、卑屈な笑みを貼り付けて神田の背中を叩いた。手は、悔しさで微かに震えている。

「……っ、へえ、さすがだな神田。……最初から、俺たちとは格が違ったってわけかよ」

 健太の声には、明らかに不自然な媚びと、隠しきれない毒が混じっていた。

 かつての支配者の威光は消え失せ、今や彼は神田という新たな権力に縋り付くしかない敗残者の顔をしている。

「……おい、神田。これからは、俺たちもあんたの力に期待してるからよ。仲良くやろうぜ」

 そう言いながら、健太は内心で毒づいていた。

(チクショウ……! なんで、あの神田が……。認めねえ、絶対に認めねえぞ……!)

 神田英雄という男が、この集団の中での明確なリーダー、いや「逆らえない絶対的な権力」として位置づけられた瞬間だった。

 そして、最後。佐藤の番が来た。

 周囲の冷ややかな視線を背中に感じながら、佐藤はゆっくりとカウンターへ近づき、迷うことなく魔導具に手を乗せた。

 ――無反応だった。

 水晶球は、何の光も放たない。ただのガラス玉のように、鈍い光を反射しているだけだ。

「……エラー?」

 ミナが怪訝そうに呟き、軽く装置を叩く。しかし、やはり反応はない。彼女は冷徹な眼差しを佐藤に戻し、肩をすくめた。

「……ふむ。壊れてはいないわね。登録上は『スキルなし』。……稀にそういうケースもあるけれど」

 佐藤は表情一つ変えず、静かに手を離すと、横に控える北川結衣にだけ聞こえる声で問いかけた。

「……結衣、俺はどうなんだ?」

 結衣はわずかに口角を上げ、佐藤の耳元で囁く。

「……反応はゼロです。『スキルなし』との事です」

 英雄的なスキルを持つ神田との落差に、周囲からはクスクスと失笑が漏れる。

「なんだよ、佐藤だけ何もなしかよ。期待外れだな」

 田中健太がわざとらしく大きな声で笑うと、隣にいた川瀬もそれに追従するように、ニヤニヤと口を歪めて囃し立てた。

「結局、神田が凄すぎて、佐藤さんはただの荷物持ちってことか?」

 自分の持つ『支配庫』は、このような安易な魔導具で測れるほど単純ではない。理解されないこと、期待されないことこそが、支配者として最強の武器になるのだ。

(……勝手に持ち上げさせておけ。神田という『英雄』の価値が高まれば高まるほど、それを手懐けた時の実りは大きくなる)

 佐藤は何も言い返さず、無言のまま結衣に視線を送る。意図を汲み取った結衣が、流麗な動作で一歩前へ出た。

「受付の方。……彼が借金返済のために、早急にクエストを受けたいと仰っております。何か斡旋していただけませんか?」

 その言葉に、ミナは佐藤を一瞥してから鼻で笑う。

「スキルもない彼が? まぁ、採集クエストなら命までは取られないでしょうけど……。ギルドの外に広がる森で、手頃な草でも摘んできなさい」

 佐藤はカウンターの端に寄り、ミナに声を低めて結衣へ合図を送った。

「……結衣。少し、個人的な取引がしたいと伝えろ」

「承知いたしました」

 結衣がミナに向き直り、微笑みを浮かべる。

「……彼が、少し個人的な取引をしたいと申し上げております。……昨日、森の入り口で捕まえたものがあるのですが、買い取っていただけませんか?」

 佐藤はカウンターの下に隠すようにして、一つの麻袋を置いた。中身は、彼が『支配庫』から取り出した、仕留めたばかりの個体だ。中型犬ほどの大きさで、一見すると兎のような愛らしい姿だが、その口元には異常に鋭く尖った牙が覗く。佐藤が内心で「灰牙兎」と呼んでいるもので、今朝、支配庫から一匹だけ出して用意しておいた「材料」である。

 佐藤が袋の口を少し開くと、ミナは興味なさそうに視線を落とした。

「そんなもの、そこら中にいる……」

 言葉が途切れた。彼女の目が、獣の牙と、その瞳の濁りに釘付けになったからだ。

「……これ、まさか……『ドゥンケルハーゼ』? それも、これほど立派な個体なんて……!」

 ミナは慌てて立ち上がり、獣を手に取って観察し始める。

「どこで……? いえ、いいわ。これ、最高品質だわ。この毛皮の密度、それにこの牙の魔力の残り香。いいわ。金貨12枚でどう?」

 佐藤は言葉の意味を完全には理解できず、ただ沈黙を貫いた。提示された金貨の価値が、この街でどれほどのものか判断がつかなかったからだ。無表情で淡々とミナを見つめ返す。

 ――その沈黙を、ミナは「不服」の意思表示だと誤認した。

「……仕方ありませんね。金貨15枚! これが限界です!」

 ミナの言葉に、結衣がすかさず微笑んで頷く。

「……それでいいわ」

 結衣が手続きを済ませ、入域料やギルド登録料、今晩の宿泊費を差し引いた清算を終えると、佐藤の手元には金貨3枚と銀貨5枚が残された。

 佐藤は掌に載ったコインを見下ろし、内心で小さく呟く。

(……金貨15枚が即座に提示され、これだけ残った。……この金額が、高いのか安いのか、今の俺には皆目見当がつかん)

 ギルドの外に出た佐藤は、立ち止まると冷徹な視線を一行に投げかけた。

「お前達の分の入域料と登録料は支払った。これで奴隷送りにはならないで済む。これ以上は知らん。好きにしろ」

 佐藤の宣告に、その場が静まり返る。

 美咲、咲希、綾香、舞香、結衣、亜美、有美の七人は、迷うことなく佐藤の背後へと進み出た。続いて、金井智哉が気まずそうに、しかし切実な面持ちで一歩前へ出る。

「……佐藤さん、もう少しだけお願いしたい。すぐに仕事を見つけて、必ず自立するから……それまでの期間だけ」

 その言葉に、神田もまた意を決したように視線を上げる。彼は隣にいる陽菜に小さく目配せをしてから、佐藤を見据えた。

「……自分も、もう少しお願いします」

 陽菜もまた、神田に寄り添うようにして小さく頷く。「私も……」

 その様子を冷ややかに眺めていた田中健太が、わざとらしく肩をすくめて川瀬に声をかける。

「それじゃあ、俺ら好きにさせてもらうかな。こんな、他人様に媚びへつらって生きるような真似はごめんだからよ」

 川瀬もニヤリと卑屈な笑みを浮かべ、健太に同調する。

 ギルドを出た後、一行はそれぞれの目的のために散らばっていった。

 田中健太と川瀬は、己の力を証明せんと息巻いて再びギルドへ戻り、早々に仕事を見つけて街の外へと飛び出していった。

 神田は、心細げな陽菜を佐藤の傍らに預けるという決断を下した。佐藤の庇護を信じてか、あるいは彼女を守る唯一の手段と悟ったのか。神田自身もまた、己の『英雄』の力を試すべくギルドでクエストを受け、街の外へと向かった。

 金井智哉だけは異色の動きを見せた。彼は直ちに冒険者稼業に飛びつくのではなく、この街の経済基盤や物価を把握するため、あえて街の市場へと向かい、徹底的な調査を開始する。

 街の活気が次第に衰え、夕闇が石造りの街並みを塗りつぶし始める頃。

 結局のところ、各々が外の世界や市場で今日という一日を費やした一行は、ギルドが斡旋する安価な宿泊施設へと集結した。

 宿のロビー。田中健太と川瀬涼太は、街の外での活動で負った怪我が治りきっておらず、明らかに精彩を欠いている。二人は互いに気まずい沈黙を漂わせていた。

 佐藤は結衣と咲希を従え、ロビーの中央へ歩み出る。一行の間に漂う澱んだ空気の中、鈴木舞香がすがるような目をして佐藤に歩み寄った。

「佐藤さん……お願いです。美咲と綾香が、田中や金井と同じ部屋になるのを極端に嫌がっていて……。私たちを、どこか別の場所に……なんとかしてもらえませんか」

 佐藤は冷めた目で見つめる。集団の歪みが、もはや隠しようもなく表面化していた。

 佐藤はため息をつくこともなく、隣に控える北川結衣に視線を向けて告げた。

「結衣、明日、他の宿か家を探せ」

 結衣が静かに頷くと、佐藤は一行を見渡して淡々と宣告する。

「俺は言葉が通じないからな。金はなんとかする。移動するのは咲希、美咲、有美、亜美、結衣、綾香、舞香だ」

 さらに、佐藤は視線を残された者たちへ向けた。

「神田と石堂陽菜、金井智哉はここに残れ。その分の金は払ってやる。それでいいだろ」

 最後に、ロビーの隅で所在なげに佇む田中健太と川瀬涼太へ、一瞥すら与えずに吐き捨てる。

「お前ら好きにするといい」

 佐藤は、反論を許さぬ足取りで、自分の庇護下に入ることを選んだ七人を従え、ギルド併設の食堂へと向かった。彼らはそこで、佐藤が手配した温かい夕食を口にする。佐藤の恩寵に預かっているという実感が、彼女たちの恭順をより深めていく。

 一方、宿に残された神田、陽菜、智哉、健太、川瀬の五人は、佐藤が憐れみ程度に置いていった少量の水と、乾いたパンを前にしていた。彼らは飢えの恐怖と戦いながら、それが明日の朝には尽きてしまうことを理解しており、一滴の水すら惜しむように、大事に大事に摂取していた。

 夕食を終えた佐藤が、連れを伴って戻ってきたのは、夜の帳が完全に下りた頃だった。

 修道院の倉庫を転用したような、だだっ広い空間。そのあちこちに、残された五人は身を寄せ合って過ごしていた。佐藤は入室すると、迷いのない足取りで、まだ空いていた部屋の端へと移動する。その存在感だけで、彼らのささやかな安息は踏みにじられた。

 佐藤は視線を泳がせる彼らを一瞥し、淡々と告げる。

「今日はお前らか……声出すなよ」

 辻姉妹が顔を見合わせ、震える声で「お願いします」と呟くと、佐藤は無言のままそれを受け入れた。その許可を得た瞬間、二人の動きが迷いなく加速する。

 有美が身を乗り出し、飢えた獣のように佐藤の唇を貪り始めた。互いの舌が絡み合い、甘い唾液の糸が二人の口元を伝う。有美は佐藤の首筋に指を食い込ませ、その熱を確かめるように吐息を漏らした。

 亜美は佐藤の足元へ跪くと、迷うことなくその熱を自身の身へと受け入れる。口腔という名の極上の熱源が、佐藤の支配の証を包み込み、喉の奥まで熱い湿り気が伝わった。佐藤の視界には、亜美の潤んだ瞳が、そして少し離れた位置で姉と同じ場所を欲する有美の情欲に満ちた表情が映る。

 ここから先は、同じ顔をした双子による、終わりのない献身の競り合いだった。有美が舌の先で執拗に佐藤の皮膚をなぞり上げれば、亜美はそれに負けじと深淵の闇へその身を沈め、喉を鳴らして熱を吸い上げる。姉妹の視線が佐藤の顔の上で交差し、互いの動きを鏡のように意識し合いながら、どちらがより佐藤を昂らせられるかを競い合っているかのように。

 有美が唇を離し、亜美が代わりにその熱を奪う。同じ顔、同じ肌触り、同じ反応。自分を悦ばせるためだけに存在する二つの「同じ器」が、代わる代わるに奉仕を繰り返す光景は、佐藤の支配欲をどこまでも満たしていく。有美がキスの合間に「私の方が……」と視線で訴えれば、亜美もまた喉を鳴らしながら、より深く、より熱く、舌を這わせた。

 挿入こそないものの、二人の双子が競い合うようにして繰り返す生々しい愛撫は、佐藤の理性を容易く浸食していく。鏡合わせのような恍惚の表情で、同じ顔をして必死に奉仕し合う姉妹の姿――その、同じ顔が競い合うかのように唇を這わせる背徳的な光景こそが、佐藤にとって何よりも堪らない支配の証だった。

 湿った吐息と、喉を鳴らす湿った音だけが、静まり返った倉庫に響き渡る。支配という名の現実は、彼女たちの熱い吐息と奉仕を通じて、この無骨な大部屋に冷たく、そして深く刻み込まれていった。

最後までお読みいただきありがとうございます!

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次回は月曜日21時頃に更新予定です!

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