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アパートごと異世界に転移したが、俺だけ収納スキルだったので住民を支配することにした  作者: 飯尾 意緒
第2章 腐敗の連鎖と「女」の商品化

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39/40

第39話:友の終焉と墜落の証明

いつもご愛読ありがとうございます!

前回までのあらすじ:辻姉妹に拒絶され孤立した神田は、田中健太の策略により、壊れた器と化した香織をあてがわれることで歪んだ快楽と依存の淵へ堕ち、彼女を「餌」として利用する健太の支配下に完全に組み込まれていく。


それでは、第39話をお楽しみください。


※本作は規約遵守のR15作品です。過激な描写にご注意ください。

 アパート『シャン・ソレイユ』を囲む樹海に、二十九日目の陽光がねっとりと絡みついていた。

 午後の重苦しい熱気は、廊下に沈殿する汗と体液、そして蒸せ返るような下草の匂いを膨張させ、住人たちの理性をじわじわと溶解させていく。

 二階、204号室の玄関前。

 石堂陽菜は、固く閉ざされたドアに向けて、狂気すら孕んだ熱量で言葉を叩きつけていた。

「ねえ、有美ちゃん、亜美ちゃん! 開けて、お願い! 損してるよ、二人は損してるってば!」

 ガチャン、と重々しい金属音が響き、ドアが数センチだけ開いた。だが、そこには太いドアチェーンが掛かっており、陽菜を拒絶する絶対的な境界線として機能している。隙間から覗く有美の瞳は、冷徹そのものだった。

「……何の用? 一階の女が」

「あのね、健太さんたちのところ、本当に凄いの! 食べ物もいっぱいあるし、みんなですっごく仲良くしてるんだよ? 神田くんも今、香織さんと楽しそうに遊んでるんだから!」

 陽菜は捲し立てた。嘘だった。一階にあるのは略奪と、香織を廃人同然まで追い込んだ一方的な蹂躙だけだ。だが、自分を「売った」川瀬や、自分を「所有している」健太たちの環境を正当化しなければ、陽菜の精神は保てなかった。

「二人が来たら、もっと特別扱いしてくれるよ! 健太さんも言ってたもん、『辻姉妹ならお姫様みたいに迎える』って。神田くんを追い出して狭いお風呂で震えるより、ずっと、ずっとマシなんだよ!」

「……陽菜」

 ドアの向こうで、亜美が悲しげな、それでいて深い蔑みを込めた声を漏らした。

「あんた、川瀬に売られたこと、もう忘れちゃったの……? 可哀想に」

「売られたなんて人聞きが悪いよ! 私は、選ばれたの。一階の管理を任されたの! ねえ、見てよ、この服だって……」

 陽菜が自分の服を自慢げに見せようとした時、有美の冷たい声がそれを遮った。

「仲間? あんた、鏡見て言いなさいよ。そんな身体でよくここに来れたわね」

 その言葉に、陽菜の動きが止まった。

「え……?」

「陽菜。あんたの首筋、胸元……鏡で見なさいよ。男たちの歯型と指の跡だらけよ。服だって汚れと変な匂いが染みついて……そんな姿で『素晴らしい環境』なんて言われても、汚らわしいだけ」

 陽菜はハッとして、自身の腕、そして視線を落として胸元を見つめた。

 そこに刻まれているのは、健太や横山、そして川瀬たちが「共有物」に付けた無慈悲な印だった。ボロボロの襟元からは、昨日付けられた生々しい内出血の痕が覗いている。

(……あ……私……)

 改めて自分を俯瞰した瞬間、陽菜の顔が急速に朱に染まった。素晴らしい、選ばれた、お姫様になれる……。自分が必死に並べ立てた嘘が、自身の醜悪な外見によって無惨に暴かれていく。

 恥ずかしさで指先が震え、陽菜は逃げ出したくなるような衝動に駆られた。

「もう来ないで。あんたが川瀬に売られたのは同情するけど……私たちは、あんたみたいにはなりたくないの」

 ガチャン、とチェーンが外され、間髪入れずにドアが閉まった。再び掛かった内鍵の音が、陽菜の心に最後の一線を引いた。

 陽菜がフラフラと102号室に戻ると、そこには苛立ちを隠そうともしない田中健太が待ち構えていた。リビングには拭い去ることのできない粘着質な情欲の残り香が充満し、香織が隅で力なく横たわっている。

「……で、どうだったんだよ。あの双子は釣れたのか?」

 健太が、獲物を待つ獣のような眼光で陽菜を射抜く。陽菜は指先を震わせ、先ほど辻姉妹に浴びせられた「汚らわしい」という言葉を必死に押し殺しながら首を振った。

「……ダメ、だった。ドアも開けてくれなくて……」

「使えねえな、お前は!」

 健太の罵声と共に、陽菜の頬に強烈な衝撃が走った。無造作に振るわれた掌が彼女を床に叩きつける。

「川瀬に恩を売ってまで引き取ってやったんだ。それ相応の仕事をしろって言っただろ! ほら、さっさと機嫌取りやがれ」

 健太は無理やり陽菜を引き寄せると、自身の剥き出しの衝動を突きつけた。陽菜は頬の痛みと屈辱に震えながらも、逆らえばさらに酷い目に遭うことを本能で理解していた。彼女は膝をつき、機械的な動作で彼を受け入れる。

 陽菜が無機質な奉仕を強いられている間、その様子を部屋の隅から神田英雄が凝視していた。

 神田は、つい先ほどまで自分が抱いていた香織と同じように、陽菜が「道具」として扱われていく様を目の当たりにして、言いようのない嫌悪感と、それ以上に深い絶望に囚われていた。

(……これが、一階のやり方なのか。救いなんて、どこにもないじゃないか……)

 自分が香織に溺れた甘い瞬間さえも、この暴力的な支配の一部に過ぎない。陽菜の虚ろな瞳が自分と一瞬重なった気がして、神田はたまらず視線を逸らした。

 だが、そんな神田の葛藤を健太は見逃さなかった。

「おい神田、お前もいつまでシケた面してんだ。ほら、こっち来いよ」

 健太の言葉に、神田は心臓が跳ね上がるのを感じた。戸惑い、喜び、そして底知れない不安が混ざり合った感情が脳内を駆け巡る。神田は促されるまま、ふらふらと健太の隣へ歩み寄った。

「陽菜、次はこいつのだ。慈しんでやれ」

 健太の命令に、神田は震える手で自身の衣服を脱ぎ捨て、下半身を露わにした。恋焦がれていた陽菜が、今まさに自分の前に跪こうとしている。その事実に、神田の肉体はこれまでに見たこともないほどの荒々しい昂ぶりを見せた。

「……嘘でしょ」

 陽菜が絶望に満ちた声を漏らす。だが、健太はその頭を無慈悲に掴み、神田の熱量へと無理やり押し付けた。

「もっと激しくしてやれ。神田が満足するまでな!」

 喉の奥まで突き込まれる衝撃に、陽菜は涙を浮かべて咽せる。だが健太の強引な手つきが、彼女に拒絶を許さない。神田は、憧れていた女性の口腔の熱に包まれ、頭の中が真っ白になるような快楽に酔いしれた。

 健太がニヤリと笑い、神田の耳元で囁く。

「……神田、繋がっておきたいか?」

「やめて、お願い……っ!」

 陽菜が神田の欲望を口から離し、必死に懇願した。

「お願い、神田くん……ね? 私たち、友達でしょ?」

 ――友達。

 そのフレーズを聞いた瞬間、神田の中で何かが音を立てて崩れ落ちた。自分だけが特別な想いを寄せていた相手から、この地獄のような状況で突きつけられた、都合のいい境界線。

「……友達?」

 神田の瞳から光が消えた。崇拝は一瞬で憎悪に転じ、彼は陽菜の言葉を完全に無視して、彼女を床に押し倒した。

 神田は、先ほど香織から身体に叩き込まれたばかりの動きを、陽菜の身体で再現し始めた。壊れた香織が教えてくれた、男を悦ばせ、女を壊すための技術。

 執拗に、かつ暴力的なまでに深淵を抉るような神田の動きに、陽菜の悲鳴は次第に甘い嬌声へと変わっていく。拒絶していたはずの彼女の肉体が、神田の異常な熱を帯びた突き上げに翻弄され、強制的に絶頂へと引きずり込まれていった。

「ははっ、激しいな、おい! 見違えたぜ神田!」

 健太の笑い声さえ、今の神田の耳には届かない。彼はただ、自分を「友達」と呼んで切り捨てようとした女の最奥を、復讐にも似た激しさで貫き続けた。

「あ、あぁぁぁ――っ!」

 陽菜が白目を剥き、激しく身体を反らせた瞬間、神田は彼女の奥深くへと、溜め込んでいた大量の熱い証を容赦なく放出した。奔流が陽菜の内側を満たし、彼女の尊厳を塗り潰していく。

 出し切り、荒い呼吸で陽菜の上に崩れ落ちた神田に、健太は満足げに肩を叩いた。

「見直したぞ、神田。お前もようやく、ここの『住人』らしくなってきたじゃねえか」

 その言葉は、神田がもう二度と、かつての自分には戻れないことを告げる、呪いの賞賛だった。床に横たわる陽菜の瞳には、もはや光はなく、ただ一筋の涙が頬を伝って流れ落ちていた。

 奉仕を強要され、友人との行為をも強要された陽菜の脳裏には、201号室に君臨する佐藤悠の姿が浮かんでいた。あそこには、自分を売った川瀬も、自分を道具のように扱う健太もいない。清潔で、静謐な支配。

(佐藤さん……。あっちに行けば、私は……救われるの……?)

 絶望の淵で、初めて明確な「渇望」が芽生え始めていた。

 一方、その頃。

 食糧を求めて一人でアパート外縁の森を歩いていた北川は、背後から忍び寄る不穏な気配に気づいていなかった。

 彼女を尾行していたのは、横山と川瀬だった。

「おい、健太さんに献上する前に、俺たちで味見してもバレねえだろ?」

 横山の卑しい声が響く。人気のない茂みの陰で、二人は北川を組み伏せた。

「やめて! 離して!」

 悲鳴を上げる北川。横山の乱暴な手が彼女の服を掴み、川瀬がその脚を力ずくで押さえつける。服が裂ける不吉な音が響き、絶望が彼女を飲み込もうとしたその時――。

「……何をしてるんですか、あなたたちは」

 冷ややかな声が森の空気を切り裂いた。そこには、偶然通りかかった金井智哉が立っていた。

 横山と川瀬は毒づきながらも、公務員特有の理屈っぽさと、騒ぎが大きくなることを嫌い、「ちっ、邪魔が入ったか。北川、次はねえぞ」と捨て台詞を残して去っていった。

 地面に崩れ落ち、震えが止まらない北川。智哉は、彼女の破れた衣服から覗く肌をなるべく見ないように視線を逸らしながら、自身の手に持っていたペットボトルを差し出した。

「……これ、小川で汲んできた水です。煮沸してありますから、飲んでください。……落ち着くまで、少し離れたところで見張っていますから」

 智哉から手渡された水の冷たさに、北川は辛うじて現実を繋ぎ止める。しかし、その瞳に刻まれた恐怖は深く、アパートを包む腐敗の毒は、確実に善意の住人たちの心をも侵食しつつあった。

最後までお読みいただきありがとうございます!

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次回は明日21時頃に更新予定です!

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