第10話:光を失った姉、影に堕ちた妹
いつもご愛読ありがとうございます!
前回までのあらすじ:姉を出し抜こうとする野心に燃える舞香が、営業職らしい積極的な奉仕で悠を心酔させ、報酬の「ボーナス」を勝ち取ることで、姉妹の力関係を逆転させ支配の寵愛を奪い合い始める。
それでは、第[話数]話をお楽しみください。
※本作は規約遵守のR15作品です。過激な描写にご注意ください。
アパート『シャン・ソレイユ』を囲む樹海に、八度目の、あるいは生命の限界を告げる残酷な昼光が降り注いだ。
一週間という区切りを超えた事実は、住人たちの精神から最後の「人間性」という名の薄皮を剥ぎ取っていた。廊下に漂う、洗うことのできない体臭と、死の予感を含んだ澱んだ空気。蛇口からは相変わらず、期待を裏切る乾いた音しか響かない。101号室の窓から差し込む陽光は、もはや希望ではなく、室内の温度を無慈悲に上げ、残されたわずかな水分を蒸発させる拷問の光に過ぎなかった。
金井智哉の容態は、悪化の一途を辿っている。
舞香が昨日、文字通り「身体を張って」勝ち取ってきた水のおかげで、辛うじて息を繋いではいるものの、彼の意識は混濁し、もはや寝返りを打つ体力すら残っていない。
「……み、ず……」
掠れた智哉の声に、綾香がハッとして空のボトルを掴むが、そこには一滴の湿り気も残っていなかった。
「……お姉ちゃん。行きましょう」
舞香の声が、静まり返った室内で冷酷に響いた。まだ太陽が高い位置にある、真っ昼間である。
「え……? でも、智哉さんを置いていくなんて。もし何かあったら……」
「今行かないと、智哉さんが死ぬのよ。それとも、お姉ちゃんがここで看病してれば、どこからか水が湧いてくるとでも思ってるの?」
舞香は鏡の前で乱れた髪を整え、あえて胸元の開いたブラウスを選びながら言い放った。その瞳には、かつて姉を慕っていた純粋な光はなく、代わりに生存競争に勝ち残った者特有の、ぎらついた野心が宿っている。
「佐藤さんは言ったわ。『二人で来い』って。昼間だろうと関係ない。……いい、お姉ちゃん。智哉さんを置いていくのは、彼を助けるためなの。それが今の私たちの『正論』よ」
智哉が意識を失いかけている今、彼を一人、死の淵に置き去りにして男の元へ向かう。その事実は、綾香の良心を鋭く抉った。しかし、舞香の放つ圧倒的なエネルギーと、抗いがたい渇きの前に、彼女の心は音を立てて屈服していった。
真昼の静寂の中、音も光も消えた階段を二人の女が登っていく。
刺すような日差しが廊下の窓から降り注ぎ、肌をじりじりと焼く。智哉を一人残してきたという罪悪感が、綾香の足取りを鉛のように重くさせた。対照的に、前を行く舞香の背中には、これから始まる「商談」への高揚感すら漂っている。
201号室のドアをノックする。
「……入りなさい」
佐藤の冷淡な声に導かれ、二人は部屋に足を踏み入れた。
室内には、外界の熱気をあざ笑うかのような、佐藤の『支配庫』から漏れ出す無機質な寒気が充満していた。
「……昼間から揃って来るとは。金井、夫を一人にしてきて大丈夫なのか?」
ソファに深く腰掛けた佐藤が、皮肉めいた笑みを浮かべて綾香を射抜いた。
「……智哉さんを救うには、こうするしか……」
綾香が言葉を詰まらせる隣で、舞香が真っ先に佐藤の足元へ跪いた。
「佐藤さん。お姉ちゃんはまだ迷ってるみたいですけど、私は違います。……さあ、始めましょう? 私、お姉ちゃんの前で、もっとあなたに尽くしたいんです」
佐藤は満足げに目を細め、舞香の顎を乱暴に掴み上げた。
「いい心がけだ、義妹君。……金井、君はそこで見ていろ。君が看病を放棄してまで求めた『水』の代償が、どのようなものかをな」
「……っ」
綾香は立ち尽くすしかなかった。明るい陽光が窓から差し込むこの部屋で、目を背けることすら許されない公開処刑のような時間が始まる。
舞香は姉の視線を背中に感じながら、自ら佐藤の衣類を脱がしにかかった。
昨夜の奉仕で自信を深めた彼女の動きは、迷いなく、そして扇情的だった。佐藤の猛りを口に含む際、彼女はあえて姉の方へ顔を向け、恍惚とした表情を見せつける。喉を鳴らし、欲望を剥き出しにして佐藤を求めるその姿は、清楚だった妹の面影を完全に塗り潰していた。
舞香の指が佐藤の太ももを愛撫し、やがて彼女は自らソファの上で佐藤に跨った。自らの秘部に手を添え、受け入れる場所を指先でなぞるように確認すると、躊躇なく一気に腰を沈めた。
「あ、っ……は、あ……っ! 佐藤さん……見て……っ!」
結合の衝撃に舞香が首を反らし、激しい喘ぎ声を上げる。乳房が躍り、肌と肌がぶつかる生々しい音が、寒気の中で熱を帯びて響き渡る。
「……っ……あ、舞香……やめて……」
綾香の声は、誰にも届かない。
舞香はさらに腰の動きを早め、佐藤の首にしがみつきながら絶叫した。
「佐藤さん! 私、お姉ちゃんより、もっと奥まで……あなたの全部を、ちょうだい……! お姉ちゃんの前で……私を、あなたのモノにしてっ!!」
それは、実の姉妹としての絆を自らの手で引き裂き、佐藤への完全な忠誠を誓うための儀式だった。
佐藤は獰猛な笑みを浮かべ、舞香の細い腰をガッシリと掴むと、容赦のない抽送で彼女を追い詰めていく。
「……望み通りだ。姉よりも欲深い君には、相応の『刻印』が必要だな」
佐藤の低い声が響いた瞬間、舞香は体を弓なりに反らせ、叫び声を上げながら絶頂に達した。
同時に、佐藤の熱い奔流が、彼女の最奥へと直接、暴力的な勢いで注ぎ込まれた。
「あ、っ……あ、あ、あああぁぁぁ……っ!!」
舞香は全身を硬直させ、佐藤の胸板に爪を立てた。
内側から満たされていく感覚。自分が姉を超え、この絶対的な支配者に選ばれたという確信が、脳を真っ白に染め上げる。
佐藤がゆっくりと身を引き抜くと、舞香の下腹部からは、行き場を失った白い液体がどろりと溢れ出した。
「……はぁ、はぁ……見た……? お姉ちゃん。私……佐藤さんに、全部……もらったわよ……」
舞香は朦朧とした瞳で姉を見下ろした。その表情には、敗者を憐れむような、残酷な勝者の余裕が漂っていた。
しかし、舞香の奉仕はまだ終わらなかった。彼女は義務を果たすかのように、再び佐藤のモノに顔を寄せ、その剛直を口に含む。先程まで自分の中にあった熱の残滓を慈しむように、丁寧に舌を這わせて舐め、綺麗に掃除をしていく。
ひと通り掃除を終えた舞香は、顔を上げ、濡れた瞳で佐藤を見つめた。
「……佐藤さん。お願いがあるんです。今度から、私のことを『舞香』って……名前で呼んでくれませんか?」
佐藤の足元で、自らを捧げ尽くした女の切実な請願。それは、佐藤にとって「金井」という記号でしかない姉との決定的な差異を求める、傲慢なまでの独占欲の表れだった。
佐藤は、その執着を愉しむように薄く笑った。
「いいだろう、舞香。君の働きには、それだけの価値がある」
「……っ……」
綾香はその場に力なく崩れ落ちた。
智哉を一人、瀕死の状態で置き去りにして得たのは、愛する妹が目の前で男に汚され、それを快楽として受け入れ、さらにその男の寵愛を自分から奪い取ろうとする、最悪の地獄だった。
佐藤は呆然とする姉妹を見下ろし、三本の水を並べた。
「舞香、よくやった。今夜は特別に三本だ。……一本は君のもの。一本は金井のもの。そして最後の一本は……」
佐藤は一本のボトルを、舞香の足元に転がした。
「君の姉が、僕にさらなる『忠誠』を見せた時にでも分け与えてやれ。主導権は、今この瞬間から君にある」
舞香は床に転がるボトルを愛おしそうに拾い上げた。
彼女は、自らの内に残る佐藤の熱を慈しむように、そして垂れ落ちる白い液体を指で掬い取って口へと運び、飲み干した。
「……ありがとうございます、佐藤様。お姉ちゃん、これ、智哉さんのところに持って帰ってあげなきゃね」
舞香の微笑みは、もはや聖母のようでもあり、同時に魂を売り渡した魔物のようでもあった。
アパートを囲む樹海は、真昼の太陽の下でも、深く、静かに姉妹の崩壊を飲み込んでいった。
断絶された世界の八日目。
101号室に帰る道すがら、前を行く妹の背中は、もはや姉を導く光ではなく、姉を奈落へと誘う、抗いようのない影となっていた。
「面白いと思ったら、ブックマークや下の『☆☆☆☆☆』から評価をいただけると執筆の励みになります!」




