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優チャンと呼ばれて



第27章 優チャンと呼ばれて


 その日の「女の子レッスン」は、前回よりもさらに実践的だった。

 沙月の部屋に集まった俺は、鏡の前に座らされ、

 髪を整えられ、化粧を手伝われ、そして服を選ばされた。


 「今日はちょっと上品めでいこ。ほら、このブラウス似合うって」


 沙月が差し出したのは、アイボリーのフリルブラウス。

 胸元から肩にかけて、幾重にも重なるレースの波。

 首もとは小さなリボンで結ばれ、

 結び目から垂れた二本の細い紐が、俺の胸の上でそっと揺れた。


 「……やっぱ、ちょっと派手じゃない?」

 「なに言ってんの、地味なぐらいだよ」


 沙月は笑ってミントグリーンのスカートを合わせる。

 柔らかなシフォン生地で、触れると指先がすぐに沈み、

 その感触が不思議なほど心地よい。

 ウエストのゴム部分は軽くフィットして、

 男物のパンツにはなかった“締めつけられすぎない感覚”があった。


 けれど、鏡に映る自分は――やっぱり、どこか落ち着かない。

 「俺、やっぱりまだ慣れねぇよ、こういうの」

 「慣れるって。可愛いんだから」

 「可愛いって言うな……」


 そうぼやく俺の髪を、沙月は嬉しそうに指で整えた。

 ショートボブに切られた髪は、頬にそって丸く落ち、

 光の加減で少し赤みを帯びて見える。

 その髪に、あのときもらった髪留めが留まっている。


 レッスンが終わったあと、沙月はにやりと笑った。

 「ねぇ、このまま帰すのもったいないよね。……ほのか達、呼んであるから」

 「……え?」



---


 気づけば、また四人での女子会だった。

 カフェの窓際、白いテーブルクロスの上には小さな花瓶。

 俺――いや、“優”はそのテーブルの隅にちょこんと座っていた。

 周りの三人は楽しそうに話を弾ませている。


 「ねぇねぇ、今日も可愛いじゃん、優斗くん――あ、もう“優チャン”だっけ?」

 ほのかが茶目っ気たっぷりに笑う。

 沙月が口を押さえながら肩を震わせ、

 隣の真白と楓までもが同時にニヤリとする。


 「ちょ、ちょっと待て、それは……」

 「なに? 嫌なの? “優チャン”の方が自然じゃん?」

 「おいおい……」


 四人の笑い声が弾む。

 俺の頬が自然と熱くなる。

 だけど、どこか嫌な気はしなかった。

 “優チャン”――その響きが、

 少しだけくすぐったく、でも心地よかった。


 ほのかがミルクティーをかき混ぜながら言う。

 「優チャンさ、最初会ったときより全然柔らかい雰囲気になったね」

 「そ、そうか?」

 「うん。ほら、そのスカートとかさ。春っぽくてかわいい」


 視線が集まる。

 俺は膝の上で軽くスカートを押さえた。

 淡いミントグリーンのロングスカート――

 動くたび、裾のレースラインがふわりと舞う。

 太ももに触れる布のさらりとした感触が気になって仕方ない。


 足元は淡いベージュのフラットシューズ。

 革の表面がやわらかく、ストッキング越しに足の形を包む。

 歩くたびに“くにゃ”と軽く沈む感覚が、

 どこか頼りなくも優しい。


 「……まぁ、悪くはないけど」

 「そういう照れ隠し、可愛い~!」

 沙月が隣で笑いながら、俺の肩を軽くつつく。


 「ねぇ、“優チャン”って呼ばれるの、案外嬉しいでしょ?」

 「……別に」

 「顔が答えてるじゃん」


 カップの中の紅茶が揺れる。

 甘い香りと、春の風。

 “優チャン”という呼び名が何度も飛び交ううちに、

 それが自分の名前として、少しずつ馴染んでいくのを感じた。



---


服装の詳細描写


トップス:アイボリーのフリルブラウス。軽いポリエステル素材で透け感があり、動作に合わせてひらめくレース。胸元のリボンは細いサテン紐。


ボトムス:ミントグリーンのロングスカート。シフォン生地で通気性がよく、裾に小花模様のレースライン。


インナー:ベージュのキャミソール。肌当たりが柔らかく、ブラウスの下で布が滑る感触が心地よい。


靴:ベージュのフラットパンプス。ストッキング越しに革の質感が伝わる。


アクセサリー:贈られた髪留め(シルバーと淡いピンクのストーンが光る)。

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