↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒトとキツネの異世界黙示録Ⅱ  作者: 遊戯九尾
最終章 それは語られることなき英雄譚

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

99/167

英雄達の凱旋

 フォーチュンがやられると、ワールドエンドで戦っていた全ての死体が動きを止め、崩れ落ちていった。


「終わった…?」


 フローレアが、倒れていく敵を見て聞く。すると、神癒奈から通信が入ってきた。


【フォーチュンの撃破を確認! 作戦は! 成功です!】


 それを聞くと四課だけでなくその場の全員がわぁあっと歓声を上げ、英霊達も勝利を喜んだ。


「永戸の奴! やりやがった!」

「神癒奈は、役目を果たしたのね!」


 404や少年兵、焔月の者達は喜ぶが、すると、彼らの体が淡く光り、消え始めた。


「…みんな…」

「最大の功労者に会いたかったが、役目を終えた亡霊は星の海に戻らなければならないらしいな」

「…そうか、共に戦ってくれて、ありがとう」

「そうシケた顔するなよ、死ねばまた会える、お前がまた星の海へ戻って来るまで、席を開けて待ってるよ」


 そう言っては404や少年兵達はケイと別れを告げ、消えていった。


「えぐっ…ぐずっ…」

「…ほら、ご先祖様、あんたは一番偉いんだから…最後までしゃんとしてなきゃ」

「そうそう、現当主のことを考えてあげないと、あの子、無理しがちなんっしょ?」

「この夢のような時間が、本当に夢だったとしても、私たちの魂は、常にご先祖さまと共にあるから、だから悲しい顔しないで」

「ぐずっ…お主ら………そうじゃな、妾はお主らの分まで生きると決めた身、お主らの生きた証を、未来まで語り継ごうぞ」


 そうして焔月一族の皆も消える。玉藻前はそれに別れを告げると空を見上げては涙を飲んだ。


「…そろそろ私もお別れね」

「あぁ、だが君は、神癒奈をずっと見守るのだろう」

「えぇ、だってあの子の母親ですもの」

「……目には見えないが、君がそばにいることを信じて、あの子を大切にしていくよ」

「ありがとう、それを聞けただけでも、嬉しいわ」


 ジュリアスにそう告げると、八尾乃が最後に消えた。幾千の英霊達が消えた後には、何も残らない荒野だけがあった。しかし、事態はただそこで終わるだけ、で済むわけではなかった。

 ゴゴゴと地面が揺れ、割れては地表が砕け始める。


「何⁉︎ 何⁉︎」


 渚が驚くが、その時、フィアネリスが通信で仮定を述べた。


【恐らく因果律が修正され、今度こそこの世界は滅ぶことになったのでしょう! 皆さん! 脱出を!】


 フィアネリスの言葉で、全員は全力で帰還用転移ゲートまで走り出す。


「冗談じゃない! ハッピーエンドだと言うのに、世界の崩壊に巻き込まれて死ぬのはごめんだ!」

「私達はいいけど! 隊長達がまだ!」

「っ! 隊長殿!」


 転移ゲート前まで来て、クレス達は永戸らの帰還を待つ。


「何やってんの! 早くしないと世界が崩壊するよ⁉︎」

「もうこの世界は持たない! 早くこっちに来るんだ!」


 渚とジュリアスの言葉でクレス達はどうするか迷う、その時、目を覚ましたのか、永戸の声が細々と聞こえた。


【行け…! 俺たちは、後から追いつく!】

「どうなってもしらねぇからな!」


 第二支部組は振り返って転移ゲートで逃げ、そして彼らが通り抜けると帰還限界点に到達し、ゲートは閉じたのだった。


「…さて、我々はいかがなさいましょうか?」


 帰還するよう言ったが、永戸らはこの世界から都市まで直通の転移ゲートの座標を知らない。三人は崩壊していく世界に取り残されたのだった。


「……やることは、決まってるだろ、帰るんだろ、俺たちのいるべき場所へ、先に行ってしまった連中の所へここで行ってしまうと、あいつらに笑われちまう」

「そうですね、やれるかわからないですけど、ここらで一つ、最後の大きな博打をしましょう!」


 二人の言葉を聞くと、フィアネリスは覚悟を決め、頷いた。


「ならば、お二方、準備はよろしいですね⁉︎」


 フィアネリスは汎用の転移ゲートを開くと座標を都市へと繋ぐ。だが、都市のどこに降り立つかは決められてない、完全に運任せの一か八かの案だった。

 フィアネリスは警告するが、二人は覚悟の上だと頷くと二人を転移ゲートへと放り込み、自分も転移する。

 そうして二人は転移ゲートから都市へと戻るが、二人が次に景色を見ると、綺麗な青空が広がっていた。

 わぁなんて綺麗な空だろう、手を伸ばせば届きそうだ、なんて考えて、二人はあることに気がつく。

「あれ? 自分達、浮いてない?」と。

 そして次の瞬間、二人は都市の"上空"から真っ逆様に落ち始めた。


「いやぁあああああ!」

「あぁあああああ!」


 コレには二人も悲鳴をあげて落ちるだけだった。同じく転移したフィアネリスはどこにもいないし、このままいけば地面に激突して二人はトマトケチャップみたいに潰れてしまうだろう。


「神癒奈ぁあああ!」

「はいぃいいい!」


 二人は手を合わせるとそのまま落下していく。残念ながら途中で光る石の力でふわふわ落下するとか、突然光の巨人が助けてくれるとかそんな都合のいい展開はなく、二人は都市の地面へと落下していく。

 もう無理、ヒトとキツネはおしめぇです……と思ったその時だった、マッハで飛んできた光が二人を持ち上げては飛び上がった。プラーンと二人は宙に吊されると、自分たちを助けてくれた守護天使に言う。


「だからあれほど警告したのですよ、座標が常に同じとは限らないので、二人で仲良く落下して、こんなことなら私が二人を抱えて飛べばよかったですね」

『それは…本当にそう』


 助けてくれたフィアネリスに、永戸と神癒奈は感謝する。そうして、イストリアの本部のグラウンドへと降り立っていくが、そこには四課の皆や渚達ナハトヴォルフ、ジュリアスに天使達がいた。


「隊長さん! 神癒奈ちゃん! フィーネ!」

「隊長殿ぉ! いぎででよがっだでありまずるー!」

「よかった、みんな、生きて帰って来られた…」

「三人とも、無事でよかった」

「永戸隊長、二人とも…お帰りなさい!」


 みんなが空から降りて来る三人を優しく出迎える。

 今度は絶望の時みたいな感動の落下ではないが、取り敢えず、生きていたことを、三人で笑い合うと、迎えてくれた皆に言った。


『ただいま、みんな』


 ーーー


「誰にも褒められないけど、やり遂げたことを記念して、かんぱーい♪」

『かんぱーい!』


 渚が音頭を取る中で、四課の皆は全員揃って乾杯する。永戸達は誰にも犠牲を出さず、見事に完勝を遂げてきた、その事に皆で喜び合うと、ナハトヴォルフで祝勝会を取ることになった。

 皆が笑いながら飲んでいく中、永戸達もそれを眺めては笑う。その場は、温かな空気に包まれていた。


「やりましたね、私達」

「あぁ、やったな……またいつものように、世界を救ってみせた」


 永戸はゆったりとしながら神癒奈と話をする。温かで穏やかな時間が過ぎていく。だがその時、神癒奈があることを口にした。


「一つ、あなたに言うべきことがあるんです」


 神癒奈が、深刻そうな表情で永戸に言う。


「なんだ? こんな時に真剣な顔をして」


 永戸は相変わらず酒を飲まずにコーラを飲んでは楽にするが、神癒奈はこんなことを言い出した。


「あなたの体ですけど、以前、狐と焔の性質になってるって言ったじゃないですか」

「あぁ、言ったな」

「それなんですけど、あなたの体は……もう人間じゃなくなってるみたいなんです」

「……あぁ、そのことくらい、とっくの昔に気づいてたさ」


 永戸は自身の体に流れる血潮を確かめながら、そう言ってのける。

 フォーチュンと戦う前、具体的にはノルドと戦う時から、彼はうっすら気づいていた、魔力を全開放して戦う『アフターバーナー』、その原理は、神癒奈の『月光』を応用して作られた奥の手だ。普通の人間が使えば、即魔力切れを起こして倒れるどころか、過剰なエネルギーで爆発四散するだろう。

 だが永戸は、とっくに気づいていた、改造された体とはいえ、もう人間という概念で収まらなくなっていることに。

 フォーチュンも言っていた通り、あの時フォーチュンの因果律攻撃を耐えられたのは、彼が神癒奈のように変質し、不老不死の神に近い体へと変質していたからだろう。

 永戸はもう、人間じゃない、半人半神の体になりかけていたのだ。


「ごめんなさい…あなたとの魔力パスが通じることが、まさかこんなことに繋がるだなんて…」

「何を言ってるんだ」


 神癒奈は謝るが永戸は軽く受け流した。


「俺は人間だ」

「えっ? だからあなたは半人半神に」

「知ったことか、普通の人間の体じゃなくなっただけだろ、人間をやめつつあろうが、俺は俺を人間だと言い続ける」

「でももう貴方の体は!」


 神癒奈は永戸の体はもう戻らないと言いかけるが、永戸は軽くこう言ってのけた。


「英雄が最終的に神様になったとか話的に当たり前すぎてつまらないだろ? 本音を言えば……俺は神様になるのが怖いんだ。自分が遠くなっていきそうな気がして」


そう言っては永戸はコーラを飲み込む。


「じゃあ、貴方は」

「ああ、これからも、俺は俺だ、俺は誰がなんと言おうと、神癒奈の前に立つ一人の英雄、人間の永戸だ」


 そう言った途端、神癒奈は彼との繋がりから、彼に芽生えつつあった神格がなくなり、不死性が失われたことに気付いた。

 彼は今ここで選んだのだ。神としてではなく、あくまでも人として生きる事に。

 変質した体は元に戻らない、だが神か人かどちらかを選んで生きることはできる。彼はそこで、人の側に立つと選んでみせた。

 それを選んだ永戸に、神癒奈は面白おかしく笑った。


「なんだよ、急に笑って」

「いいえ、貴方が、どこか遠いところに行ってしまいそうで心配でしたけど、杞憂だったみたいです」

「…そっか」


 神癒奈が笑い、永戸も笑う、二人穏やかに笑うと、神癒奈は言った。


「これからもずっと、私の前で輝き続けてください、私の、たった一人の人間の英雄さん」

「あぁ、これからも、俺を見守っていてくれよ、女神様」


 不安な影が少しだけ残るが、だが、結果としては二人は生還できた、そうして二人で笑うと、英雄二人は互いに拳を合わせあったのだった。


ーーー


 永戸と神癒奈の二人の時間、それを眺めていたフィアネリスがどこかに振り返るとこう言った。


「これにて、ヒトとキツネの異世界黙示録Ⅱは幕引きとなります、ですが、果たしてこの二人の冒険はここで終わりなのでしょうか? 続きを乞うご期待ください、もし私たちの旅路がまた見たいというのならば、再び、願っていてください。また新たな物語が見られるかもしれませんよ、それでは、またの機会に」


 To be continued?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。