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ヒトとキツネの異世界黙示録Ⅱ  作者: 遊戯九尾
最終章 それは語られることなき英雄譚
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数千の死者と幾千の英雄と

「こちらラストダンサー隊、フィアネリスさん、聞こえてますよね?」

「ええ聞こえてますよ、はっきりと、こんな死地にまで飛び込んできたのですか、この大馬鹿野郎!」


 四機でスクワッドを組むラストダンサー隊、その先頭に立つアステリスが、フィアネリスと応答する。


「その贅沢な衣装、どうやって作られたのですか?」

「貴方の戦闘データから、変形機構の持たない簡易版が製作されました。貴方達が世界のためにここで戦うとゼウス神が知ると、我々に最終究極互換装備を持たせ、舞い降らせていただきました」

「まったく、美味しい所を持っていきますね!」


 フィアネリスは援軍の登場で喜ぶだがそれでも幾千の軍勢の差は埋まらない。フィアネリス級の装備が四人いても、どれだけチートな装備をしても、相手もチート使いの死者を用いているのだ、この差は絶対に埋まらない、そう思っていた。しかしその予想は、再び裏切られる。


「お前らー! さぁ! ワイルドハントの時間だ! ボク達に歯向かう連中がいたらどうするー⁉︎」

『殺す!』

「正・解! と言うわけで助けにきたよ! おにぃちゃん、みゆにゃん!」

「渚⁉︎」

「渚さん⁉︎ どうしてここに⁉︎」


 渚がナハトヴォルフのメンバーを連れて、最前線に立っているのを見て、永戸と神癒奈が驚く。


「お前! 何でこんなところに!」

「そう言うおにぃちゃんこそ! ボクを呼ばずにおっ始めようとするなんてずるい! ボクだってかっこいいとこ見せたい!」

「ここは危険地帯なんだぞ! 生身の人間が長時間存在できないほどの!」

「んなこと聞いてるよ! でも、おにぃちゃん達が戦うのを放って置けるか!」


 そう言ってはマフラーを巻いた渚達も戦列に加わる。それでも数の差はまだ埋まらない。だが、助けにきた者はまだ、あと1人いた。


「まさか、全能神をこの戦いに呼ばない、などとは言わないね?」

「その声は…⁉︎」

「お父さん⁉︎」


 ゼウス神ことジュリアスがなんと戦場に立っていた。その声にフィアネリスと神癒奈は再び驚く。


「とは言え、自分の娘と共に戦う機会が来るとはね」

「えぇえええっ⁉︎ 神癒奈殿ってゼウス神の娘だったのでありますか⁉︎」

「しかも超タイプ……浮気の神様って扱いを受けるだけあって、超美形…」

「割と全能神に失礼なことを言うね、君」


 神癒奈がゼウス神の娘だったことに驚くフローレアと照れながらもサラッと毒を吐くメルト。2人の反応に苦笑いしつつも、神癒奈とジュリアスは機体越しに並ぶ。


「神癒奈、最高神としての大サービスに、この盤面を裏返すイカサマを特別に教えてあげよう」

「イカサマ…一体何があるんですか⁉︎」

「ここには生命力はすでにない、確かに死した地だ、だが膨大な魔力は残っている」

「それってどう言う意味ですか…?」


 神癒奈はジュリアスに質問に質問を重ねる…すると彼はこう答えた。


「確かにこの地には生者は留まらせることはできない。彼らは人ならざる者とはいえ、神格を持たない。だから怨念としてその地に残る死者を物理的にこの世に呼び戻す方法しか取れなかった。だが、君は違う、君は、全能神としての神格を、この地だけではない、さまざまな場所で死した英霊達を呼び戻す資格を持っている!」

「っ! そういうことですか!」

「さぁ! 幾多の死者達よ! その血を震え上がらせろ! お前達の前には、幾千幾万幾億と魂が継がれてきた英雄達が待っているぞ!」


 ジュリアスのその言葉で、その場に巨大な召喚陣が築かれる。すると神癒奈はコックピットから体を乗り出し、その場で詠唱を始めた。永戸はそのカバーでバトルフレームの火器を撃ち続ける。


「数多の地で戦い、朽ちていった英霊達よ、ひとたび私の思いに応え、この地に集いたまえ!」


 召喚陣がバチバチと光を放ち、輝き出す。神癒奈の言葉で、召喚陣に何千もの光の柱が立つ。それは、彼らの戦いに惹かれた豪傑の魂達であり、世界を再び救おうと願う、本物の勇者達の光だった。


「貴方達は、時には敵として向き合った者達かもしれない、しかし、この場においてはその壁を取り払い、世界の為に目を覚ましたまえ! さぁ! 今一度集え! 幾度となく円環して戦い続けてきた英霊達よ!」


 神癒奈が詠唱を終えると、その場に大量の英霊達が限定召喚された。幾多の英霊達が、永戸達の後ろに並ぶ。そこには、懐かしい顔ぶれもあった。


「死んでも死に切れないから、お前達を手伝いに来てやったぜ? 永戸はともかく、元気にしてたか? ケイ、煉禍」

「最高だ! 今までの仲間達とまた一緒に戦えるなんてな!」

「お前ら…また来てくれたのか!」

「君達は……!」

「404のみんな……!」


 そこには、完全武装の404NOT FOUND隊や永戸の仲間の少年兵達全員が並び立っていた。その懐かしい顔ぶれに、以前見た永戸は兎も角、ケイと煉禍は懐かしく思う、そして…彼らが来ていると言うことは、当然彼女達も来ていた。


「久しぶりね、ジュリアス、こんな方法で家族団欒の時間を訪れさせてくるなんて、ちょっとずるいんじゃないかしら?」

「…あぁ、懐かしいな、八尾乃」

「お母さん! 家族のみんなまで!」


 こちらも、完全武装の焔月一族が、いや、神癒奈の代だけではない、歴代の焔月の一族全てがここに集まっていた。


「へぇ、そこにいるのが今の代の焔月の当主か、可愛い見た目じゃねぇか」

「それでいて神様とか、あたしちょっと嫉妬しちゃったかも」

「見てみて! ご先祖様までいる! ってことは〜、一族勢揃いの同窓会?」

「これって、歴代の焔月の皆さん⁉︎ 貴方達まで、どうして⁉︎」

「お主ら……バカが、妾らのために皆で集まってきたのか」


 そうして次々と光の中から英霊達が召喚される度、戦力の差が縮まっていく。


「すごいすごい! 私達のために、どんどん英霊達が召喚されてくよ!」

「これなら、私達は勝てそうだ!」


 コリーとライの喜ぶ声に、四課の皆が勝てる希望を抱き始める。するとフィアネリスは言った。


「フィアネリスよりマスターへ」

「何?」

「ここでしょう!」

「何が?」


 永戸がフィアネリスに言われきょとんとする。するとフィアネリスは永戸にこう進言した。


「ほら、某映画のあのセリフですよ! アメコミのヒーローが全員集まった時に言うあのセリフ! アレを今言うんですよ!」

「あーアレかー、えっそれ俺が言うの?」

「貴方以外に誰が言うのですか! ほら! 早くしないと敵側が攻めてきますよ!」

「だーっ! 分かったよ」


 そうして永戸もコックピットから乗り出すと、剣を掲げると神癒奈の体ながらあのセリフを言った。


「いせかーーーーーい! アッセ○ブル」


 その言葉で一同が一斉に駆け出し、軍団が激突し始めた。魔法と火砲が飛び交い、英霊と死者がぶつかり合う中で、永戸達も再び戦い始める。

 バトルフレームが敵を薙ぎ倒し、先に進む中、信じてきた仲間達と共に…彼らは突き進む。


「へぇー! これが今の英雄達か! 永戸も立派になったな!」

「うん! けどぼく達、こんなに清々しく戦うのは初めてかも! なんにも怖くない戦いだもん!」


 かつて永戸と共に戦った少年兵達が剣を振るっては死者を切り崩す。かつては恐怖を抱えながら戦った彼らだが、今は守るべきものがあり、勇気を振り絞って戦えた。


「ディザスター砲、撃てー!」

「勇敢な少年兵が前方で壁をしてくれている! 俺たちも続け! 陣形を崩すなよ!」


 404の自走砲部隊が、禁止兵器とされたクラスター弾頭を雨霰のように敵陣へと撃ち込んでいく。他の兵士達も、武器を持っては突撃していった。


「いやっほーう! お前ら! 殺しを楽しめ!」

「はい! 姉御!」


 渚達ナハトヴォルフのメンバーも、各々が武器を持って暴れ回る。そんな中でも渚はぴょんぴょん跳ねながらあちこちに弾丸の雨を降らせた。


「一家全員、一つの焔となって進め! 気焔万丈!」

「焔月の戦闘術、とくと味わうがいい!」


 焔月一族が、一族全員が巨大な焔を形成し、あたりを燃え上がらせる。その焔は味方を鼓舞し、敵を焼き尽くした。


「ビット射出! ギガ波動砲! 発射!」


 アステリスの一言で、天使達も一斉射撃を行う。航空優勢は彼女達だけで十分取れた。


「行きますよ、貴方」

「全く、呼ばれることはわかっていたが、正妻には見せつけられない戦いだな!」


 八尾乃とジュリアスが互いに背中をカバーし合いながら、見事な戦いを見せていく。

 今この場において、集まった英雄達は、皆、永戸達を守り、導く為に戦っていた。

 その中を永戸達は突き進んでいく、一番奥の、フォーチュンを倒す為に。

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