用意周到を重ねて
「まさか、極秘作戦を行うと言ったら、決戦兵器を借りることができるなんて」
永戸が引き攣った笑顔でソレを見上げる。永戸が見る先にあったのは、大きさ5メートル程の人型機動兵器が並ぶ格納庫だった。
「なんですか、これ?」
神癒奈も流石に見たことない兵器なので聞いてしまう。するとどこから現れたのか、フェレッタがひょこっと現れた。
「やぁやぁ皆驚いてくれたかな? 私が作った最高傑作、バトルフレームの試作型に」
「ひゃあフェレッタさん⁉︎ なんなんですかバトルフレームって⁉︎」
急に現れたフェレッタに神癒奈が驚く。
フェレッタが言うバトルフレーム、見た目は体は闘争を求めるで有名なアレみたいな、前線で任務なアレみたいな、はたまた境界を破壊するアレみたいな、そんな見た目をしたロボットだった。各員に装備されている武器も違っており、いかにも試作兵器らしさが滲み出ている。
するとフェレッタはつれないなぁと言いながらこう答えた。
「昨今、イストリアでは一般の兵士でも特査のエージェント級の活躍ができるようにと言う計画が建てられてね、と言うわけで私は常日頃から君たちの戦闘データを研究して、んでそれを一般の兵士でも扱えるレベルにまで、凝縮して、凝縮して、それはもうzipファイルに収まるレベルまでとことん凝縮して、完成した兵器がこのバトルフレームというわけさ」
フェレッタがにぱーっとキラキラ笑顔でそう答える。
「…要するに、これがあれば誰でも英雄レベルになれるってことか?」
「いや、正式量産機には流石にそのレベルの性能はつけないさ、つけたとして、一般エージェント並みのレベルだ。もし君たちレベルのをつけてしまったら第二次異世界大戦勃発待ったなしだし、コストも跳ね上がるしね、この試作機、一機作るだけで都市の市民の血税が何十億と飛ぶから、大事に使ってくれよ、使い方はマニュアルに書いてあるから、それを参考に動かしてくれたまえ」
フェレッタも大戦の事を知ってるのか、ペンをくるくる回しながらそう軽く言っては高笑いして消える。永戸達はそれをぽかんと見送りながらも出撃準備に入るが、ここで神癒奈は永戸に聞いた。
「所で永戸さん、本当にその体で良かったんですか? 死の運命を避けるための加護ならもうかけてあるのに」
「なに、これは万が一の時のための"保険"だ、フォーチュンと対峙する時、多分俺と神癒奈が向き合うだろうしな」
そういう永戸の体は以前神癒奈から転生、蘇生された時に使われた神癒奈の仮の体だった、何度使っても慣れない身体に永戸は疼きを感じつつも、彼は戦う準備を整えた。
「総員、マニュアルは読んだな? 搭乗とともに出撃、目標はワールドエンドだ!」
永戸の指示で四課のメンバーのほとんどがバトルフレーム試作機に乗り込む、乗らないとしても特殊な装備を使うフィアネリスとエイルや、竜になるリオーネくらいで、それ以外は全員が乗り込んだ。
コックピットハッチを閉めるとメインシステムを起動するが、ここで永戸は言う。
「なんだこのOS⁉︎ 民間で使われてるOSじゃないか!」
「すまないがそこだけの開発はどうしても遅れてね、君たちレベルの動きを再現することはできなかったのだよ、まぁ民間のワーカーフレームよりは多少はマシな動きをする、ゲーム機感覚で動かせるから我慢してくれたまえ」
「あえて言うぞ、無茶苦茶だ! こんなOSで、これだけの機体を動かそうだなんて!」
どこかで聞いたようなセリフを吐きながら永戸達はバトルフレームを動かす。まずは一歩と操縦レバーを倒すと、バトルフレームが一歩前へ動き出した。
「うーわマジでゲーム機感覚だ、渚がこれ見たら喜ぶだろうなぁ」
「マスター、出撃前に妹のことを考えるんですか? 不吉なこと考えないでくださいよ」
「俺帰ったらとか言ってないから死亡フラグにならんだろ」
フィアネリスのぼやきに四課のメンバー全員がクスッと笑う。こんな時でも笑える辺り、みんな肝が座ったメンバーになったと永戸は感心すると、専用の転移ゲートが開かれ、言った。
「笑ってられるのも今のうちだぞ、花見の準備だ、異世界特別調査隊四課、出撃!」
『了解!』
その言葉とともに全機の脚部につけられたローラーダッシュが駆動し、ブースターで全身、転移ゲートを潜る。ゲートを潜って出撃する…そうして彼らが向かった先に待ち受けていたのは…。
「なんですか…ここは」
神癒奈がそう言う先に広がるのは、全てが滅び、死に絶えた世界だった。大地からは魔力と溶岩が噴き出し、死の灰が舞い、空は黒い雲に覆われた、文字通りの死の世界。そんな世界に永戸達は降り立つ。すると、こんな声が聞こえてきた。
『おやおや、どうやらキツネが犬を追いかけてはこの世界まで迷い込んできたようですネ、ですが、ここがアナタ達の旅の終着点、獣は最後に狩られるのが役目!』
憎きフォーチュンの声が響き渡ると、その世界の地面から、人が這い出てきた。
「隊長殿⁉︎ フィアネリス殿⁉︎ これは⁉︎」
「…大戦で、死んでいった連中だ」
永戸達バトルフレームなどの目の前には、何千もの死者の兵士が立っていた。その中には、かつての勇者や英雄もいて、その悪辣さには、永戸も吐き気を催した。
「これだけの兵士を……私たちだけで⁉︎」
メルトが一歩機体を後ずさせるが、もう転移ゲートは消えている。ここにいるのは、帰ることはもう出来ない。あとは進むだけだ。
「怯むな! 俺たちは世界の命運を背負って立っている、道があるなら突き進め! 目の前の障害は排除しろ! 総員、戦闘開始!」
永戸のその言葉で、四課全員の武装が火を噴いた。同時に、死者の軍勢が一斉に駆け出す。わらわらと寄ってくる死者達を、永戸達は一斉射撃で蹴散らしていく。
「すっすごい、このバトルフレーム! 本当に一騎当千の英雄みたいに敵を蹴散らしてる!」
圧倒的な弾幕と火力で敵を蹴散らしながら、煉禍がそう言う。
「でも、敵の数が多い!」
「向こうがオーディエンスなら、俺たちはさしずめちょっとした劇団ってところか!」
ローラーダッシュで走り回り、死者の軍勢を倒しながらも、南雲とクレスは焦る。
コックピットのトリガーが引かれるたびに、死者が一人、いや沢山が再び死に消える。だが、敵もただやられるだけではなかった。
「高エネルギー反応確認、何か来るよ!」
コリーの言葉に全員が身構える。すると勇者の数人がそれぞれ聖剣を抜き、光らせては切ろうとしていた。
「点を面で押し潰そうって言うのか!」
永戸達は火砲を勇者に集中させるも、勇者達は、死者を盾にして聖剣の光を増幅させていた。
「このままじゃ誰かがやられる! 何か手段はないのですか⁉︎」
「ダメです! このままだと脱落者が出ます!」
「イカサマでも何でもいい! 何かないんですか⁉︎」
神癒奈が手段を聞くと、フィアネリスがダメと言って返す。剣が振りかざされ、もうダメかと思ったその時だった。戦場を巨大な爆発が薙ぎ払った。
「なに…なに⁉︎」
「これはどう言うことでありまするか⁉︎」
「分かりません! ですがこの爆発! 長距離航行用の天使が装備するバルムンク⁉︎」
メルトとフローレアが困惑する中、フィアネリスが冷静にそう答える、永戸達は爆撃を飛んできた方を見た。
「こちらラストダンサー隊、英雄達が舞うと聞いたので飛んできました、まだ、舞えますか?」
「その声は…アステリス⁉︎ それにラストダンサーって、あり得ません、その装備が、量産される時が来るとは⁉︎」
聞こえてきた声は、フィアネリスの数少ない天使の友人の声だった、そして同時にカメラに映ったのは、純白の装備に身を包んだ天使の部隊だった。




