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ヒトとキツネの異世界黙示録Ⅱ  作者: 遊戯九尾
最終章 それは語られることなき英雄譚
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全ての始まりの地

 後日、フィアネリスの口から、四課のメンバーに、フォーチュンの居場所が伝えられた。


「異世界アルケイアス、別名"ワールドエンド"、異世界大戦の始まった地……まさかそんな大掛かりなところに隠れていたとね」


 ユリウスがふむ…と考え込む。同時に永戸やケイ、煉禍にランジーも俯いた。


「ワールドエンド、一体そこってどんなところなんですか?」

「すべてが死滅した世界だよ、空は分厚い雲に覆われ、地上には常に魔力で汚染された灰が舞う。防護装備がないと活動できない死んだ世界」

「でもその世界、とっくの昔に廃棄されて消えたはずじゃ」


 ケイが話す中、永戸はかつて自分が終戦の際に立ったあの地を思い返す。何もかもが死に絶え、寒く、そして誰も寄せ付けなくなった世界…そこにフォーチュンがいるのかと考えた。


「えぇ、ですが、フォーチュンが何らかの力…そうですね、この際仮定は抜きにして因果律の操作でその世界をサルベージした、と考えておきましょう、そして、フォーチュンはそこで今、活動しています」


 フィアネリスがそう断言すると、永戸達は納得するも、クレス達はおっかなびっくりな話に聞こえた。


「まさか、そこにこれから行くのかよ、流石にそこは、俺達には危険すぎる場所じゃねぇか? 俺も大戦は見てきたが、そんな世界なんて聞いたこと無かったぞ」

「あぁ、普通ならない、その世界が異世界大戦の発端となった激戦区、ゼロポイントだからな」


 永戸はコーヒーを飲みながら、第二支部組に説明する。


「そもそも、異世界大戦がなぜ起こったか、知ってる奴はいるか?」

「そう言えば、言われてみれば知らないな、誰も」

「それもそのはずだねぇ、何故ならこの情報はイストリア内部でもトップシークレットの情報、今まで誰にも渡ることがなかったのだから」


 永戸とケイと煉禍、フィアネリスとランジーとユリウスがそれぞれコーヒーと紅茶を飲みながら、異世界大戦の発端を話す。


「いいかね? これから話す情報は異世界の根幹を揺るがす、大戦経験者以外聞いてはいけない話だ、イストリアの上層部と特別調査隊の一部以外口外は禁止、誰にも、絶対に話さないように」


 誰も話さないようにと、固く口止めをすると、それを踏まえて、ユリウスはこう話をし出した。


 ー長い戦争があったー


 ーーー


 長い戦争があった。

 ある日突然、ある異世界ではじまったそれは、幾多の勢力と世界を巻き込み、はてしない戦火を生んだ。

 しかし、その戦火を産んだ理由は、今はほぼ誰も覚えていない、なぜならばその記憶は誰の記憶からも消された、恐るべき真実なのだから。

 異世界アルケイアス、ある日、その世界は、魔王に対抗すべく、勇者召喚を行なった。転生者や転移者を大量に呼び込み、勇者と魔王との全面戦争が繰り広げられた。犠牲は少なくなかったが、最終的に勇者側が勝ち、魔王は討ち取られた。それで、世界は平和になったと言う。

 しかし平和になった世の中で、ある時疑問を持つ者が現れた。役目を終えた勇者達はどうすれば良いのかと。勇者達はそれぞれが考えた、武勲を立てたものもいれば小さな役目を果たしたものもいるのだから、それぞれに考えの違いがあった。

 そんな中で、ある勇者が一つの答えを出した、自分たちの力を有効活用し、より良い世界を作っていこうと。だが、戦争しか知らない勇者達には、幸せな世界を作ることなんて到底無理な話だった。

 だがここでその世界の学者達はある結論を導いてしまった。勇者達を世界に存続させるための生命力が世界から枯渇してきたのだ。当時使われた勇者召喚の儀式は旧式で、世界から生命力を吸い上げては勇者を召喚し、存続させる仕組みの効率の悪い儀式だった。

 そんな儀式が何度も何度も行われ、そして結論が出る頃まで放置されて来たのだから、世界から生命力が失われつつあった。

 その生命力が尽きればどうなるか、世界は枯れ果て、魔力だけが噴き出す死の大地へと変わるだろう。勇者達の世界での生命の維持も危ぶまれた。

 そこで世界を束ねる王は考えた。


 ーならば、他の世界に侵攻し、そこを新たな居住地にしようー


 その計画は恐ろしくも実行に移されてしまった。異世界の召喚に使われた儀式が、今度は異世界に侵攻するための儀式へと技術転用され、勇者達は他の世界へ侵攻を開始したのだ。

 最初は国同士の衝突程度に済んだ。しかし、異世界アルケイアスの生命力が尽きてくると、その世界の者達はなりふり構わずなった。異世界の者達の話から、ありとあらゆる兵器を開発し、勇者達も他の異世界と全面戦争を繰り広げられた。

 やがて、アルケイアスは滅びを迎えるのだが、その地を中心(ゼロポイント)に、各地に飛散した勇者達は、各世界の者達を動かし、その戦争が発端となり、戦いは異世界から異世界へ、様々な異世界を飲み込む程の波乱を生んだ。

 そうして、異世界大戦は始まった。誰もが夢見た異世界に、破壊と滅亡が満ちた、狂気の戦争が

 戦争はいつか終わりを迎え、アルケイアスと呼ばれていた異世界は廃棄されたが、その戦争を知る者達からはその世界は悲壮を込めてこう呼ばれることとなった。


 "ワールドエンド"と


 ーーー


「……これが、異世界大戦の全貌だよ」


 ユリウスの語りを全て聞くと、クレス達どころではない、四課の全員、神癒奈までもが息を呑んだ。異世界大戦が、まさかそんな大きな理由で始まったなんて、と。


「ワールドエンドを知る者は今じゃ全ての異世界でごく限られた人しかいない、というか、知ってはならない。異世界大戦が起きた理由が、そんな醜い理由だと知られたら、また誰かが戦争を起こすかもしれない」


 誰にも言わないようにと、ケイはそう口にする。


「誰も知ってはならない、だからイストリアは、大戦のほとんどの経験者に記憶処理を行った。自分たちの組織の者までも。そして、この組織は、そうした破滅を生む種を撲滅すべく生まれた」


 続けて永戸もそう言う。その場には絶句しかなかった。誰もが、言葉を紡ぐことができなかった。不用意な事を言えば、消される可能性がある、そう考えて。


「……フォーチュンの奴は、タチが悪い事に廃棄されたその世界を住処に選んだ、当然、その場所は誰も知るはずはないだろう、だって、誰の記憶からも消された世界なのだから」


 確かにそれなら合点がいく。今まで誰も場所を知り得なかった理由も。そんな中で、神癒奈が言った。


「そこを叩けば、魔想体がばら撒かれるのも防げるんですよね?」

「そうだな、今度こそその世界を廃棄すれば、魔想体は滅んだ世界ごとサヨナラだ」

「なら、私たちが終わらせましょう。これ以上、悲しむ誰かを増やさないために」

「なぁおい! 今度ばかりはやばいって! そんな世界に行くのはよ!」


 クレスは神癒奈を止める。これは組織の規律とかではない、生命の危機を感じての事だった。


「なら、ここから先も、魔想体を回収し続ける任務を続けますか?」

「それは……」


 クレス含め四課のメンバー全員が考え込む。果たして自分たちがそこに行っていいんだろうかと


「行け、そして必ず、今度こそその世界を終わらせてこい」


 すると、ランジーはそう言ってのけた。今までそう言った事に不干渉だった彼が、そう言ったのだ。


「ランジー課長補佐…けどよ」

「責任は俺が持つ。俺も隊長と課長同様に大戦参加者だ。俺たちがしてしまった戦争を、今度はお前達が確実に止めにいってこい」

「……お前らは、どうする?」


 クレスは第二支部メンバーに聞いた。すると帰って来た答えは一つだった。


「止めましょう! それが我々の役目であるならば!」

「うん、これ以上の犠牲者はもう出したくない…終わらせましょう!」

「隊長や神癒奈が行くのであれば、私も行く

「僕は、最初から止めに行くつもりでした。僕も大戦に参加した身として、精算をしたい」


 その言葉を聞いて、クレスは考え込むと、だぁぁぁぁ! っと頭を掻き込んだ。


「しょうがねぇな! 隊長達の無茶に付き合ってやるよ!」

「ありがとう」


 永戸は礼を言うと、作戦に参加する四課の全メンバーに伝える。


「今作戦は極秘任務になる。誰からも賞賛されないし誰にも知られることがない、語られることの無い戦いになる。それでも、ついてくるか?」


 その言葉に、全員が頷いた。それにホッとすると、永戸は言った。


「じゃあ、奴を倒すために色々対策を練らないとな、何が待ち受けてるか分からないし」


 そうして四課は動き出した。終わりを迎えた世界を、今度こそ終わらせるために。

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