咆哮
邪竜ローゼスとの戦いの火蓋が切って落とされた。永戸と神癒奈が武器を構えては、ローゼスの魔想体によって強化された体に向けて攻撃を行う。
『無駄だ! 竜の体は白銀の武器でも貫けぬ!』
「なら聖剣や強化された妖刀の一撃ならどうだ!」
永戸達の武器は、基本的には表面に白銀の加工が施されている。だが聖剣や妖刀は、個々のスペックが高い為、白銀の力がなくても戦える。だが、そんな武器があってもローゼスの肉体は硬く、斬るのは一苦労だった。
「なんて硬い甲殻なんだ!」
普通に剣で斬ろうとしてもガツンと弾かれ、永戸と神癒奈は下がる。
『効かぬ、我が鱗と殻は強靭だ、例え聖剣を持ち出されても傷つけることはできぬ』
「なら、これならどうだ!」
永戸は聖剣に零の力を込めると、ものの見事に切り裂いた。先ほどの一撃から察していたが、聖剣だけでは歯が立たない甲殻も、零や境界線を使えば切り裂けるらしい。
「いける! 神癒奈!」
「はい!コンビネーションでいきましょう!」
永戸と神癒奈が二人合わさると、爪を振り下ろして来たローゼスの前足を永戸が切ってはカチ上げ、神癒奈が抜刀し、ズタズタに切り裂いた。
『ぐぅっ! 貴様ら……!』
すると、ローゼスがいきなり噛み付いて来た。その間に、ライが割って入ると、バリアを展開してガツンと防ぐ。
『そのような力など、我が咆哮で消しとばしてくれるわ!』
ローゼスが咆哮をすると、永戸達の力が解け、バリアも消えてしまう。
「何⁉︎」
「私達の力が、使えなくなりました!」
「これも魔想体の力というわけか!」
永戸は歯噛みをすると再び喰らいついて来たローゼスから逃げる。力が一時的に使えなくなった結果、永戸達はその場で逃げ惑うことしかできなくなった。
『ははは! 恐れよ! 竜族の怒りをその身で味わうがいい!』
ローゼスがブレスを薙ぎ払い、爆発を起こすと、永戸達は一同がダメージを受けた。
「くそっ! 避けるだけで精一杯だと言うのに! 能力を停止させる咆哮にチート級のブレスまであるとなると厄介すぎる!」
永戸は白銀鉄芯を装填すると、リヴァンジェンスⅢをベクターキャノンモードにして射撃体勢に入る。この一撃なら、ローゼスの体を撃ち抜けるはずだ。
『させるものか!』
ローゼスが頭部で頭突きをするが、再びライが入り込み、今度は彼自身が盾となって防いだ。
「ぐっ…! 永戸の邪魔はさせない! 行け! 永戸!」
「あぁ! ぶち抜け!」
ベクターキャノンから白銀鉄芯を撃ち込むと、それは見事にローゼスの体に突き刺さり、かの者を一歩引かせた。
『バカな…! 我が鱗が貫かれるなど!』
「よし、一発通った!」
竜の体からすれば、針の一本のようなものだが、だが永戸達からすれば、白銀の力のこもった一撃だ。ローゼスから力が抜けていくと同時に、永戸達に力が湧いてくる。
「反撃開始だ!」
『させるかと言っておろう!』
ローゼスが再び咆哮をすると、今度は重力が操られ、永戸達の体がとてつもなく重くなった。
「なっ⁉︎ まだこんな力が残ってたのかよ…!」
「体が…重いです!」
永戸達は動けなくなり、地面に突っ伏す、ライも、神癒奈も、その場から動けなくなった。だがその状況下で、火をつけた者がいた。
『業火!』
玉藻前が、妖術を使い、ローゼスの体を焔の槍で貫いた。直接的な攻撃ではなく、妖術となる攻撃のため、ローゼスの体は容易く貫かれ、奴は体を内側から焼かれる。
『ぐああああっ! 何だこの術は!』
「遠い異邦の地の妖術じゃ、お主には到底理解することはできんじゃろうがな」
玉藻前は突っ伏した状態からでも狐火を出すと、それを燃え上がらせてはローゼスを焼く。
「私…だって!『劫火!』」
神癒奈も焔を出すと、ローゼスを室内で焼いた。流石に耐えきれなくなったのか、奴は外へ出て火を消そうとする。同時に重力操作が解け、永戸達は立ち上がった。
「今だ! 一斉攻撃!」
城から出て、永戸はワイヤーを飛ばすと、ローゼスの首に取り付き、そのまま切り刻んだ。
ローゼスの首がガクンと垂れ下がり、神癒奈の前に落ちてくる。神癒奈は抜刀の構えを取ると、言った。
「焔月式抜刀術、零式・改『月隠!』」
神癒奈が不可避の斬撃を飛ばし、ローゼスの顔に複数の傷跡をつける。
焔月式抜刀術の一撃だ、鎧のような頭殻は砕け、ローゼスの顔に深々と傷がつく。ローゼスはそれに耐えられなくなると、首を持ち上げては再び咆哮の構えを取った。
「もう吠えさせるか! 絶望よ、世界に仇なせ!」
永戸がそう言うと、絶望が以前よりも強い力で発動し、黒いタールから巨大な狐が現れる。そしてその狐がローゼスの首元を噛み付くと、ローゼスは絶望の侵食によって悶えた。
『がぁっ! 貴様ぁああああ!』
ローゼスが怒りのままに首を噛まれた状態でブレスを吐いては振り回す、周辺が爆裂するが、永戸達は怪我一つなく持ち堪えると、剣を構えた。
「年貢の納め時だ!」
永戸が魔想体のある胸部に突撃すると胸部を切り裂いては魔想体を抜こうとする。しかし竜のサイズなだけあって、いつもより大きな魔想体は、簡単には抜ける気がしなかった。それでも永戸は魔想体を引き抜こうとする。その時だった。
『それに触るなぁ!』
「危なっ!」
魔想体からレーザーが飛ぶ、永戸の目の前をレーザーが薙ぎ払われ、危うく彼は首と体がなき別れするところだった。だがそれをしのぐと、永戸は今度こそ魔想体を掴む。
「取れろぉおおおお!」
永戸が強く引っ張ると、ぶちぶちと音を立てながら魔想体が剥がれていく音がする。そして彼がさらに強く引っ張ると、魔想体が剥がれ、ローゼスから力が失われた。
『バカな…我が、人間と狐に負けるなど…!』
認められないかのように、ローゼスが叫ぶも、力尽きたのか、大きな音を立ててドスンと倒れた。
『アンタ達⁉︎ 大丈夫⁉︎』
リオーネが心配そうにこちらにやってくる。それを見た永戸はこう答えた。
「なんとか……魔想体をこいつから引っぺがすことはできたよ、これで状況終了だ」
永戸がそう言うと、竜の撃退に成功した四人は、ぐったりと地面に倒れ込んだ。流石に永戸らも疲れたようで、地面に倒れ伏せてると、リオーネはその場にいた竜達に言った。
『主導者ローゼスは敗れた、もう暴動を起こすのはやめなさい、これ以上、騒ぎを大きくしては、竜の民達にとって迷惑よ』
リオーネの言葉で、竜達は恐れ多そうに首を下げると後退りしては飛んで去って行くのだった。それを見届けたリオーネは言う。
『良くやってくれたわね、アンタ達』
「どうも、これが仕事だからな」
永戸のその一言で、全員が頷いたのだった。




