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ヒトとキツネの異世界黙示録Ⅱ  作者: 遊戯九尾
第十六章 竜の国へ
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竜の国の暮らし

 案内役に連れられながら、永戸達は竜の国を歩く。


「すごいですね……家がどれも大きい」


 神癒奈が見上げると、そこには竜がまるまる数匹入れるような巨大な住居がいくつも並んでいた。


「都市や他の国と違って、なかなか大きな家でしょう? 私達は普段、竜の姿でこうした住処で暮らしております」

「設備やインフラとかはどうなってるんですか?」


 神癒奈はふと疑問に思ったことを案内役に聞いてみる。


「電化製品などは、基本的に竜達の暮らしには問題がないのでいりません、交通なども、広々とした道を用意してるので、竜族が困ることはありません」

「確かに、道幅が大きいですね、これなら竜が歩き回るのも問題がないかなと思います」


 神癒奈がうんうんと頷く中、今度は永戸が聞いた。


「ここの竜達は、人を襲ったりとかはしないのか?」

「はい、世の中には竜が恐ろしいと言う一部の論者もいますが、我々の国は女王リオーネ様が従える国、侵略や略奪などの行為などは一切行っておりません」

「平和な国なんですね」


 竜があちらこちらを飛んでたり地上で歩いてたりしてるのを見ると、神癒奈も見た目が竜なだけで普通の国なんだなと面白く感じた。


「そちらの方は我々と国交を結んだ月の国の神癒奈様ですよね? 貴方の国から送られてくる酒が、竜族の中でも大層気に入られてましてね、量こそ我々のサイズと比べると少ないものですが、皆貴方の国の酒を嗜んでます」

「本当ですか? それならよかったです」


 神癒奈がパァッとした表情で答える。一方で永戸は遠くに見える王城を見ていた。


「王城もそれなりにデカいんだな」

「えぇ、と言っても外観だけデカくて、中身はスカスカよ、人間の真似事をしてあんな建築をしてるだけよ」


 リオーネがそう説明していると、街の広場に出た、観光客の人たちが集まっては龍を写真に収めたりしていたが、永戸達はそんなことをしている暇はない。


「それで、ここでの任務ってなんだ?」

「ここでの任務はアタシの政治の手伝いね、と言っても付き添うだけだから、楽にしてていいわ」

「本当にそれだけでいいのかい?」


 仕事にしては楽すぎるとライが聞くと、リオーネは自信を持って答えた。


「アンタや永戸が政治をしても何もわからないでしょ? ギリ神癒奈や玉藻がわかる程度よ、アンタ達は何もせず、ただアタシの護衛だけしてればいいわ」

「分かったよ、女王様」


 軽々とライがそう言うと、永戸も頷いた。だが神癒奈達は気になった、竜の国の政治がどのような感じなのか。


「あの、ここの政治ってどんな感じなんですか?」

「1日にやってくる民の声を聞き、それを国に反映させる、意外とアナログな政治ね、心配しなくても、そんな難しいことじゃないわ」


 するとリオーネは銀色の竜の姿になる。その姿を見た途端、竜の国の民達は驚いたのだった。


『リオーネ様だ! 女王陛下が戻られたぞ!』

『我らが女王様、どうか我々のお声をお聞きください!』


 竜達が集まっては、リオーネに群がり一人一人意見を言い始めた。


『国営の魔物牧場で最近疫病が流行っております、なんとかなりませんか?』

『他国から疫病に対する予防接種剤を輸入しなさい、資金ならアタシが出すわ』

『子供達に人間達との触れ合い方を学ばせてほしいの、人間に怪我をして帰ってほしくないから』

『なら、人間の講師を読んで人間の暮らしと接し方を学ばせるべきね、都市から学者を連れてくるわ』


 竜達一匹一匹の声を聞いていくリオーネに、永戸達はすごいなと感心する。その姿は神癒奈も舌を巻くほどで、民の声を聞くリオーネの姿に、驚くのだった。


『詳しいことは王城についてから皆の声を聞くわ、それまでは少し待ってなさい』

『はい!』

『アンタ達、そのまま歩いても王城までは遠いし、背中に乗せて送ってあげるわ』

『女王様が人間を背中に⁉︎』


 リオーネの言葉に周囲の竜達がざわめく。だがリオーネはこう言った。


『問題ないわ、彼らはアタシの大切な仲間よ、女王として丁重にもてなすまでだから、王としての気品さは下げないわ』

『ですが、頼んでいただければ我々に運ばせていただきますよ!』

『いいのよ、アタシが望むことだから、ほら、乗りなさい』


 リオーネが竜の体を落とすと、永戸達を乗せた。かなり大きな体にちょこんと乗っかる永戸達。サイズ感の違いがかなりあった。


『それじゃ、しっかり捕まってなさい、飛ぶわよ!』


 その言葉で空に上がると、リオーネは王城までひとっ飛びする。初めて感じる空を飛ぶ感覚に、永戸は驚く。


「ジェットコースターに乗ってる気分になるな! これ!」

「はい! すごい風圧です!」

『あんまり喋ると舌を噛むわよ!』


 本当に文字通りひとっ飛びで王城に着き、到着すると永戸達は降ろされる。まだ少しふわふわした感覚が残ってたが、永戸達はなんとか地面に立った。


『着いたわ、さて、溜まった政治の仕事を片付けないとね』


 リオーネは竜の姿を解かず、王城の開かれた門を先に潜って行った。永戸達も門をくぐるが、竜サイズの巨大な門のため、最初は圧倒された。そして中に入ると、そこは厳かな謁見の場だけがあった。


『で、民からの声はどんなのが届いてるのかしら?』

『はっ! 女王様がしばらく留守にしていた際に多数の竜達が一つの派閥を築いては女王の席を狙った所です!』


 使いの竜からそう言われると、リオーネはしっかりと答える。


『えぇ、話は聞いてるわ、ローゼス卿の派閥ね、しかし何故、彼は私から自身の派閥へと鞍替えしたのかしら?』

『詳細は不明です、ですが、近々派閥の竜達と暴動を起こす可能性があります!』


 それを聞くとリオーネは深くため息をついた。


『暴動ねぇ、平和に暮らしていた竜の国にとうとうそんなことが起きるのね、こんな事、お父様の代では起きてたのかしら?』

『えぇ、貴方様の父の代では、暴動は一度見たことがあります、その際は、貴方の父がお止めに入りました』


 リオーネは深く考え込む。この失態はしばらく席を空けすぎた自分にあると。そう悩んでいると、永戸達は答えた。


「その暴動を俺達が鎮圧することはどうだろうか? 一応これでもイストリアの兵士の一人だ、介入する理由はある」


 その話を聞くと、リオーネはいい提案に思えた。永戸達イストリアの兵士、とりわけ四課のエージェントはこう言った出来事に介入する力がある、それに彼らなら竜を大人しくさせるだけの力はあるだろう、このことを任せられるとリオーネは思った。


『そうね、そこはアンタ達に頼もうかしら、アタシは見ての通り王城から動けないわ、暴動が起きたらすぐに駆けつけなさい』

「あぁ、分かったよ」


 そう言うことで、永戸達はリオーネに頼まれて、政治の合間に国を見守ることが決まったのだった。

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