異世界どうでしょう?
ーどうも皆さん、知ってるでしょう? 陽宮永戸でございますー
お い 旅 に 出 ね ぇ か
というわけで永戸達は荷物をまとめ、異世界間鉄道の駅に立っていた。
「どうして……私たちだけ仕事に…ううぅ…」
「我慢するのじゃ、動ける面子がお主らしかおらんかったのじゃから」
玉藻前に宥められながら、神癒奈が泣きながら荷物を確認する。永戸のキャリーケースの中には二人の衣服や生活用品を入れてきたが、何故か神癒奈も荷物を持ってきた。
何を持ってきたのかチラリと確認すると、旅先での万が一のことを考えてか水や簡単な食糧を持ってきていた。えらい。
そのことを永戸はほめてやりたくなったが、よく見るとキャリーケースの奥にはお菓子が大量に詰め込まれていた。
(病院食…不味かったもんな)
こっちもこっちでトラウマを抱えてるのか、大量のお菓子と食料を抱えた神癒奈に、何も言えなくなる永戸。
所で、今回行く旅先だが、と永戸が話を切り出す。
「そう言えば、今回行く旅先って竜の国だよな? たしか、前にリオーネが来た時に囮とは言えお前の国と国交を結んだという」
「そうですね、私も行ったことはありませんが、いい国だと聞かされてますよ?」
そんな会話をしていると、一緒に旅をする玉藻前が話してきた。
「所で向こうで食える美味い物とかあるのかのう?」
「向こうの特産品は巨大魔物の燻製だとか、貿易で流れてきますね?」
「魔物の燻製のう、酒のつまみにはなりそうじゃ」
玉藻前がくくくと笑って楽しみにする。こんな時でも食い意地が張るのは焔月のサガなのだろうか、じゅるりと涎を垂らす二人に永戸は「仕事だからな?」とツッコむ。
そう話しているとリオーネとライがやってきた。
「おはよう、これで全員揃ったわね!」
「全く、これからどんな風に女王様に振り回されるのか、考えたらゾッとする」
永戸は旅先でどんな目に遭わされるか考えるとリオーネに対してため息をついた。
「まぁそう言ってやるなよ、私もついている、ここは一つ、な?」
「そうは言われてもなぁ、ライ、今回の仕事はこの五人だけ、フィーネのサポートは得られないんだぞ? 俺とて心配になる」
「確かに、フィアネリスの支援がないのは心配だ、永戸の言いたい気持ちもわかる。だがこんな時のマニュアルがフィアネリスから渡されてるのだろう」
あぁ、確か…と永戸はゴソゴソとアイテムボックスをどこぞの青い猫型ロボットみたいに漁る。すると、辞典並みに分厚か大きいマニュアルが取り出された。
「なんですか…それ?」
「フィーネから渡された異世界で万が一トラブルが起きた際のマニュアルだよ、ページ数がエグくてね」
ぴらぴらとページをめくってはマニュアルを読もうとするが、あまりにもページ数が多いので読む気が失せ、アイテムボックスに放り戻した。
「仕方ない、フィーネ抜きだが任務を行うしかない」
「そうですね、一番頼りになる方がいないのはちょっと心細いですけど、それしかなさそうです」
そう言うわけで、永戸達は竜の国に行くべく、異世界間鉄道に乗ることになった。
相変わらず"いい旅を"の意味を込めた飴をもらいながら、一同は列車に乗り込む。
「旅先ではアタシが案内してあげるわ、女王直々の案内よ、感謝しなさい」
「はいはい」
「あ! ちょっと面倒だなとか思ったでしょ⁉︎」
「思ってない」
だが顔にはよく出る物で、永戸はこの旅先で何が起きるか、軽く心配になりながら車窓の外を眺める。
列車は動き出したが、外はまだ都市の風景だ。だがこれが少し経つと異世界転移をし、竜の国へと変わるのだ。本当に都市の技術は進んでいる。
「ま、なるようになれ、だな」
永戸は投げやりながらもそう思うと少しの間だが、眠りにつくのだった。
ーーー
次に永戸が目を覚ますと、神癒奈がはしゃいでいた。
「見てください永戸さん! 竜が窓の外で飛び交ってますよ!」
「ん……うげ…」
目を覚ました永戸が窓の外を見ると、そこにはたくさんの竜が空を行き来する光景が見えた。
よく見ると竜達の中には、荷物を抱えた個体や鎧を着込んだ個体までいた。
「なかなか大きいスケールでしょ? アタシの国は」
「あぁ、想像を絶するな」
ライも初めて見る竜の国に驚いたのか、口をぽかんとしながら景色を見つめる。
「さ、降車の準備よ」
そうして駅に着くと、リオーネに連れられ、竜の国へと入る。すると駅のホームにて、竜の女性達が待っていた。
『竜の国へようこそ、旅の皆様』
列車を降りた永戸達や他の旅人を竜の女性達が人間の姿でそう出迎える。少し間をおくと、彼女達はリオーネを見て、言った。
「貴方は、女王様⁉︎ よくぞ戻られました!」
「我々竜達は貴方を待っておりました!」
出迎えの竜達の反応の変わりように、永戸は少し疑問を抱く。
「しばらく戻ってなかったのか?」
「えぇ、何せ四課での書類仕事が忙しかったもの」
リオーネはうんと背伸びをすると竜達に言った。
「ただいま戻ったわ、アンタ達は国の案内役でしょう? なら国の状況も知ってるはず、詳しく伝えなさい」
「はい! 現在我が国は女王に対する反対運動が活発化しております!」
「アタシへの? なんで?」
「長らく王城の席を空け続けた偽りの女王と貴方は言われております!」
それを聞くと永戸達はあーっと申し訳ない気持ちになる。彼女の本来の仕事を投げ出させてしまったことに対し、軽く謝罪をしたくなった。
ところがリオーネは落ち着いて言った。
「民達に伝えなさい、長らく席を空けていた女王が戻ったと、これは向こうでの仕事に時間をかけすぎたアタシの落ち度ね、深く謝罪するわ」
「とんでもない! 我々竜族は至高の貴方に仕える身、謝罪などしなくてもよろしいのです!」
そう言って竜達は慌てるも、リオーネが手を挙げると静かになった。
「ここで立ち話をしててもアレね、出迎えはご苦労だったわ、この者達に国の案内と、それと現在の政治状況を詳しく伝えなさい」
「はい、では政治の状況から伝えます、現在我が国では女王派の他にもう一つ派閥が生まれております」
「その派閥をまとめる者の名前は?」
「はい、その派閥は国の急進派、ローゼス卿の派閥です」
歩きながら政治の話をされるものだから、この国の政治に詳しくない永戸達はそれについていけずにいた。困ったようにポツンと立っている彼らは、リオーネの話を聞きながら歩き続ける。
「ローゼス卿ね……彼はアタシにとてもよく仕えてくれていた立派な貴族のはずだけど」
「はい、ですが……今ローゼス卿の派閥が王の椅子を狙っております。リオーネ様はくれぐれもお気をつけを」
「分かったわ、その話、聞いといてあげる」
その話を隣で聞いた時、ややこしい政治争いに巻き込まれそうだと永戸達は思ったのだった。




