隊長達の不在の中で。
永戸達がベッドに縛り付けられてる間、四課は当分隊長を失う事となった。しかし、ただ隊長を失うだけではなかった。
「と言うわけで永戸達がいない間、今日から臨時で僕が隊長になる、いいね?」
「いえっさー!」
四課ではケイが臨時で指揮を取る事になり、永戸の代わりに隊長になる。
「ケイさんが隊長ですか、404の頃を思い出しますね」
「ですね、なんだか懐かしいです」
フィアネリスと煉禍はケイが隊長を務める事に懐かしさを感じる。大戦時は隊長ではなく英雄だったのだが、どちらも似たようなものだと思うと二人はほっこりした。
「君たちがいなかった時期は僕が隊長をしていたからね、代理としては十分だろう?」
「えぇ、そうですね、存じております」
永戸達が第二支部にいた頃の話はユリウスから聞いている。そのおかげもあってすぐに受け入れられた。
「で、隊長代理さんは無茶な命令はしないよな?」
「ははは、僕は永戸みたいに無理は言わないよ」
クレスが不安がるも、ケイは笑って話した。
「だけど、仕事はきっちりしてもらうからね、四課、出撃準備だ」
「はい♪」
「はい!」
フィアネリスと煉禍が慣れた手つきで出撃準備をする中クレス達は慣れない隊長代理に戸惑いつつも出撃準備に入る。
「それで、出撃エリアはどこでありましょうか?」
「場所は…」
場所を聞くと、四課のメンバーからは歓声が響き渡ったとか。
ーーー
というわけで四課のメンバーがやってきたのは……
「ひゃっほぉおおおおう!」
南国の島の海辺だった。クレスがはしゃぎながらサーフボード片手に海に飛び込んでいく中、フィアネリスは永戸と連絡を取る。
「現在我々は南国に来ています。こちらは最高ですよ、照りつける太陽が私の肌を焼いてくるようです」
【そうか、良かったな、俺たちも行きたかったよ、けど仕事なんだろ?】
「というより、休暇みたいなものです。マスター達が不在の中、危ない仕事をさせるわけにはいかないと、ケイ様がはからってくれました」
【そうか、あいつも気が利くな、せっかくだ、しばらくその休暇、楽しむといい】
「はい、お言葉に甘えて、私も羽を伸ばさせてもらおうと思います♪」
永戸と通信を切ると、フィアネリスはコテージのビーチベッドで楽にしながら日焼け止めを塗る。隣にはメルトも寝転んでいた。
「まさかこうして休暇をいただけるだなんて」
「休むことも仕事です、この時間を有意義に使っていきましょう」
フィアネリスとメルトが休む中、遠くではライフジャケットを着たフローレアが泳ぎ、一方で、南雲と煉禍は釣りをしていた。
「…釣れそう?」
「ううん、そう簡単には釣れないですね」
南雲は番傘と椅子を用意して本格的な釣りを楽しむ中、煉禍はサバイバルキットの釣り用具を利用した簡単な釣りを満喫していた。装備もスタイルも違う二人だが、魚を釣ろうとしてもお互い全く釣れなかった。
「ぷはっ、私としては初めての海でありまするが、中々よいものですな!」
「へぇ、フローレアは海は初めてか?」
「私はエルフ、森の民故、海に来ることなどなかったのであります! 話には聞いてはおりましたが、海とはしょっぱいものでありまするな!」
「ははは、そうか、そういう新鮮な反応、嫌いじゃないな」
クレスとフローレアが互いに笑い合い、こちらを海を楽しむ。そんな光景を見ながら、フィアネリスとメルトはくつろぐ。
「なんだか、色々変わりましたよね…第二支部ができてから、ボランティアばかりの毎日から激戦の毎日になったり、本部に来たり」
「そうですね、私も、実を言うと第二支部に来て最初は、平和すぎる日々に欠伸をしていました。物語になんの面白みもない、ただ平凡な時間を送る毎日、私はそれに飽きてました」
「ですよね、フィアネリスさんや隊長達は元は本部のエリート、私たちとは違って死線をこえてきてますし」
「マスター達も実は欲求不満だったのですよ、ああ見えて」
それは確かにとメルトは思い、第二支部に来てからの彼らのことを振り返る。命令違反や無茶振りをしては課長のランジーに怒られていたが、だがそれでも、四課としての使命は果たしていたと。解体されるまでは支部長の言いなりではあったが、近くで彼らを見てきたメルトにとっては、彼らが眩しく思えた。
「まぁ、こっちに戻ってきてからは、また忙しくなりましたね、他のメンバーも駆り出されてこそいますが、私達は実質貴方達のおもりをしてるようなものですし、しかし、こうしてのんびりと過ごせる時間が作れたことは良いことです」
気軽に読書をしながら、フィアネリスはそう言う、気がつくとベッドのそばのテーブルには本が積み上がっていて、メルトは目をぱちくりする。
「それ、全部読むんですか?」
「えぇ、貴方も読みますか? 都市の書店で買ってきた新刊の異世界ものの第一巻です」
「異世界もの? 普段から異世界に介入しているのにそう言う本を読むのですか?」
「私の趣味ですので」
ペロリと舌を出すと、海のように青いトロピカルジュースを飲み、読書に勤しむフィアネリス。
「海に来てまで読書だなんて、相当好きなんですね、本を読むのが」
「泳ぎはできなくはないですが、普段から空を飛んでますので、似たような経験をしてるようなものです。それに…」
フィアネリスはチラリと他の人のいる方を向いては言う。
「他の人に万一のことがあったら、動けるのは私だけですので」
「それは…確かにそうですね、隊長達が不在の中、頼れるのは貴方くらいしかいませんね」
ここにきているのはフィアネリス、フローレア、クレス、メルト、南雲、煉禍の六名だけだ、他には誰もいない、ビーチも貸切で、実質プライベートビーチみたいな扱いで、フィアネリス達はここにきていた。
「そう言う貴方は泳がないのですか?」
「私は…あまりアクティブなのは得意ではないので」
メルトも試しに異世界ものの小説を手に取ってみる。読んでみるとそれは、よくあるチート物の異世界小説だった。
「私達って普段からこんな物と向き合ってるんですよね?」
「えぇ、チート、成り上がり、ざまぁ系、触れられる物はおおよそ触れてきましたね」
にっこり笑いながらフィアネリスは言う。メルトはそれを聞くと、うんざりするような表情になる。この手の話を見るとまるで職業病のようにゾッとなってしまうのは気のせいかなと鳥肌を立たせながらメルトは読む。
「まぁ貴方が多少嫌悪感を抱いても仕方はありません、我々イストリア異世界特別調査隊四課のする役目は、そういった異世界からどんな手段を用いても悪意や邪道を制する事ですので」
だがフィアネリスは涼しそうな顔で本を読む、隣で読むメルトはフィアネリスに問いかけた。
「所で、こんな本の中にも私達の仕事の対象はありますか?」
「勿論、危険分子はこういった物語にも潜んでいます」
帰ってきた答えは実にシンプルだった。




