世界は私の箱庭
今日は仕事は休み、のんびりとした一日を過ごそうとしていたが、だが神癒奈は別件である存在に呼び出されていた。
「うげっ…この威圧感のある羊皮紙……天界からの依頼ですね」
神癒奈は手紙の中に入っていた今の時代に古めかしい羊皮紙を見つめて、困った表情になる。そして、それにはこう書かれていた。
【全能神神癒奈様へ、このたび貴方には世界の管轄の任が任されるようになりました、全能神ゼウス様の所までお越し下さい】
「世界の…管轄?」
きょとんとして神癒奈は羊皮紙を見つめる。世界の管轄とはなんだろうと。しかし見ていてもどうしようもないので現在罰で家事一ヶ月の当番中の頼れる守護天使を呼んだ。
「フィアネリスさーん、なんか天界から手紙が届きましたー」
「もうっ、洗濯物の取り入れ終わってないのですよ? 天界が神癒奈さんに一体何の用ですか」
彼女を呼ぶと、フィアネリスが洗濯物用のカゴを片手に現れる。
「なんか、世界の管轄? とか言うのを任されるそうで」
「……ついに来ましたか、神癒奈さんにもその時が」
神癒奈から話を聞くと、フィアネリスは一瞬目を丸くするが、覚悟を決めるようにぱぱぱーっと魔法で洗濯物の取り入れを終わらせると、フィアネリスは神癒奈に話を説明する。
「一体なんですか、世界の管轄って」
「要するに、貴方にこれから一つの世界の管理をしてもらうと言うことです」
「世界の…管理?」
聞きなれない言葉を聞いて、神癒奈は何をすればいいのだろうと聞く。
「具体的に何をすればいいんですか?」
「そこは、天にいるお父様から聞いてみては? あぁ私は行きませんよ、あそこに戻るのは虫唾が走るので」
「まぁまぁそう言わずに」
フィアネリスは過去に天界から追放されたり戻されては洗脳を施されたりと散々な目に遭っている。自分に関係のないことなら戻る理由がなかった。
が、神癒奈についてきてほしいと必死に頼まれ、そう頼まれると断れないのか、フィアネリスはしょうがなさそうにため息をついた。
「分かりました、ついて行くだけですので、それ以上はしませんよ」
「ありがとうございます!」
一通りの家事を瞬時に終えると、と言うわけでと二人は天界への転移ゲートを開き、久方ぶりの天界へと行くのだった。
ーーー
転移ゲートを潜り抜けると、綺麗な空と雲海が見える神殿だらけの世界が見えた。そこが天界で、やってきた二人は悠々と天界を歩く。
以前と同じように、相変わらず天使たちから噂されるが、もう二人は慣れたように歩んでいき、全能神ゼウスのいる神殿へと着いた。
「ここからは一人で行きますか? 家族の時間に私が入っては邪魔なのでは?」
「大丈夫です、貴方からの説明も受けたいですし、一緒に入りましょう」
ゼウス神と神癒奈とは、神同士である以前に、実の父と娘という関係にある。理由は、失った母親がゼウス神と接触していて、共に愛を育んだ結果、焔月から全能神の素質をつぐ少女、神癒奈が誕生したのだった。そんな家族の時間を壊さないかフィアネリスは心配したが、神癒奈は否定し、誘った。
「なら、お供させていただきます」
フィアネリスがそう言い、神癒奈の隣に立っては歩く。そうして神殿の中に入ると、二人は神聖な神殿の中を見るとともに、かつてここで起きた戦いを思い返す。
かつて戦った絶望、アズウルとの決戦の地はここだった。あの時必死で戦い、世界を救った事は、まだ記憶の底に埋もれていない。そして、神殿の中心の神の座に座る者が、喜ぶように神癒奈に話しかけてきた。
「やぁ、神癒奈、久しいね」
「お久しぶりです、ゼウス様」
そこにいたのは白髪で神癒奈と同じ青い瞳を持つ神様で、椅子にゆったりと座りながら二人を待っていたのだった。
「そう堅苦しく言わなくていい、ここには君たちと私しかいない、いつものように、気軽にジュリアスと呼んでくれていい」
ゼウス神ことジュリアスと、神癒奈とフィアネリスは真っ向から向かい合う。神癒奈は仕事モードで硬く話そうとするが、ジュリアスはそれを一蹴し、気楽に話そうとする。
神癒奈とジュリアスはフィアネリスがある一件で天界に来て以来、共に話す機会が増えた。家族の時間を共にする事もあったが、今回は仕事の話だ、公私混同するわけにもと神癒奈は思ったが、杞憂だったようだ。
「それで、私に何をさせたいのですか? お父さん」
「…要件については羊皮紙に書いた通りさ、君に、世界の管轄をそろそろ任せたいと思ってね」
まぁ気楽に話をしようと、ジュリアスがパチッと指を鳴らすといつものように椅子と茶器が出てくる。神癒奈たちはそこに座ると、ジュリアスと座談を始めた。
「世界の管轄について、まぁ簡単に話すと、人間がやっている箱庭創作ゲームみたいなものさ」
「箱庭?」
神癒奈にはあまり想像がつかなかった、家で永戸達が箱庭系ゲームをしているのを見たことはあるが、それの異世界版となると、壮大なスケールであることは確かだとは思った。
「あらかじめ用意された舞台の上に、人を配置し、それを自分の神域から眺めながら色々起こして調整していく」
「調整とは?」
「世界に降り注ぐ天災や、あるいは歴史上のターニングポイントを作り、人々をうまく誘導していくんだ、まぁ、初めての君に最初は難しいからここで軽く私がレクチャーしよう」
ジュリアスが再びパチンと指を鳴らすと、世界の一つか、丸い球体に土地がある星儀が出される。そこにはまだ人がいないのか、まっさらな状態で、緑豊かな土地しかなかった。
「まずは人々を転生させよう、最初だから、あらかじめ記憶のある人たちではなく、漂白した記憶のない魂を用意するんだ」
漂白した魂の数々をこの星上にポツポツとジュリアスは設置させて行く。同じように神癒奈も人を設置すると、拡大して景色を見ると、人々が石器時代から生活を始めた。
「よし、後は、世界に細かく調整を加えつつ、人々に文化を与えるといい」
「文化?たとえば何をすればいいのでしょうか?」
「簡単さ、歴史にターニングポイントを与えれればいい」
そう言うとジュリアスは世界の時間を早送りし、ある程度過ぎたところで歴史のターニングポイントを用意した。すると、生活する人々が魔法を使い始め、技術が発展し、石器時代から抜け出した。それを見ると神癒奈はおおっと感嘆する。
「定期的に世界を見ては、こんな風に世界に少しずつ変化を与えて行くんだ、後少し教えるから、その後はわからない時はフィアネリスに聞くといい、彼女の全知なら、世界の管理も楽になるはずだ」
「分かりました」
話を聞いて、神癒奈とフィアネリスは、ジュリアスと共に、世界の作り方について学んでいくのだった。




