幻の市街戦?
作戦地帯に入った永戸達、中は入り組んだ構造になっており、裏路地を含めれば複雑になっていた。
「敵がどこからくるか分からないから厄介だな…」
「そうですね。一体どこからくるか…」
二人が身構えていると、早速なり損ないが現れた。形状は機械型でサイズは2〜3メートルの中型、わかりやすく核が露出している。
「先制して叩くぞ!」
永戸がイクセリオスと白魔を持つと突貫する。なり損ないは咆哮をして二人にとびかかるも、神癒奈が刀を構え、一閃すると前足が切れ、地面に落ちた。
「これで!」
永戸が白魔を核に突き刺すと、容易く核が砕け、なり損ないは倒れる。しかし霧散せず、なり損ないはデータの塊のように消えた。
「っ? なんか変だぞ、今回の敵」
「きっとそういうなり損ないなんですよ! 次、来ますよ!」
次は群体型のなり損ないが出て来た。群れた蜂のように集まってできたそれは、永戸達の方に飛んでくると、鋭い羽で切り裂こうとする。永戸達はそれを避けると、神癒奈と永戸で言った。
『大花火!』
焔が爆裂し、なり損ないが消し飛び、本体が露出する。訓練を重ねたのか、神癒奈の使う術を永戸もある程度は会得していた。
そして永戸はガンブレードから白銀弾を撃ち込むと、なり損ないは再びデータの塊のように消えた。
「今回の敵、なんだか違う感じがする、気を抜くな!」
「でも、雑魚が多いですね!」
わらわらと雑魚敵のなり損ないが現れる中、神癒奈と永戸は背中合わせに立つ。
倒せないほどの敵ではないが、数が多い。
そして二人は、敵を見やると、互いに駆け出すのだった。
ーーー
一方、こちらは本部の四課、そこでは、四課のメンバーが永戸達の戦いを見ていた。
「あちゃー、やっぱり二人本気になってますねぇ」
フィアネリスが伝え損ねた事を少し楽しそうにしながらそう言う。それを見ていたクレス達は戦々恐々としていた。
「うっそだろオイ…隊長さん達ありゃマジだぜ…」
「あわわ…隊長殿達本気でやっております! 放置して良いのですか⁉︎」
「いいと思いますよ? 永戸隊長すごく頑張ってますし」
クレスとフローレアがハラハラしながら見て、煉禍が当たり前のように見つめる。永戸達は今、四課として訓練に全力を尽くしていた。
「まぁ、実践形式の練習だ、これくらい本気でやらないと締まりが悪いだろうね」
「だがやりすぎだ……」
ユリウスも当たり前のように接するが、ランジーは見ていて絶句していた。訓練なのにここまで本気でやるのかと。だがこれにはユリウスも困ったようにフィアネリスに言った。
「しかし、フィアネリス君、君も悪い天使だね、二人にわざと伝え損ねるだなんて」
「はて? なんのことでしょう? 私は誠実に伝えようとしましたよ」
「焦って行く二人が悪いのです」と言わんばかりにフィアネリスはふふふと笑う。時折、主人をからかうあたり、この天使もなかなか腹黒だとユリウスは思った。
「まぁ、あの二人のことだ、なんとでもするだろう」
ユリウスは二人の光景を眺めてはそう言う。そうして四課のメンバー達は永戸達を見守るのだった。
ーーー
「凄いぞ! 初めて現場で見たが、二人の戦闘能力は想定以上のものだ! このデータがあれば新兵装の開発が捗る!」
永戸達の戦闘を関係者の席からフェレッタが観察する。戦闘データを見るに、彼女の想像を上回っていたらしく、彼女は目をキラキラさせながら銭湯の様子を眺めていた。
戦闘が開始してから数十分経つが、二人は他の部隊と違って補給もなしに交戦を続けていた。
「こいつら! 次から次へと出てきますよ!」
「あぁ! いつもよりしぶとい連中だ!」
永戸がなり損ないを切り裂くと、なり損ないは倒れる。だが、次の瞬間、大型の敵がビルの影から現れた、その敵は、二課が戦っていたもので、シグナイト達がトマホークショットガンを撃つと、なり損ないは怯んだ。
「ダリー! 左からやつの背中の核を狙い撃つんや! ラグリスはウチの援護! ウチは囮になる!」
そう言ってはシグナイトは人狼特有の爪を出すと、なり損ないの体を切り裂く、ダリーとラグリスは言われた通りに動くも、ここで赤黒い稲妻が走り、なり損ないの首をはねた。
「なっ⁉︎ アンタは、みゆなっちの恋人の…!」
「その言われようは恥ずかしいから勘弁してくれ、な?」
首が落とされてなり損ないは一時的に動きを止める。しかし直後に再生しようとするも、遅れてやってきた神癒奈が焔を迸らせながら駆け抜け、核を戦術刀で貫いた。これにより、大型のなり損ないは霧散する。
「大丈夫ですか?」
「ウチは大丈夫やけど…みゆにゃん、いくらなんでも本気出しすぎちゃう? これは…」
「分かってますよ! 大規模合同作戦ですよね! 私達が影で動いてるのを隠しながらも、敵を討伐しないと!」
「違う! 全然分かっておらへん! これは合同訓練で…!」
「次の敵が出たぞ! 仕留めにかかる!」
今度はさらに大きな敵が出て、シグナイトのツッコミとか聞かされるほどの声を上げる。その声にシグナイトたちは怯むが、永戸たちは悠々と立つ。
「ちょっと大きすぎるか? なら…こうするまでだ、絶望よ、世界に仇なせ」
永戸が手を握りしめると、大きな狐の黒い使い魔がガブリとなり損ないにくらいついた。
「ただの訓練に絶望つこうとる…」
「えっ何⁉︎ 聞こえない!」
悲鳴をあげるなり損ないに、くらいついては離さない絶望の使い魔、永戸がもう一度手を握りしめると、使い魔はなり損ないを噛み砕き、核を露出させる。
しかし、何か不満げなのか、使い魔は「ヴゥゥ…」とうなった。
「どうした? 腹でも壊したのか?」
「そりゃそうやろ、こいつらは訓練用のダミーで味もへったくれもないからな」
「えっ今なんて?」
ようやく話を聞こうとしたのか、永戸はシグナイトの声に耳を傾ける。ところが、まだなり損ないが生きていて、お返しにと言わんばかりに永戸に食らいつこうとする。
「永戸さん!!」
「まずっ!」
なり損ないが永戸をがじりと噛みつき、飲み込もうとする、慌てて神癒奈が刀を振るい、なり損ないは真っ二つに両断すると、噛まれた怪我一つもない永戸を残し、霧散した。
「永戸さん! 無事……あれ?」
「…あれ、痛くない? 5体満足だ」
「アンタら…ほんとにマジで何も聞いてへんかったん?」
「何のことだよ?」
永戸がシグナイトに質問をする。するとシグナイトはこう答えたのだった。
「これはただの合同訓練で、アンタらが命を張る必要性は万に一つもないっちゅーことや」
「は?」
「はい?」
シグナイトから告げられた真実に、永戸たち二人はその場で凍りついたのだった。




