突然の警報
朝を迎え、互いに一つのベッドから起きてはうんと背伸びをする永戸と神癒奈。今日もがんばるぞと互いに着替えるとキッチンに降りて来て神癒奈が朝食を作る。
「今日はシンプルに目玉焼きですよー、味付けはお任せで」
目玉焼きに味噌汁とご飯が出され、永戸は食事をする。君の味噌汁が飲みたいとかそんな恋愛の殺し文句があった気がするが、この二人の間ではもはやそんな言葉はいらず、通じ合っていた。
「おはよう…おにぃちゃん…」
「おはよう渚」
渚があくびをしながら降りて来て、冷蔵庫の中から特製エナドリを出すと飲み出す。今日も夜鍋してゲームでもしていたのか、目にクマができていた。
「また夜更かししたのですか? よくありませんよ?」
「だってぇ、ゲームのやめどころが分からなくて」
ハマってるゲームでもあるのか、目を擦りながらヘッドフォンを首にかけると、飲んだエナドリをゴミ出しに行っては戻ってくる。
「貴方だって仕事してるんですから、健康管理はしっかりしないと」
「うえぇ…神癒奈ママのお説教だ」
誰がママですかと神癒奈はぷんすこ怒りつつ渚の分の料理も出す。渚は眠たそうに席に着くと、食事を始めた。そうして続いてやって来たのはフィアネリスだった。
「おはようございます♪」
「おはようございますフィアネリスさん、朝食もうすぐできあがりますので待っててくださいね」
「かしこまりました」
フィアネリスの分の朝食をサッと作ると、彼女にも目玉焼きを出した。フィアネリスが洗面所で髪を纏めて戻ってくると、彼女も朝食を食べ出す。
「ふわぁ…おはよう、皆の者」
「おはようございます。ご先祖様」
「神癒奈よ、たびたび思うがそろそろご先祖様と呼ぶのはやめぬか? そんなよそよそしい言葉で語らずとも、玉藻前様でよいのじゃぞ」
「じゃあ玉藻様」
「端折るな! ったく、この家の者はなぜ歳上への礼儀がなっとらんのじゃ」
そうして玉藻前も食卓につく、テレビではいつものように都市に起きたあれやこれやが報道されていて、騒がしい都市の感じを出していた。
「今日のニュースは何がありましたっけ」
神癒奈も食卓についてもぐもぐと食べながら聞く。永戸はEフォンで都市の様子の新聞を見ながら答えた。
「6番街のマーケットで期間限定セール、7番街の映画館で怪獣映画の放映だってさ」
「それなら、せっかくですし、仕事終わったら買い物に行きませんか? 私冬物の服が欲しいです」
「わかった、仕事が終わったらな」
「そう言えばお二人様、本日のご予定ですが、本日は…」
フィアネリスが何か言い終わる前に、Eフォンに警報が鳴る。そこには、こう書かれていた。
「なり損ないの出現反応⁉︎ 急がなくちゃいけませんね!」
「悪い、先いってくる、フィーネと玉藻は後からで構わない」
「ああお二方! 本日のその警報は!」
フィアネリスが二人を止めようとするが、そんなことを言ってるととっくに永戸と神癒奈は外へでていってしまった。
「行っちゃったね?」
「あのバカ、また妾の名前を端折りおって、本当に礼儀がなっとらん、それより、良かったのか? 今日の警報、これただの"訓練"の警報じゃろ、あの二人、知らないまま出て行ったぞ」
渚がなんなんだろうと見る中、玉藻前は心配する。
「まぁ……なんとかなるでしょう? 参加するメンバーは私たちの課からはあの二人だけのようですし」
「それで本当に良いのか? 嫌な予感がして来たぞ」
にっこり笑うフィアネリスにやれやれと返す玉藻前、渚は頭に?マークを浮かべていたが、フィアネリスはあの二人ならまぁ問題はないだろうと思っていた。というか、気にしてないのだった。
ーーー
作戦地帯に辿り着く永戸達、そこには一課から三課まで勢揃いできていた。
「なんだなんだ? 今日はそんなに大規模な作戦なのか? なのに四課は俺たち二人だけかよ」
「動ける人員がこれだけなのは寂しいですね」
そう言いながらなり損ないの位置を確認する二人、すると、明るい声が聞こえて来た。
「あっ、おーい、神癒奈っちー!」
明るい表情で迎えて来た銀髪褐色の人狼の女性はシグナイト・レートナック、神癒奈のイストリアでの友達であり、課を越えた仲間でもある。
「いやー、神癒奈っちも参加するんやねぇ、今回は」
「今回は?」
「あれ? 聞かされてなかったんか? 今回はな?」
そう言ってると「二課整列!」と聞こえて来て、シグナイトが「アカン」と言っては振り返る。
「まぁ今回は気軽に行こうや! ほな、後でなー!」
「気軽にってそんなもんなんですかね?」
「さぁな、でもこれだけ大規模で動くんだ、作戦はかなりのものなんだろう」
周りではブリーフィングや作戦準備がされていて、永戸達が入る幕などなかった。
「課長からも連絡はこないし、俺たちはどうしたらいいんだ? 現場の判断か?」
「さぁ…ひとまず、やれるだけのことはやってみましょうよ」
神癒奈がそう言ってはグッと拳を握りしめる。そうしていると、二人に声をかけるものがいた。
「やぁやぁ、四課のお二方、本日は期待してるよ」
見た目は科学者っぽい白衣の衣装の者で、その者は手元のEパッドで情報を整理すると言ったのだった。
「誰です?」
「俺の装備の開発者だよ、名前はフェレッタ・クーゲル、イストリアの兵器開発部の一員で、四課の武装を担当している」
「よろしく頼むよ、神癒奈ちゃん」
「私の名前を知ってるんですか?」
「知ってるも何も世界を救った大英雄だからね、君達の噂は開発部にも流れて来てるよ」
砂糖たっぷりのコーヒーを飲みながら、フェレッタは神癒奈と握手する。
「それで、兵器開発部がなんでこんなところに?」
「今回の一件で君達の武装にアップデートが必要か検討させてもらおうと思ってね、と言うのは建前で君達がどれだけすごい戦果を出すのか見に来たのさ」
「それは構いませんけど、変なこと考えてませんか?」
「考えてない考えてない、現場で動く君達の体を隅々まで調べて新兵器を作り出そうなどとは考えてないぞ」
「マッドサイエンティストめ…」と永戸は言うが、そんなことも気にも留めずにフェレッタは永戸達に手を振ると言った。
「それではお二人さん、今回はしっかり頑張ってくれたまえ」
そう言ってるとフェレッタは去っていき、同時にEフォンに連絡が入る、この場にいる者たちに作戦開始の命令だと。
「作戦開始! 突入!」
一課と二課がまず先攻して市街地区画に突入して行った。三課は戦わず市民の避難誘導に徹するようで、残る永戸達はフリーの状態になる。
「俺たちも動き出すか、死神部隊の実力、見せていくぞ」
「はい!」
そうして永戸達も市街地区画に入っていくのだった。




