騒がしい現場仕事
「やれやれ、隊長達のサポートだと聞いて来てみれば、裏路地の掃除ですか」
「掃除も掃除、大掃除ですよね、これ」
トラックの陰からバリバリ撃たれながら、クレスと煉禍がそうぼやく。現在絶賛裏路地の反社会勢力から銃弾の雨を浴びせられていた。
「隊長ー! どうするんですかこれー!」
「とりま私の一言で相手方を黙らせるでありますかー!」
「いつでも指示を」
メルトが騒ぎ、フローレアがはしゃぎ、南雲が冷静に指示を待つ中、永戸は考える。考えてる間にも遮蔽物には銃弾が飛んできていた。
「ザッケンナコラー!」
「イストリアがナンボなもんじゃい! 俺らの団結力を見せつけてびびらしたる!」
反社会勢力が永戸達に向けて銃火器を乱射する。そんな中で、永戸らは動けずにいた。
「なんか言ってますよー!」
「ほっときましょう! どうせすぐに逮捕されるのですから!」
「この状況でどうやって動けって言うんですか!」
神癒奈とフィアネリスも叫ぶが、永戸は参ったなと思う。零も発動できないほどの弾幕の中だ、この中に突っ込むのはまずい、そう永戸は考えるが、何か策はないか考える。
「フローレア! 仮想の能力は使えるか!」
「使えますが! 視界に捉える必要がありまする! 今顔を上げたら一瞬で私の頭は穴だらけになりますなぁ!」
「だめかー…煉禍、お前の能力は」
「"第一段階"しか使っちゃダメなんでしょう? 相手の使う弾の中に白銀弾が混ざってましたし危ないですね」
「これもだめかー」
あれやこれやとメンバーの力が使えないかと考えるどれもダメで困り、永戸が次の策を考える。
「フィーネに転移させてもらって後ろから奇襲とかはどうだ?」
「あ、それはアリですね、賛成します」
「フィーネはどうだ? やれそうか?」
「私に任せていただければ余裕で飛ばして差し上げますよ」
答えは決まった。永戸と神癒奈は二人集まるとフィアネリスにサムズアップをおくる。そして彼女に転移してもらうと、反社会勢力の撃ってくる方向の反対に転移した。
「あいつら、攻撃して返してこないぜ! びびってやがるんじゃねぇのか? ん? なんだよ」
ぽんぽんと肩を叩かれたので男が振り返ると神癒奈が頬をぷにっと押した。男が仰天して叫ぶ。
「いつの間に後ろnげぼっふぁ⁉︎」
神癒奈に殴られた衝撃で宙を舞う男。突然後ろから男が殴り飛ばされ、それを見た男達は反対方向に向くと、永戸と神癒奈の二人がいた。
「は、はろー…な、ないすとぅーみーちゅー?」
「お前に英語は似合わないな」
冗談まじりにそう言った途端「ふざけやがって!」と男達は反対方向、永戸と神癒奈のいる方にも射撃を開始した。だが撃ってくる数は半減した為余裕で回避が可能になった。回避に失敗しても、練習で習得した魔力バリアや零のブレや陽炎で防御や回避ができる。永戸と神癒奈は余裕で戦えた。反社会勢力の男達をちぎっては投げちぎっては投げを繰り返すと、あっという間に制圧が完了した。
「はい、逮捕、後で事後処理班に建物内の危険物や資金などを洗いざらい回収してもらって、今回の任務はおしまい」
「ひやひやさせるぜったく…」
もう撃たれないと分かってクレス達が出てくるが、永戸達はイェーイと二人でハイタッチをしていた。作戦が上手くいき、二人はいい調子で笑う。
「にしても、本当に息が合うよな、隊長さんと神癒奈ちゃんは」
「べすとこんびですので!」
「長く付き合ってると癖ってのが分かってくるもんだよ」
えへへーと喜ぶ神癒奈と、まぁなと首を縦に振る永戸、二人の様子を見て、それをクレスはやれやれとしながら見る。任務も終了したしと永戸は指示を出した。
「さ、帰るぞ、さっさと報告しよう」
銃弾でべこべこに凹んだ装甲のトライクに神癒奈を後ろに乗せて永戸は走らせる。クレス達の乗ったトラックも飛んでくるフィアネリスも追従して追いかけてくる中、夕陽が照らす都市の一番街の帰り道を走り抜けていく。
「このトライク、燃料タンクとかに穴開いてませんよね?」
「安心しろ、このトライクはそんじゃそこらの兵器じゃ抜けないレベルで頑丈に作られてる。壊れることはないさ」
「でもバイクとかって燃料タンクが直にくっついてるからこう言うトライクも銃撃戦になったら危ないんじゃ?」
よくフィクションでもあるのだが、燃料タンクが外にポン付けされたバイクは確かに危ない。一応このトライクは装甲が取り付けられているため、頑丈にできているが、万が一致命的なところを強力な弾で撃たれていたら爆発して大騒ぎになるところだった。
「俺のクラウドレイザーの頑丈さを疑うのか? テストだと、ブレイズエッジの強装弾にすら耐えた代物だぞ、心配せずともそこらの反社会性力のサブマシンガン程度で壊れる代物じゃない」
「こんなボロボロにしといてよく俺のーとか言えますね、帰ったら整備班から怒られますよ?」
あーあー聞こえなーいと永戸は言っては帰る。そんな賑やかな帰り道をして、イストリアに帰った後、激怒する整備兵の話を素通りして聞き流しながら四課のオフィスへと帰り、永戸達は一息つく。
「お疲れ様! 今お茶入れるからね!」
コリーがお茶を入れに行ってる中、事件の報告書を書き、ユリウスに提出する。
「うむ、よく頑張ってくれたね。本日もご苦労様、就業時間を終えたらゆっくり休むといい」
そうして永戸達は一通りの仕事をこなすと、できたお茶やコーヒーを一飲みし一服する。時刻は夕刻、もうすぐ退勤時間だ。永戸達はコーヒーを飲み、夕暮れの日差しが差し込むオフィス内でまったりとする。
そして退勤時間が来ると、永戸と神癒奈は帰る準備をし、二人で一緒に帰って行った。
「そう言えば、明日実は…」
伝え忘れていたのか、永戸と神癒奈がいない中で、ユリウスからある事が通達がされる。それを聞いたクレス達はへぇ、となった。
「イストリアってそんなこともするんだ」
「近々行う予定だから、参加できる者は参加するといい、まぁ先に帰ったあの二人は伝えずとも問題はないだろう」
あの二人なら普通に参加するだろうとユリウスは思うが、ここでフィアネリスに待ったをかけられる。皆が困惑する中で、フィアネリスは言った
「本当にそうでしょうか?」
フィアネリスが不思議な顔をしてそう言う、ユリウスがどう言うことだと思うが、フィアネリスがこの先の展開を予想すると少し笑って言った。
「存外、面白いことになったりするかもしれませんよ」
「…何か嫌な事でも考えてないかね?」
「いいえ、別に♪」
それは全知のフィアネリスだけが知ることで、これから先何が起こるか、何も知らずに、予想だけしかできないクレス達は、少し震えたのだった。




