再戦
神癒奈との特訓を数日続け、永戸は魔力の使い方をメキメキと学んで行った。最初こそ火を出したりするので精一杯だったが、今では…。
「狐火!」
狐型の焔を出してはターゲットを燃やす。それを神癒奈が拍手すると言った。
「ようやく様になりましたね」
「でもこれでもお前と違ってまだ一体だけだ、まだスタート地点に立ったようなもんだろ」
「数日の特訓の成果としては上出来ですよ、基本的な魔力ブーストも、バリアも、しっかりと習得してますし」
そう言われ、永戸は照れくさそうにしながら、そう言えばと剣を見る。聖剣イクセリオスも修復が完了し、キラキラと剣が輝いていた。
「これでいつでも戦いに赴ける、今度こそ勝つぞ」
「えぇ、私たちならやれますよ」
そう言って意気込んでいると永戸達に報告が来る。
「マスター! 神癒奈さん! ノルドが動き始めました!」
「何?」
「動き始めた? どう言うことですか?」
反ノルド派の訓練場を抜けては街の広場へと行く。するとそこでは、街の勇者達とノルドが争い合っていた。
「レベル1の勇者の癖して、調子に乗りやがって! 今日こそお前をとっちめてやる! 厄介者なんだよ、お前は!」
「バカみたいだ、リノ、ハルナ、こんな奴らはほっとこう」
そう言って三人は去ろうとするがここで、聞き慣れた声が聞こえてきた。
「その話、少し待たれよ! 此処に正義の番人が現れた故な!」
そう聞いてノルドが振り返ると、そこでは雄々しく立つフローレアとモジモジして後ろから覗くメルトと煉禍の二人がいた。
「本当に大丈夫なんですか⁉︎」
「私に任せよ! ノルドよ、このエルフの勇者フローレア・ランディスノートが貴様と戦いを申し込む!」
『はぁ⁉︎』
思わずその場の全員が口にした。そして同時に永戸はこう口にした。
「あのバカッ…!」
永戸もこれには焦る。あの時は永戸だから死なずに済んだ物のフローレアなら普通に殺されることもあり得る。ノルドはそれほど高脅威対象なのだ。
「ちょっと、フローレア…! 隊長の話を聞かなかったの…⁉︎」
「聞いた! しかし隊長でも倒せぬのならもはや私が出向くしかあるまい! さぁノルド! 私と戦うのだ! 怖くて応じることができないのか?」
フローレアが煽ると、ノルドは言った。
「お前、あの時の…隊長? あぁ、この前倒した異世界特別なんとかとかいうのの仲間か、そうか、で、お前一人で何ができる」
「貴様を倒せる!!」
隊長である永戸の真似のような口ぶりをすると、フローレアが槍を持って突貫した。そして突き刺そうとするが、なんとその槍を、ノルドは指二本で止める。
「なっ⁉︎ 我が槍を指二本で⁉︎」
「…お前らとか遊びに付き合ってられるか、一撃で仕留めさせてもらう!」
「フローレアさん!」
「フローレア!」
煉禍とメルトが叫ぶ中、フローレアにノルドの掌底が飛ぶ。その瞬間だった。
「止まれぇええええ!」
永戸が零を使ってフローレアのところに割り込むと魔力でバリアを展開する。言葉と、イメージ、二つが重なり合うと、魔力のバリアが展開され、ノルドの一撃を防いだ。
「隊長殿⁉︎」
「防いだな、防いだよな⁉︎ 何考えてんだこのバカ! 先に突っ込んで行きやがって! この前しでかしたやらかしもう忘れたのか!」
「しかし、フローは隊長の代わりに戦おうと」
「そういう義勇はもっと目利きになって強くなってから持つんだな! こいつは神癒奈とフィーネの三人でやる! お前らは取り巻きを頼むぞ!」
「分かり…申した!」
というわけでフローレア達を取り巻きの方に行かせると永戸と神癒奈とフィアネリスが前に出る。
「三人でないと戦えないのか? 存外、卑怯な真似をするんだな」
「そっちこそ、力を与えられただけで偉そうにして、他の連中は迷惑してるんだってさ、素直に返したらどうだ?」
「力がなければ何も変えられない! この街で暮らす俺たちの平和な暮らしもだ!」
「だったら能力返して一からスタートしろよ! 端折りすぎなんだよ!」
永戸は零を使用して斬撃を終えようとする。しかし、神がかり的な反応速度か、コンマ零秒で済むはずの攻撃が防がれた。
「いうほど大したことないな、お前の本気は、その程度か?」
「いや、違うな!」
すると地面にクレーターができる。永戸の魔力ブーストがノルドにしっかり伝わった証拠だ。だが強靭な肉体なのか、体はその一撃に耐えた。
「少しはマシな戦い方を学んだつもりか? そんな物で俺を超えられると?」
「俺一人じゃ超えられないさ、けど!」
「私達となら!」
背後から神癒奈が斬撃を行う。だがノルドはその攻撃を足で蹴り飛ばして弾くと衝撃波を放って神癒奈を吹き飛ばした。
「この程度か? 仲間の力を頼っても、この程度しかできないんだな」
「いいえ、私もいますよ」
フィアネリスが波動砲のチャージを終えた状態で転移してくる。ノルドは流石にこれはまずいと思ったのか後方に下がった。
「三人なら確かに脅威だ、少し俺も本気を出すか」
ノルドがそういうと一気に加速して神癒奈の方へ向かった。
「まずは一番狩りやすそうな奴から!」
そうしてノルドは神癒奈に拳を打ちつけるが、彼女の体をすり抜けた。
「『陽炎』まんまと化かされてくれましたね」
「何?」
ノルドは神癒奈に化かされた事に気づくも遅く、フィアネリスの装備、カロン型フォースシールドによるアンカーショットで腕を掴まれた。
「離せ!」
「絶対に離すものですか! マスター!」
「捉えた…! 見様見真似の焔月式抜刀術、壱式!」
永戸が白魔から焔の点火と共に神速の斬撃を放つと、ノルドの片腕が宙を舞った。彼の腕が見事に切れたのだ。
「ぐぁあああああ! お前! よくも!」
「流石に再生能力まではないか、それまであったら余計厄介だったんだけどな、だがこれで、お前は…!」
ノルドは力を発揮しようとするも、上手く力が出なくなる、白銀の効果と零の効果が効いた証だ。
「これが…これがお前達のやり方か!異世界特別なんとか!」
「あぁ、俺達は、どんな手段を使ってでも勝つ化け物退治の専門家だからな!」
そう言って永戸はノルドに近づくと言った。
「光を放て! イクセリオス!」
上から聖剣を袈裟懸けで斬り下ろすとノルドは叩き斬られ、そのまま血を流して倒れた。今度こそ、勝ったのだ。
「ノルド様!」
取り巻きの二人がノルドに近寄ろうとするが、煉禍とフローレアに組み伏せられる。
「やめて、ノルド様から、能力を取らないで!」
「それがなければ、私たちは、また街の人から貶されて生活される事になる!」
リノとハルナという女性はそう言うが、だが、情に絆されてはいけない、彼にこの力は過ぎたるものだから。
「神癒奈、あとは頼む」
「はい」
そうして神癒奈は能力の回収を行う。彼の身体から強力なエネルギーが抜けると同時に、彼のバイタルもどんどん悪くなるが、そこは神様らしく切った腕を繋ぎ治し、体も治癒させて彼を楽にさせた。
「…これで分かっただろう、もう、彼の能力に頼った力任せな暮らしはやめるんだ」
「嫌…嫌ぁ!」
二人の女性がノルドに近づいて安否を確認する中、永戸達は去る。その時、永戸はこう言った。
「これじゃあ、どっちが悪人か、わかんねぇじゃねぇかよ…」
その言葉は、一つの物語を強引に終わらせた彼らにとって強く当てはまってしまうのだった。




