神癒奈の魔力レッスン
街の外で、魔物達が徘徊しているのを様子見しながら永戸と神癒奈は立つ。
「それで、どんなレッスンをするんだ?」
「一つ目が魔力でバリアを形成し、肉体を守ったり、格闘能力を増させる事。二つ目は魔力を放射するブーストの効果の強化、そして、最後には貴方に焔を扱ってもらいます」
「一つ目と二つ目は分かったが、三つ目、なんで焔? 俺は神癒奈みたいには戦えないぞ」
永戸は神癒奈の戦い方を思い出すと、彼女のようにはなれないと言う、しかし神癒奈はそれを否定した。
「私もそうおもってました、けど、貴方の肉体を再構築した時に、偶然、貴方に私の性質が混ざっていた事に気づいたんです」
「どういうことだ?」
永戸は神癒奈の言う事に疑問に思う。すると神癒奈は仮説ながら訳を話した。
「多分ですけど、私達、これまで魔力パスで繋がってきたじゃないですか、永戸さんはこれまで無属性だったけど、私との繋がりを得た事で、焔の属性が加わったんだと思います。それに…永戸さん、絶望の力を使ってみてください」
「っ? あぁ」
永戸は絶望の力を使い、狐の使い魔を出す。アズウルの時は恐ろしい魔物の姿だったが、永戸の場合は恐怖心は抱かせながらもどこか美しい姿の使い魔が出た。
「これも多分ですけど、永戸さんは知らないうちに、狐の性質も加わってます。永戸さん自身、使い魔を呼ぶ時のイメージがこれになってるとすると、私の性質を一部受け継いでると思うんです」
永戸はそう言われると納得した。たしかに、神癒奈との繋がりがあってか、絶望の能力の一部が変質していた。
「成る程な、けど、膨大な魔力を保有できるお前と違って俺は人間だ、お前みたいな大技には期待できないぞ」
「そこで、貴方なりの使い方を学ぶんですよ」
神癒奈は自身の創造の力でサンドバッグを用意すると永戸にモックアップの剣を持たせる。
「まずはブースト能力の強化からいきましょう。今、永戸さんはなんとなーくで魔力ブーストを使ってますよね?」
「まぁ最初に閃いた術みたいなもんだからかな」
永戸は素振りで魔力ブーストを披露する。それを神癒奈は付け加えて言った。
「まずはそれを鋭く、相手に確実にダメージを与えられるようにしましょう、ノルドの攻撃のように。基本はイメージです。イメージすることで魔力を練り上げるんです」
「わかった」
永戸はモックアップの剣を構えると魔力ブーストを行い、剣をサンドバッグにぶつけた。まるでどこかの大乱闘ゲームのミニゲームのようにサンドバッグは飛んでいくが、神癒奈は首を横に振る。
「ダメですね、今の永戸さんは力任せに剣を振るってます、必要なのは力強さだけでなく、鋭さも大事です。
神癒奈が代わってモックアップの剣を持つと、魔力ブーストを行い、再び建てられたサンドバッグを斬りつけた。すると、サンドバッグは威力に耐えきれず破裂する。
「魔力ブーストをより繊細に、最低限の出力で尚且つ鋭く叩き込み、斬撃と同時にバーストさせ、一点から全身に伝わるように衝撃を与えるんです、切れない相手でも、これならダメージは通ります」
「やってみる」
永戸は言われた通り、魔力の流れを変え、ブーストを行って斬りつけた。ぶつける際にバーストもさせてもみる。すると、一点だけだがサンドバッグが裂け、今度は吹き飛ばずに壊せた。
「うーん、まぁ及第点ですね、数日は続けますが、この訓練は本部に戻ってからでも本格的にしましょう」
「これでも及第点か、キツイな」
「これでも、採点は甘々な方です、今のが、剣での戦い方で使うダメージの与え方ですね、私は刀なので、衝撃だけではなく斬撃も強化してますが、永戸さんは剣なので今はこれだけでも十分でしょう」
神癒奈はサンドバッグを消すと、次のトレーニングへと移る。
「次は魔力でバリアを作りますよ」
すると神癒奈は焔の槍を次々と形成し宙に浮かべては永戸に向けた。永戸はまさか…と思い、神癒奈に聞く。
「まさか、それを俺に刺す気じゃないだろうな?」
「当たり前じゃないですか、どうせ貴方は零で回避できるんですから、最初から全力で行きますよ、バリアの形成はイメージしてください、自身の前に魔力の膜を張ることを」
「イメージ…」
永戸はバリアをイメージしては魔力の膜を張る。魔力バリアなど想像したことがないが、ひとまず形にはなった。そして、神癒奈が焔の槍を打ち出したが、魔力の膜は簡単に破れ、零を使った永戸の体をすり抜けた。
「ダメです、もっと強くイメージをするんです。攻撃を防ぐんだと」
神癒奈はもう一度魔力を張った永戸の魔力バリアをデコピンで破壊する。あっけなく破壊されたのをみて、永戸は困った。
「そう言われてもそう簡単にできるかよ!」
「ならまた死んで私の体をまた借りますか?」
「それだけは嫌だ!」
永戸は次は成功させようと再びイメージをする。魔力を強く流し、バリアを形成した。今度はより強く魔力が流れているため、バリアの膜もより濃く出てきた。神癒奈が手を振ると、再び焔の槍が飛んでくる、すると永戸はその攻撃を数本だけ受け止めた。
「まだまだですね、これもまた特訓が必要です」
「じゃあ最後に、私の術を教えますよ」
神癒奈はさまざまな焔の術を永戸に見せる。
「基本の焔をばら撒く劫火、焔の槍を放つ業火、追尾する焔を放つ狐火、焔の弾幕を張る火針、大爆発を起こす大花火、焔のレーザーを撃つ炎光、広範囲を焼き払う炎波、これら全てを永戸さんには習得してもらいます」
「結構たくさんあるよな、バリエーション」
「はい、ですのでしっかりと覚えてくださいね。さっきも言った通り、基本はイメージです。まずは火をつけるところからですね」
そうして神癒奈は指パッチンをすると、軽い火花が出た。
「真似してみてください」
「……」
永戸も指パッチンしてみる。イメージしながら真似をすると、指からわずかながら火花が出た。
「その調子です、次は簡単な火を出してみましょう」
神癒奈が腕を振ると、メラメラと焔がゆらめいた。永戸も遅れて火を出そうとするが、小さな火が出ただけだった。
「ダメだ、全然うまくいかない」
「最初はそれができただけで十分ですよ、あとは練習あるのみです」
そう言って神癒奈がグッと拳を握ると、永戸も頷いた。
「じゃあ、今の三つを重点的に練習していきますか」
そうして神癒奈が練習に移ろうとするが、ここで永戸はあることを思いつき、聞いてみた。
「あのさ、一つ使える技がないか試してみたいんだけど」
「っ?」
神癒奈は永戸の使いたい技について聞いてみる。直後、荒唐無稽な技を聞き驚いた。
「何考えてるんですか、そんな技、確かに強化はされますがリミットのある時限技に過ぎやしませんよ」
「使えるものはなるべく使えるようにしたいなと思って」
「はぁ、別にいいですけど、魔力パス無しで使わないでくださいね」
「ありがとう、早速それも練習させてくれ」
と言うわけで二人は、永戸の提案を受け入れつつも三つの技術と一つの技を練習していくのだった…。




