反ノルド派
永戸達が連れられてきたのは、薄暗い建物の地下だった。そこでは、メルトやフローレア、煉禍もいた。
「ここは、一体なんだ?」
「ノルドに対して反対的な意見を持つ者たちの集まりさ」
いわゆるレジスタンスと言うべきか、種族や階級の垣根を越えて、さまざまな人たちが集まっていた。
「それで、そんな人たちが、何故俺たちを」
「あんたら、イストリアの役人さん達だろ?」
「あぁ、そうだけど」
「ノルドに対する依頼を送ったのは俺たちだ、能力の徴収をしてくれと頼んだのはな」
驚いた、神々からの依頼かと思いきや、まさか人間からの依頼だなんて、永戸は彼らの話を一度聞いてみる事にした。
「聞かせて欲しい、ノルドは何をしたんだ、何をどうしたら能力の徴収なんていう事に辿り着く」
「……あいつは、やりすぎたんだ、最初はあいつは大人しかった、だが、自分に力があるとわかると、あいつは街を我が物顔で闊歩し、文句がある奴は捻り潰し、街のルールさえ守らずに俺がルールだと言っては勝手にいろんなことをやりこんだ。そのせいで魔物の軍勢に町が目をつけられたり、不干渉を続けてきた魔王軍からも戦いを申し込まれたり、もううんざりだ!」
相当暴れ回ったらしく、そのせいで街に迷惑をかけているようだ。成る程、それなら合点がいくと永戸は考える。
「事件が起きるたびにあいつがなんとか解決してくれてたが! トラブルを持ち込まれるのはごめんだ! 街の外に追放させようとしたんだが! あいつの力だ! 誰も太刀打ちできない! ここにいる勇者達を揃えてもな!」
そう言うとその場にいた勇者達は頷いた。どうやら相当参っているようだ。
「あんたらでもダメだったのなら…俺達はどうすればいいんだ…!」
反ノルド派と言ったところか、彼らは永戸がやられたのを見て、幻滅していた。しかし永戸は言った。
「一回やられて、あいつの能力の桁違いさがどれほどか分かった。素手でも一撃が重く、半霊体みたいな俺をしっかり捉えて攻撃を当ててきた。正直、生半可な相手じゃないと思う」
「そんな…!」
「だけどそれは、あくまで俺一人で戦った時の話だ、向こうも侍らせていた女を出さなかったが、こっちだってプロだ、数人以上で協力すれば必ず倒せる」
「じゃあ、あいつをどうやって止めるんだ!」
反ノルド派は騒ぐが、永戸ははっきりと言った。
「俺には奴の能力を止める力がある。あの時、攻撃が届かず、奴に殴られただけだったが、どうにかあいつを足止めして一撃を喰らわせられれば…」
「勝機はあるって言うのかよ」
永戸はそれに対して頷く。確かにあの時零を使用したのは咄嗟の回避に対してのみだ、攻撃には使っていない。白銀刀である白魔や零の力を攻撃で使えば、奴に太刀打ちできるだろう。
あの時零が発動しなかったのは、彼の咄嗟の判断ミスだった。
殺す覚悟も持たず無力化しようと考えた彼自身のミスだ。先程のダメージが残っているのか、永戸は神癒奈に抱えられたまま寝転がる時、崩れ落ちそうになる。すぐに体にアンプルを打ち込み、肉体を回復させると、永戸は落ち着いた呼吸で言う。
「フロー…煉禍、二人は、あの取り巻き二人の相手を頼む、ノルドには至らないが、あの二人もそこそこやる、二人は彼女達の足止めをしてくれ」
「了解である!」
「分かりました!」
「メルト、お前は二人を支えてやってくれ、二人のバックアップなら戦闘が苦手なお前でもできるはずだ」
「分かりました」
そうして3人に指示を出すと、永戸は神癒奈の手を取った。まだ力が入らず、ダメージも酷い状態だが、だが彼女の温かい感触を感じられた。
「神癒奈……フィーネ、俺達はノルドと三対一で戦う、プライドは抜きでいい、確実にあいつから能力を奪うぞ」
「はいっ!」
「了解です、マスター」
二人と頷きあうと、永戸は起き上がり、折れた聖剣を見る。刃こそ砕けているが、剣自体はまだ健在だ、これでも戦うことができる……そう思っていると、ある事に気づいた、剣自体が、折れた先から少しずつ修復されていっている事に。
「これは……どう言う事だ? 剣が直っていく」
「マスター、少し拝見させても?」
「あっあぁ…」
永戸は聖剣をフィアネリスに見せる、彼女はそれをまじまじと見つめて、あらゆる角度から見ると、答えを出した
「マスター、この剣ですが、まだ壊れたわけではありません。それどころか、成長してます」
「成長だって?」
「先程の戦いで剣自体は大きく損傷しています。ですが、剣そのものがマスターと共に戦い、銘を得た事で、剣に新たな力が宿っています」
「それが、成長?」
フィアネリスはえぇ、と頷くと。永戸に剣を返した。
「この剣は、折れる度に、傷つく度に強くなる性質を持ちました、同時に、剣自体の修復機能も。例えるならばそう、筋肉、筋繊維が鍛えられて傷つく度に修復され、より強くなる、この剣は、そうした性質を得ました」
「具体的にはどう強くなるんだよ」
「まず、魔力を通す事による切れ味の増加です。こちらの切れ味が上昇しています。次に剣自体の剛性の増強、そして、剣自体の魔力回路の増設、これにより、剣に魔力をより通すことが可能になりました」
「つまり、戦えば戦うほど、剣が傷付けば傷つくほどパワーアップするってことか?」
「はい♪ そういうことです」
フィアネリスはにっこり笑ってそう答えた。ただ、だがしかしとここでフィアネリスは付け加える。
「剣自体の威力は上がっても、まだこの剣は修復中、本領を発揮できるのは、おそらく完全修復される数日後かと」
「数日後か…それまで暇だな」
「だったら、少し特訓をしていきませんか?」
神癒奈の提案に永戸が不思議に思う。すると神癒奈はこう言った。
「永戸さんの体の魔力保有量は、以前よりも増しています、ですけど永戸さんは、元々魔力を使った戦い方を知りませんよね?」
「確かに、魔力ブースト自体は体を渡された時直感でわかって使えたけど、それ以外はてんでつかったことがないな」
「もともと、ごく普通の人間の体でしたからね、魔力保有量も魔力回路もそこまで多くなかった、けれど今は肉体そのものが強化を受けて、保有量も回路の量も増加してます。勿論、私から受けられる魔力パスの最大量も、そこで、今一度、魔力の使い方についてレッスンしておきましょう」
レッスンかぁと永戸は思う。確かにこれまで彼は魔力に頼った戦い方はしてこなかった。ここで一つ、彼女から魔力を使った戦い方を学んでおくのは得策であろうと考える。
「分かった、色々と学びたいところだ、ここで一つ、お前から色々教わろうかな」
「はい! 二人で頑張りましょう!」
そうして笑顔で神癒奈は答え、永戸は魔力を使った戦い方のレッスンを受ける事になった。
「本当に、勝てるのかい?」
「勝てるようにして見せるさ、必ずな」
永戸は傷が治った体を立たせると…早速レッスンへと向かったのだった。




