通じない道理
「ふむ…俺を抹殺する、そいつは確かにそう言ってたんだな?」
「はい、街中で聞き込みをしているところを見かけまして、追ってみたのですが、そのように会話しておりました」
「理由は何故なんだ?」
「狙いは恐らく、ノルド様の力かと」
永戸達が方針を決めた後、ノルドのところではある女性とノルドが話していた。
「ノルド様に歯向かうなんて、なんて悪い人たちなのでしょう! 皆で片付けてしまいましょう!」
「そうだね、リノの言う通りだ。ハルナ、そいつらを警戒することはできるか?」
「それが、向こうに勘付かれ、妨害魔法を敷かれました、後で部屋への侵入や聞き耳を試みましたができませんでした」
「相手は相当やりてのようだな…何か特徴は分かるか?」
「はい、相手の姿なら一部覚えてます。紅い血で濡れたようなコートをしておりました、もう一人は、九尾の狐、どちらも酒場で貴方の心を覗いた小娘と接触していました」
それを聞いたノルドは合点があったかのように納得する。あの時酒場にいたあの紅いコートの男と九尾の狐…ただの雑魚かと思って見逃していたが、ノルドは彼があの心を読んだ少女を裏で動かしていたと考える。
「…あいつらはきっと俺のところに来る、きっとな、だからきっちり出迎えてやらないと」
「はい、ノルド様」
ノルドの方も永戸達の動きに勘付き、戦う準備をするのだった。
ーーー
翌日、宿屋から出た永戸達は、早速ノルドを探す。彼の位置は既にフィアネリスが特定済みで、彼の所まで案内してくれた。
「こちらです、マスター」
ノルドの方へと向かうと共に、異様な緊張感が湧いて来る。相手は何せ強力な能力者なのだから、そうして歩いていると、反対側からノルドがやってきた。
「……お前が、俺を抹殺すると言うやつか」
「場合によってはな、だがその前に話をしにきた。戦う必要性は無いからな」
永戸はそう言うと、ノルドに話を持ちかける。
「お前が持っているチート能力、それを返還して欲しい、それだけで、話は済む」
「嫌だと言ったら? 俺は彼女達を守らなければならない」
ノルドはリノとハルナを守るように身構える。それでも永戸は構えずに言った。
「その力は、お前が血の滲むような努力をして得たものじゃないだろう、いち個人がそんな突出した能力を持って行使するのは危険なんだ、返してくれ」
「ダメだ、この力は渡せない、お前みたいな奴らなんかには特に」
「俺みたいな奴ら? 何か誤解してないか? 俺たちはただ純粋にその力が危険だから回収を命じられただけだ」
「嘘を言うな、お前も他の勇者と同じく、力が欲しくてたまらない連中なんだろ、下賤な人間が…」
永戸は呆気に取られる。まさか自分の力を本気で取られると思っているのかと思うと、頭を抱えたくなった。
「ノルド様! こいつらはきっとノルド様の凄さに嫉妬して力を欲しがるような連中なんですよ!」
「このような悪を、私は放ってはおけません」
「待て待て、話を聞くんだ、証拠ならある」
すると永戸は依頼書を出して、ゆっくり近づき、ノルドの方に向けた。ノルドはその紙を受け取ると、じっくりと読み始める。
「…異世界特別調査隊…四課? バカバカしい、こんな紙切れになんの意味があると言うんだ」
「その紙に書いてあっただろう、能力の徴収を行うと」
「徴収? 俺は何も悪いこととかしてないぞ、ただ目の前にいる敵を全て振り払っただけだ」
「それがやりすぎなんだよ、それで大勢の人に被害が出てる。もうやめて欲しいんだ」
永戸はそう言うも、ノルドは依頼書をビリビリと破り、放り捨てた。
「バカバカしい、そんな話を信じるか、お前達はやはり敵だ」
するとノルドは神速の速さで永戸に近づいた。
「っ!」
永戸も零を発動させ、攻撃を回避する。するとその余波で、街が少し吹き飛んだ。
「攻撃が、通らない? いや違うな、すり抜けるあたり、お前は別次元に身体を逃がしてる」
「くっ! みんな無事か⁉︎」
「はい!」
「えぇ、私はここに」
「大丈夫です!」
神癒奈達の無事を確認すると、永戸はノルドを殴ろうとする。が、再び神速の動きでかわされると、永戸は殴られた。強い威力で殴られ、永戸は壁へ叩きつけられる。
「やはりそうだ、攻撃時にお前は次元から出て来る必要がある、その隙を狙えば、攻撃は容易い」
「永戸さん!」
「ノルド様に逆らうからいけないんです、彼は至高のお方ですから」
「やめてください!能力をただ返すだけでいいんです! これ以上の攻撃はしないで!」
「抹殺とか言っておいて、よく言う!」
壁に叩きつけられた永戸をノルドが首を掴む。永戸は持ち上げられ、苦しむが、ここで聖剣を抜き、ノルドを切り裂こうとした。
ノルドはそれにバックステップで回避し、永戸は助かる。
「けほっけほっ! 話の通じない奴だ!」
「黙れ、俺達に危害を加えようものなら、この場で殺す」
「やれるものなら、やってみろ!」
ノルドが神速の接近をしてくる中、永戸は体内の魔力を解放して、ブーストをさせて切る。だがしかし、ノルドは聖剣に拳をぶつけると、いとも容易く聖剣を砕いた。
「なっ⁉︎ イクセリオスが…!」
「脆い剣だ、屑鉄ででもできてるんじゃ無いか?」
そうしてノルドは再び永戸を殴る。今度はクリーンヒットし、永戸は地面を転がり、倒れる。
「くっそ……」
立ちあがろうと体に力を入れるも、ダメージがひどくて力が入らない。ノルドの一撃は永戸の体を正確に捉え、確実に打ってきた。聖剣も砕け、永戸は倒れ伏せる。
「永戸さんが…負けた?」
「他愛もない、これが異世界特別調査隊とかいうのの力か、弱すぎて話にならないな」
ノルドはそう言うと立ち去ろうとする。だがそれを神癒奈が止めた。
「待て! 貴方はその力で、何をなすつもりですか!」
神癒奈はノルドにそう聞くが、ノルドは鼻で笑うと言った。
「力の無い奴に言っても、分かるわけがない。雑魚の集まりが、次手を出そうとしたら、今度こそお前達を潰してやる、さ、行くよ、リノ、ハルナ」
「はい! また一つ、悪をノルド様が倒しましたね!」
「ノルド様の戦いは本当に素晴らしいものですね」
そうしてノルドは去っていった。傷つき、倒れた永戸達を残して。
「永戸さん! しっかりしてください!」
「大丈夫…じゃないか、聖剣も折られ、全身が悲鳴をあげてる、あいつ、俺の肉体を確実に破壊してきた」
永戸は手を空に掲げ、太陽を見る。
「俺も、まだまだだな」
そんなことを言っていると、近くにいた勇者が永戸達に近づいてきた。何やら彼や側近が近くにいないか見回して確認をすると、永戸達に聞いてきた。
「なぁ、あんたら、ノルドに挑んだんだろう?」
「はい、そうですけど…」
「あいつはヤバい、手を出さないほうがいい」
「それでも、対処しなくちゃならない相手なんです」
神癒奈がそう言うと、勇者の一人は言った。
「なら、ついてきて欲しい、あいつについての話、聞きたいだろう?」
じっと勇者を見つめるが、騙すような真似はなさそうだと思うと、永戸と神癒奈は頷いて、ボロボロの体を動かしながら、彼についていくのだった。




