僕がここにいる意味
街に降りた後、イストリアの事後処理班が来て、山賊のいた場所の捜索が行われた。するとやはりか、大量の殺戮兵器となる毒ガスが見つかり、即座に回収、処分が決定された。
永戸の救急治療はすぐ行われた。他のメンバーも解毒剤は打ち込まれたが、永戸は特に酷かった。
「濃密な毒ガスの中戦うだなんて…正気の沙汰じゃないよ⁉︎」
「でも永戸さんはやったんです! 起きたらとにかく怒ってあげないと!」
ここでどうしようと思う者がいた、煉禍だった。自分は成り行きで戦いに参加したのはいいものの、彼女達とずっといて良いのだろうかと、そう思っているとクレスが声をかけてくれた。
「隊長さんのことが心配か?」
「はい、正直…」
「まぁ隊長さんのことだ、すぐ起き上がるだろう」
そう言っていると永戸の意識が目覚め、ゆっくりと起き上がった。
「頭いてぇ…まだ少しクラクラする」
「永戸さん! 良かった…ばか! ばかばかばか! なんで無理をしたんですか⁉︎」
「作戦上隊長が前線に立つのは仕方の無いことだろう」
「だからって、毒ガスの濃いところで無理に戦おうとするだなんて!」
「悪かったよ……」
永戸はポンポンと神癒奈の頭を撫でると、周りのメンバー全員を見た、どうやら真面目に全員に心配されてたようだ。
「あー……悪い、無茶をした」
「だいぢょうどのぉおおお! ぶじでよがっだでありまずぅうううう!」
「毒の効果を受けて帰ってきたと聞いた時、本当に、大丈夫かと心配…したんだから…」
「隊長さん、頼むからバカな真似はよしてくれよな、ヒヤヒヤさせやがって」
「…大馬鹿」
第二支部のメンバーからは総出で心配されたらしい。面目ないと永戸は思うが、すると煉禍がやってきた。
「永戸さん…まだ、こんな戦いを続けてるんですか?」
煉禍が不安そうに永戸に聞く。それに対して永戸はそうだと答えると、言った。
「いつもこんな戦いを続けてる。大戦が終わっても、俺たちのやることは変わらない。平和を守る為に、命をかけなきゃならないんだから」
「……それが、永戸さんの選んだ道なんですね」
煉禍は覚悟を決めるように息を吸うと、永戸に言った。
「僕を、異世界特別調査隊四課に入れてください!」
それを聞いた永戸は目を見開く、直後、彼に聞いた。
「分かっているんだろうな? 四課に入れると言う意味が、今回のような戦いをまたすると言うことだぞ」
「構いません、僕だって大戦を経験した身、覚悟はできてます」
それを聞くと、永戸はため息をつき、しょうがないなと思うと言った。
「分かったよ、ユリウス課長にこの事を報告する。あの人もきっと喜ぶだろう」
「ユリウス? ユリウス隊長もここにいるんですか⁉︎」
「今は課長だけどな。実働部隊の隊長は実質俺がやっている」
「と言うことは…永戸さんが隊長?」
「そういうことだ」
永戸が隊長である事を知ると、大戦中の敬礼だろうか、胸元に拳を置き、煉禍は一礼した。
「永戸さん、いいえ、永戸隊長、これからよろしくお願いします」
「あぁ、再びよろしくな、煉禍」
そうして新たに煉禍が四課の仲間入りを果たすこととなったのだった。
ーーー
後日、四課のオフィスにて…。
「かわいい〜! こんな子が男の子だなんて信じられない!」
「やめてください!」
目をキラキラさせるコリーを横に、煉禍が立つ。四課への選抜試験はギリギリ合格だった。戦闘技能こそあったものの、基礎教養ができておらず、筆記試験では赤点寸前だったからだ。とはいえなんとか合格ラインを超え、彼は四課の一員となった。
都市の一員にもなり、普通の暮らしも提供された…もうこれであちこちを歩き回るようなことはないだろう。
服装も旧大戦時代のボロボロの軍服から、四課用の衣装、和風の軍服へと装いを変え、彼は立つ。武器もただの大剣から、大型のパイルブレードが装填される大剣へと変わった。
「改めてよろしくお願いします、皆さん」
「うむうむ、こちらも、よろしく頼むよ、煉禍君」
その時、第二支部組は違和感を感じる。自分たちの時にしたような圧迫面接がされてないからだ。
「なぁ、なんで課長はよろしくだけ言って何も言わずに仕事に戻ったんだ?」
「煉禍は大戦帰りだ、普通の奴と面構えが違う、だから圧迫面接は無しにされたんだろう」
「なんだそりゃ、羨ましいなぁ」
「羨ましいわけあるか、大戦帰りは地獄を見てきた連中だぞ、普通の扱いはされないと思ったほうがいい」
クレスにそう説明してると、煉禍は聞いてきた。
「永戸隊長、これから僕はどうすれば?」
煉禍がそう聞いてきたので、永戸は今日のスケジュールを見て、答えた。
「…ボランティアだな、心配するな、そんな難しい任務じゃない」
ーーー
と言うわけでボランティアの地にやってきた永戸達。今日は募金ということで、街角で人々から金を少しずつ受け取っていく。
あまりにもごく普通の仕事すぎて、煉禍はあっけらかんとしていた。
「…これが、僕達のやる仕事、なんですか?」
「そうだな、これが俺たちの仕事だ」
「僕達は、人を殺してきた404の者ですよ? こんな仕事をしていていいんですか?」
「いいんだ、表向きはそういう仕事をする連中だから」
そういえば四課と初めて出会った時、炊き出しをしていたなと煉禍は思い出す。そうすると、クスリと少し笑ったのだった。
「どうした? 何かおかしいことでもあったか?」
「ううん、違う、なんとなくだけど、僕がこうして働くと、助かる人が出るのかなって思って」
「出るさ、必ず、俺たちは助けを求める人たちのために、こうやってちまちまと働いてるんだから」
その言葉を聞くと、煉禍は自分の中で何か安心できるような感じがした。
「これが、今僕がここにいる意味なのかもしれないね…」
大戦という地獄を経て、今はこうして人の為にこの場に立っている、ある意味では贖罪かもしれないが、けれどその事を考えると、煉禍は、どこか救われた気がしたのだった。




