大戦の爪痕
狼の少年、煉禍と出会い、永戸達は時間を共にする。
「永戸さんが、世界を守る部隊に…」
「そうだ、と言っても、異世界の闇を始末する、404と大して変わらない部隊だけどな」
煉禍は永戸の今を知ると、目を輝かせる。すると、フィアネリスもやってきた。
「これはこれは煉禍さん、久方ぶりですね」
「フィアネリスさん!ご無沙汰してます!」
煉禍はフィアネリスにも仲良さそうに話しかける。フィアネリスにとっても彼との出会いは久方ぶりで嬉しいのか、ニコニコしていた。
「懐かしいですね、あなたと戦えた日々が、大戦は終わりましたが、今までどこを歩んでたのですか?」
「部隊が解散してからは、各地で人助けをしてました、大戦の爪痕が残った箇所を、一つずつ…」
成る程、煉禍も一人とは言え四課のような行動をとってきたというわけか、下層メンバーゆえイストリアの話は聞かされてなかったのだろうと、そう思うと永戸は煉禍に手を差し伸べ、言った。
「よくここまで生き残ってこられたな、ホッとしてるよ」
「永戸さん…!」
煉禍が手にとって永戸と握手をする。二人仲良さそうにしてるところを見てると、神癒奈は少しムッとなった。
「それで、この狼の子、英雄の部隊のメンバーなんだろ、勧誘でもするつもりか?」
「そうしたいが…煉禍はどうしたい?」
「僕は……」
煉禍が堪えようとしたその時だった、銃声が聞こえた。音のなる方へ向くと、そこでは山賊…化学特務隊の残党が街にやってきていた。
「おら! 飯をよこせ!」
「む、無理です! 大戦の影響で、ここいらはもうしばらくは作物が育たない土地になっていて、イストリアの支援がないとやっていけません!」
「あぁん? イストリアだと? 大戦後に作られた組織がなんでここに」
防護服を着た男たちがゾロゾロと永戸達のところに集まる。すると、先頭の重装備の男は言った。
「お前が現場の指揮官か?」
「正確には違うが、まぁそう言うことにしておく」
念を入れた炊き出し中のランジーを巻き込ませては悪いと思い、永戸は自身が指揮官だと言う。
「我々に食料をよこせ、でなければこの街を破壊する」
「……少し待って欲しい、今作っているところだ、待ってくれるなら食料は渡そう」
「ほう? 随分と話の分かる指揮官じゃないか、お前、どこの所属だ?」
「イストリア、異世界特別調査隊四課だ」
「四課? くっくくく、あっははは!」
四課と聞くと防護服を着た指揮官らしき男は笑い出した。
「噂に聞くボランティア部隊か、各地を転々として大戦の傷跡を埋めるとか言う、無駄な行為を行う英雄気取りの部隊」
「私たちの行いは! 決して無駄な行為なんかじゃ!」
「…よせ」
神癒奈の怒りに永戸は止まる。すると指揮官の男は再び笑う。
「分かってるじゃないか、どちらが格上なのか……しかしそこの指揮官、お前、見覚えがあるな……俺はどこかで見たことがあるぞ」
「さぁな、人違いじゃないか?」
永戸は否定しつつ、相手を刺激させないように立ち回る。
「まぁいい、それで、食料はいつできそうだ?」
「もうすぐできる、心配なら毒味もするが?」
「いいや、いい、所詮小さなボランティア部隊だ、そんな事をしたらこの街とお前達がどうなるかくらい、分かりきってるはずだ」
永戸は後方を向いて炊き出しができたか確認する。するとランジーからサムズアップが出た。
「食料ができた、持っていけ」
「ありがたくいただこう」
そう言って防護服の男達はご飯を受け取ると、周囲の人を威圧しながらトラックにご飯を乗せた。
「けっ、しけた料理しかねぇのか、まぁいい、料理がもらえるなら万々歳だ、お前達に一つ提案をする。毎日、炊き出しで俺たちに料理をよこしな、さもなくば、この街の住民がどうなるか」
「……わかった、そうしてくれ」
「永戸さん!」
「黙って聞け!」
永戸は冷や汗をかきながらも防護服の男を見る。男は神癒奈の反抗的な態度にいらついたのか、彼女の方を向いた。
「なんだ? 俺に文句でもあるのか? いいのか? 街の住民の命は俺たちが握っているのだぞ、その気になれば、この街へ向けて俺たちの住処から曲射砲で狙い撃ちできる」
そう言うと男は神癒奈に向けて銃口を向ける、だが、即座に永戸が庇うところを見ると、彼は銃を下ろした。
「じゃあまたな、今度はいい飯を作ってくれる事を期待してるぞ、四課、ははははは!」
そうして男達は去って行った。それを見た神癒奈が怒りを示す。
「あいつら! どこまでも私たちを馬鹿にして……許せませんね!」
「そうだな、だが、街を人質に取られちゃ、何もできない」
「それで、どうするんだあいつら、聞く話じゃ化学兵器を持つ部隊なんだろ? 止める手立てはあるのかよ」
「一つだけなら」
そう言うと永戸はマップデータを四課の全員に共有した。
「山賊の根城は元は軍用の訓練場だ。高い壁に覆われていて化学兵器も漏れづらい、まずは街に向けて化学弾頭を発砲されないよう曲射砲を破壊する」
「破壊といっても…破壊したら化学弾頭から危険なものが漏れ出すんじゃ…」
メルトの言うことは最もだ、だが永戸は否定する。
「危険を承知で最初から弾頭を曲射砲の中に常に詰め込んでいると思うか? おそらくだがその線は薄い、仮に詰め込まれていたとしても親たちは防護マスクをつけて戦闘をすればいいだけだ、よってノー問題」
「破壊に使う爆薬とかは?」
「今から要請すれば速達で一時間で届く」
「何もかも準備がいいこって」
とんとん拍子に進んでいく話に煉禍は置いてかれそうになるも、永戸達の話はしっかりと聞いていく。
「雑魚の牽制はクレスと課長補佐に任せたい」
「はいはい、人使いが荒いな」
「分かった、どうすればいい?」
「トラックの荷台の機銃で適当に雑魚を相手して欲しい、単純な強さでは相手の戦力はこちらに劣る」
確実に成功させるよう、永戸は冷静に作戦の指示を出す。
「メルトとフローはここでお留守番だ、万が一街に被害が出た時に解毒剤を作れるように欲しい、フィーネも残す」
「分かりました、隊長の指示に従います」
「その使命! 承った!」
「マスターに同行できないのは残念ですが、致し方ありませんね」
3人は役目に納得すると、その場で待機状態になる。そしてと永戸は言った。
「神癒奈と南雲は破壊工作、及び正面勝手の殴り合いをしてもらう」
「その役目! 僕にもやらせていただきませんか⁉︎」
煉禍からの提案に、永戸は一瞬止まる、だが笑いかけると言った。
「一番きつい立ち回りだぞ、やれるのか?」
「これでも大戦帰りです、僕でもやって見せます!」
「……わかった、同行を許可しよう」
そうしてメンバーが揃い、準備が整う。しばらくすると爆薬も到着し、永戸達の背中に背負われた。
「隊長、敵は全て倒していいの?」
「構わない、ただ化学兵器には気をつけろよ」
「永戸さん、使う爆薬の量はどうすればいいでしょうか?」
「曲射砲のサイズ次第だな、起爆は無線方式で行う」
神癒奈と南雲に指示を出すと永戸達は車両に乗る、同時に煉禍もトラックに乗った。
「作戦開始」
『了解!』
こうして化学特務隊制圧作戦は幕を開けたのだった。




