死神は英雄の姿を見る
こうして令嬢の暴走は収まり、令嬢は僻地から王都へと暮らしが戻された。だが、街を壊した責任はあり、これから先、そのために奔走しなければならなくなるだろう。
一方、王子はと言うと…。
「待て! 私は! 無実なんだ! 何も悪いことはしていない!」
「黙れ! 我が子ながら、民から金を巻き上げ、自分のために使っていたとは許せん!」
「待ってください父上! どうかお考えを! 父上ーーー!」
と、こうして王子の悪事は明るみになり、彼こそが僻地に、いや、国外追放された。それも奴隷にされての国外追放だからタダでは済まないだろう。
仕事を終えた永戸たちは王都でレモネードを買うとそれで乾杯した。
『かんぱーい!』
疲れた体に染み渡るレモネード、ランジーは酒じゃないのが残念そうだったが、けれどどこか、満足そうにもしていた。
「課長補佐、どうしたんですか?」
「ん? あいや、こんな俺でも、誰かを助けることができるなんてなって思って」
「……何を言ってるんですか、貴方の指示で何度も部隊は救われてますよ、大型任務の時も、牢獄にぶち込まれた時だって、貴方は想いに従って、俺たちを救ってきたじゃないですか」
「それもそうだな」
ランジーははははと笑うと、けどとつけて言った。
「けど、明確に誰かを救ったのは初めてなんだ、死神と呼ばれた俺が、初めて、誰かを救うことができた」
ランジーは少しホッとすると、永戸の方を向いた。
「同時に、英雄の背中も初めて見た。英雄って、あんなに輝いてるものなんだな、使命だなんだと理由をつけてもなることができない、救世主、俺はちと、憧れてしまったよ」
「…そうか、それなら、今度一緒にボランティアに行きましょう、そしたら、英雄への第一歩が踏み出せますよ」
「そうするのも、アリかもしれねぇな、酒に酔う毎日もいいが、これも、アリだ」
ランジーは満足気に頷くと、永戸に言った。
「英雄、やっぱりお前は、その姿が似合ってるよ、ちっこくて頼りない身体より、その身体がお前らしい」
「突貫工事で神癒奈たちが治してくれましたからね、次こそは、死なないよう努めます」
「本当ですよ? 次死んだら転生の場でグーですからね!」
「分かってる」
神癒奈の言葉に永戸ははははと笑うと落ち着いた表情で腰の回収ボックスに手をかける。
「敵はとうとう魔想体を2個同時に出してきましたね」
「うん、それについては、とても脅威」
「全く、ヒヤヒヤさせられるわ」
「いずれ3個とか4個に増えてくんでしょうかねぇ」
「そうなる前に、俺たちが止める」
永戸は、リオーネや南雲、フィアネリスの言葉に頷いて答えた。フィアネリスの足だが、ナノマシンで再生は終わり、こちらも肉体の再構築が完了した。フィアネリスの体も無事で、特に問題はない。
「そういえば、新しくなった体の感触はどうですか?」
「ん? なんか前よりだいぶ軽くなった気がする。楽になったよ」
「よかった、肉体強化をかけておきましたからね、以前とはだいぶ違うと思います」
そう言うと神癒奈は永戸の腕に指を沿わせる。少しくすぐったい感じがしたが、よく見ると、彼の魔力回路が前より増えているのが見えた。
「今回は出血大サービスの能力付与ですからね、これ以上はチートの領域になるので出せませんよ」
「元からチートだろ」
そう言うと神癒奈はそうでしたねと笑う。永戸も笑うと、拳をぶつけ合った。
「これからもよろしくな、相棒」
「私に夢を見させてくださいね、英雄」
そうして、この王都での動乱は幕を閉じたのだった。




