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ヒトとキツネの異世界黙示録Ⅱ  作者: 遊戯九尾
第十章 死神は英雄の夢を見る
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放たれた聖剣Ⅱ

 ランジーを逃がし、戦闘態勢へと移る永戸。


「永戸さん、戦えるんですか?」

「あぁ、体の修復と改良はあとどれくらいで終わる?」

「あと少し…ですけどもう少し時間が必要です」

「体が治るまで持たせるぞ」


 永戸は零を発動させると一気に巨大ゴーレムへ踏み込んだ、慣れない体での使用の反動が来るが二つの剣を合体させた大剣で切り裂いた。


「零は効いてる! 奴の体はゴーレムそのものが能力体らしいな!」


 ゴーレムの体に傷がついたのを確認すると、神癒奈に目配せをし、彼女にも対なり損ない用戦術刀、白魔を抜かせる。


「たぁああっ!」


 神癒奈とゴーレムに切り掛かる。対なり損ない用兵器なだけあってか、バターを切るようにスゥッと固い岩に刃が通り、ゴーレムを削った。


「いけます! 皆さん! 対なり損ない用兵器を!」

「わかった」

『任せなさい!』


 総員が対抗するための武器を持つと、巨大ゴーレムへ向けて飛び出した。


『アンタはここで大人しくしてなさい!』


 リオーネが龍のために装備されたクローでゴーレムを切り裂きつつ、タックルをかます。ゴーレムは表面を抉られ、リオーネに押される、そこに、南雲が割り込んだ。


「貫け!」


 パイルブレードを打ち込むと、巨大ゴーレムの体にヒビが入った、だが、そのヒビは浅く、まだ芯には届かないようだ。


「攻撃が足りない!」

「任せろ!」


 永戸がゴーレムの全身を零で駆け抜けながら斬り終える。すると、ゴーレムの全身にヒビがより入り、ゴーレム自身も膝をつく。しかしゴーレムも負けずに、永戸を掴んだ。


「くっ! 離せ!」


 借り物の力だが、試さんと言わんばかりに体から熱を発し、ゴーレムの手を焼いては破壊すると、地上に降りて次の攻撃へと移る。


「この体なら完全でできるか! 焔月式抜刀術! 壱式改!『バスタードブレイズ!』」


 魔力炸薬の点火で大剣が神速で振られ、ゴーレムの片腕を綺麗に切り落とした。今度は再生などは無く、ゴーレムは切り落とされた腕の部分を抱えては下がる。


「甘いんだよ!」


 永戸が次の攻撃をと大剣を構えた時、ドクンと体が脈打ち、膝をつく。


「永戸さん! しっかり!」

「こんな所で、零の反動が来るなんて…!」


 今の永戸の体は実在する神癒奈の予備の体で補っている。本来ならばそこにあってない体だからこそ使える零だが、実在する体の状態で零を使い続ければ肉体がいずれ限界を迎える。

 永戸が膝をついてると、ゴーレムは立ち上がり、失った腕を補うべく、近くの家屋をもぎ取り、それを代わりの腕とした、住民たちは逃げていったので安心したが、だが、ゴーレムは依然として健在、反対にこっちは零の反動を受けてるとまずい状態へと陥った。


「この程度で、膝をついてる場合じゃ…ない!」


 永戸は意地でもと立ち上がるが体に力が入らない。それを思った神癒奈はある賭けに出る。


「このままじゃ……っ、永戸さん、皆さん! 数分だけ持たせてください!」


 そう言うと神癒奈は消える、きっと何か策があるのだろうと永戸は思うと、意地でしっかりと立ち、剣を構えた。


「リオーネ! 奴の動きを取り押さえろ! 南雲は残ったパイルブレードを打ち込め!

『了解!』


 言われた通り、リオーネがゴーレムの動きを抑えると、南雲はそれに飛び込み、パイルブレードをいくつか打ち込んだ。

 確実にヒビは増えていく、だが致命打が与えられない、でもそれでもと永戸は、零を使わず大剣をしまうと白魔を取り出し、切り掛かったのだった。


 ーーー


 一方、神域では、神癒奈が永戸の体の修復の最終段階を行なっていた。


「肉体強化の能力はつけるとして、肉体の魔力保有最大量も増加、それと、魔力回路を増設して聖剣をより撃てるようにしないと!」


 ボロボロの永戸の体を修復しつつ、並行して肉体強化を神癒奈は行っていた。このままだと、永戸は能力の使用に耐えきれず、自分の予備の体ごとバラバラに砕け散るだろう。それを支えられるだけの体を構築せねばと神癒奈はあちこちいじる。すると、その空間の中に、別の存在が入ってきた。


「手伝いますよ」

「フィアネリスさん⁉︎ 貴方の体はまだ…!」

「片足を失った程度で翼を失ったわけではありません、心配せずとも、ナノマシンが修復してくれます、それよりも、マスターの体の再構築に手間取っているのでしょう? 手伝いますよ」

「ありがとうございます!」


 フィアネリスからこれまでの永戸の戦闘データが全て送られる。それは、神癒奈と出会ってからのものだけではない、大戦時のソレもあった。


「これは…」

「マスターが一番無理をしていた頃の記録です、貴方は初めて見るでしょうが、これが、異世界大戦の記録ですよ」


 そこでは、降り注ぐ砲火をかわしながら、永戸が他の仲間と共に戦場を駆け巡る姿が映っていた。こんな無理までしていたのかと神癒奈は思うが、同時に、彼の事をもっと知れたような気がした。


「永戸さんは加速系の身体能力強化でしたよね?」

「はい、神癒奈さんは今、マスターの体にさらに肉体強化も加えようとしてますがね」

「瞬間的な魔力ブーストもできるよう、魔力回路を強化しましょう、これで、近接攻撃時の破壊力も増すはずです」

「なるほど、一瞬だけ肉体強化を増加させて、効率的にパワーアップを図る仕組みですか。試す価値はあります」


 神癒奈とフィアネリスは二人で並びながら永戸の体を強化していく。向こうの時間なら数分程度だが、こちらの時間ならば悠久とも言える時だ、時間はあった。


「マスターにこの体が届いた時が楽しみですね」

「はい、そうですね、だから一刻も早く、終わらせないと!」


 そうして二人は肉体強化と修復を高速で行い、彼へ届けられるよう間に合わすのだった。


 ーーー


「くっ!」


 ゴーレムのパワーによって吹き飛ばされ、永戸は壁に叩きつけられ、地面にがくりと崩れ落ちかける。神癒奈から貰った体の限界も近く、ポロポロと肉体が朽ち果てていくのが見えた。


『アンタ! 無理しないでよ! ここはアタシ達に任せて!』

「二人で苦戦してるんだ! それを見てられるか!」


 永戸はもう一度零を使うべく構える。しかし次が使えて最後だろう、零の紅い稲妻が走ると共に、肉体がボロボロと崩れ落ちていく。


「悪い…神癒奈、貰った体を大事にできなくて…!」


 そう言うと永戸は飛び出し体験を振り翳した。同時にゴーレムも拳を振りかぶる。直後、二つの攻撃がぶつかり合い、永戸は大剣となるリヴァンジェンスⅢの部分が、ゴーレムは片腕が失われた。同時に、永戸の肉体の限界が来て、ピシッとヒビが入ると、足の先からバラバラに壊れ散っていく。


「隊長!」

『ナガト!』


 南雲とリオーネが永戸が崩れ散るところを見る。するとその時だった、彼の体から眩い光を放たれ、肉体が再構築されていくのが目に映った。


「間に合わせて、くれたのか!」


 神癒奈の予備の体が消える代わりに、永戸の蘇った体がそこに現れる。そして、持ち主に呼応するように聖剣イクセリオスが輝くと、彼は剣を構えた。


「光を放て! イクセリオス!」


 瞬間、魔力ブーストと共に強化された魔力回路から聖剣へと魔力が流れ、聖剣から光が溢れると、ゴーレムの体を一刀両断した。そうして、中心に立つ令嬢をとらえると、魔力ブーストで飛び出し、肉体から魔想体を再び引き剥がした。


「私の…願いが…」


 令嬢がバラバラになるゴーレムと共に地面に落ちるが、戻ってきたフィアネリスがキャッチすると、地面に置き、事態は解決する。


「なんとか間に合ったぁ…」


 神癒奈がぐったりした様子で戻ってきたが、光を放つ聖剣を持ついつもの彼の姿を見ると、神癒奈はどこか安心した。


「神癒奈、悪い、お前の体、壊しちゃっ…」


 永戸が言い終える前に、神癒奈が永戸に抱きつく。そして神癒奈は言った。


「おかえりなさい! 永戸さん!」


 ニコニコと笑う神癒奈を見ると安心したのか、永戸も笑うと言う。


「あぁ、ただいま、神癒奈」


 そうして永戸は功労者である神癒奈の頭を撫でたのだった。

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