賑やかな新人? 歓迎会
『新人歓迎会?』
疑問を抱えて聞き返すランジー達に、ユリウスがうむ、と言いながら答える。
「ここの四課の慣習でね、新しく入った人を優しく丁重にお迎えしようという意味でやってるのだよ」
ニコニコと朗らかな顔でユリウスが言うとそう言えばとクレス達は思い出した。
「そう言えば第二支部の隊が設立された時、隊長さんに歓迎会してもらえたっけ」
「あぁ、ここの慣習に則ってやった」
「ここってそんなフレンドリーな職場かよ」
「まぁそんなものさ、普段の激務から少しくらいはめを外したいって気持ちもある」
永戸もはははと笑うと、元第二支部のメンバーはやれやれと思う。そんな話をしてると、四課のメンバーの一部が帰ってきた。
「炊き出しのボランティア、終わらせてきたっすよー」
「今日は楽に済みましたね…」
「まっ、それだけ平和ってことよ」
本部四課直属の兵士、以前であった桐枝とエイル、リオーネが戻ってきた。
「おっ? 皆集まって何やってるんすか?」
「歓迎会だよ、ほら、第二支部のメンバーが入ってきただろ、その歓迎をしようと思って」
「あら、いいじゃない、存分に可愛がってやるわ」
桐枝が汗を拭く中、ふふふとリオーネが元第二支部のメンバーと顔を合わせる。彼女たちの実力を知るが故に元第二支部のメンバーは少し怖気付く。
「ふわぁ、退屈な任務だったのう」
「えっ⁉︎ 玉藻前殿もここの所属でありましたか⁉︎」
遅れて入ってきた玉藻前を見てフローレアは驚いた。
「おう、妾もここの所属ぞ、可愛い孫娘を見守るために入ったが、気がつくと孫娘から切り離され……よよよ」
「戻ってきたからいいんじゃありませんか?」
涙目の玉藻前をフローレアが慰める。ふと気になったことをクレスは言った。
「まさかと思うが、この椅子の人数分四課はメンバーがいるんすか?」
「そうだね、そして君たちはそこに加わった末席だ。ランジー君も含めてね」
「恐縮です…」
にこやかなユリウスにランジーは逆らえずにいた。第二支部の四課をまとめてたランジーがこんな顔するくらいだ、一体この課長は何をしてきたんだとクレスは思う。
「兎も角、歓迎会には皆集まるから、第二支部の皆は参加するように」
「は、はい!」
そういうわけで第二支部のメンバーを含めた歓迎会を四課で行うこととなった。
ーーー
歓迎会の日、仕事がなく皆で集まるようにと言われたクレス達第二支部は、よりにもよって裏路地のギルド、ナハトヴォルフの前に来ていた。
「なんでよりにもよってここに」
「ここ先日隊長が襲撃したとこでありますよね? いいのでありましょうか?」
「でも、四課はここと繋がりがあるって聞いたし…大丈夫だと思う」
「隊長の考え、何かある」
「そうだ、何せナハトヴォルフは四課の管理下にある組織だからな、四課が裏を回す時は大抵ここを使う」
そう言って皆を待っていると荒くれ者の男が近づいてきた。
「ふへへ…エルフの嬢ちゃんに、そっちは魔法使いか? そこの嬢ちゃんも可愛いなぁ、男の方も売ればいい金になりそうだ」
周りに荒くれ者達が近寄ってきて、クレス達は身構える。すると店の中から扉を突き破って渚のドロップキックが男に飛んできた。男はまともにキックをくらい、地面に跪く。
「ラルク! また人身売買に手を出そうとして! ウチはやらないって決めてるでしょ! それに今日は大事なお客様が来るんだから礼儀正しく…」
渚は隊服を着た四課のメンバーを見て、顔を青ざめさせるとラルクと呼ばれた男の頭を掴んでペコペコと謝り始めた。
「すみませんでしたボクのミスで! こいつには後でキツく叱っておくのでどうか粛清だけはご勘弁を!」
「ああいいんだ謝らなくて! 君は渚ちゃん、だろ? ほ、ほら、前に会った隊長の妹さんの! 俺らはそんな困ったことされてないし、なんともないよな? なぁ?」
『うんうん』
第二支部メンバーがそう言うと渚はホッとし、皆を出迎える。
「四課のメンバーはもうすでにみんな来てるよ、さ、中に入って!」
そう言われて第二支部四課メンバーが入ると、そこでは、荒くれ者達がサキュバスに出迎えられて飲み明かしていて、そしてそのカウンターとテーブル席の端の方で、四課のメンバー達が全員集まっていた。
「お疲れさん、その様子だと、裏路地の洗礼を浴びたようだな」
「隊長さん、課長さん、なんだってこんなところで歓迎会なんかをする気になったんですか」
『…気分?』
2人で顔を合わせて永戸とユリウスは答える。あーもうこの常識の通じないメンツらはとクレスは頭を抱え、用意された席に皆座った。
全員座ったところで渚がジョッキ一杯のこどもビールを片手に音頭を取る。
「あー今日は四課のみんな、ナハトヴォルフにきてくれてありがとー! 今日は思う存分飲み明かしていいから、楽しんでってね!」
「なんでお前が音頭を取るんだ、お前は部外者だろうが」
永戸が立ち上がると、クレス達の方を向いて改めて音頭を取った。
「えー旧第二支部四課のメンバー3人と課長、この度は本部四課に来てくれてありがとう、そして、俺達を本部に連れ戻してくれたことも感謝したい」
「何言ってるんでありますか隊長殿! フローらを引っ張ってくれてたのはいつも隊長殿らであったではありませんか!」
「隊長、神癒奈のおかげでここまで来れた」
「うん…隊長達がいたから、私たちは生き残れた」
「崖っぷちな任務ばっかだったけど、俺たちはあんた達に感謝してるんだぜ」
「そうだ…英雄、何を今更感謝することがある」
いやーそう言われると照れるなーと永戸が笑うとその場のメンバー全員が笑った。さて…と永戸が言うと、歓迎会の始まりの一言を言う。
「今宵は無礼講って奴だ、それじゃ、旧第二支部四課の本部四課編入と、俺たちの隊員復帰を記念し、乾杯!」
『かんぱーい!』
そうして飲み会が始まり、第二支部のメンバーは本部のメンバーと交流することになる。
「ライ・カルカロスだ、隊ではタンクをしている、よろしく頼むよ」
「コリー・バーミアスです! 部隊内ではガンナーやってまーす! 皆さんよろしくお願いします!」
「改めまして、エイル・ネルティーア…です、部隊内ではタンクとガンナーを兼ねてます。よろしくお願いします」
「こちらも改めて、門崎 桐枝っす! アタッカーの普通の大学生っす! 以後よろしく!」
「あら、アタシも言う感じ? リオーネ・グランディス・アンヴァーシュ・ハルト・ナーシサス、リオーネでいいわ、役はアタッカーよ、よろしく、新人さん」
「ヒカル・ハインドウェインよ、役職はアタッカー、兄さんとは先に会ってるみたいね、よろしくね」
「本官はリックル・ランダッシュと申します! 獣人の身ではありますが! この四課のガンナーになっております! 以後! お見知り置きを!」
「当機はヴェルサス・カインズコールです、アンドロイドですが、他の方と同様に扱っていただいて構いません、役はタンクを務めさせていただいてます」
「ジェイル・ベイオヴィントだ…ガンナーだ、それ以外に説明することはない」
「メリッサ・グリフ・レーゲンと申します〜、当部隊のヒーラーで、あー、課長とはお爺様と孫の関係です〜、よろしくお願いします〜」
「改めて、ケイ・ハインドウェインだ、アタッカーで、まぁ、今更君達に説明することはないね、よろしく頼むよ」
「玉藻前じゃ、そう怯えるでない、九尾の狐で、この部隊ではあたっかーをしておる、よろしゅうの」
「俺は黒沢 歩、部隊で1番の新人で、アタッカーが役目だ、よろしくお願いします」
そうして全員の挨拶が終わり、クレス達ははえーっと皆を見る。こんなに賑やかな部隊だったのかと。人から獣人、アンドロイドまでと色々勢揃いだ、これからこの中で仕事を行うのかと思うと、ちょっと謙遜気味になった。
「驚いたかね? 皆私の優秀な部下だ。私の指示一つで彼らは救世主にもなるし死神にもなる。そして当然、君たちもその歯車の中に入る。皆とは仲良くするのだね」
「相変わらず、四課は変わってないな、ほっとするよ」
永戸が心地良さそうな表情でいると、神癒奈が手をあげて突然言い出した。
「不肖神癒奈、一発芸します! 仕事に追われている時の永戸さん! ……『おいっ! 溜まってるそっちの仕事こっちによこせ! でっち上げて提出するから!』」
狐らしく永戸の動きを完璧にコピーし、鬼気迫った表情までも真似してみせる。それを永戸が笑うと、神癒奈に向けて言った。
「お前、今晩帰ったとき覚えとけよ」
「もー! 何されるかたまったものじゃないですよ!」
カップルのデレを見せられて、全員が呆れながらも2人を笑う。だが第二支部四課のメンツは思った、「あれ? 今さらっとやばいこと言ってなかった?」と。
そんなこんなで、歓迎会は進んでいき。全員賑やかな時間を過ごすのだった。




