戻ってきた古巣
「隊長さん、俺は一つ聞きたいんだが」
「どうした、炊き出し中に」
炊き出し中、永戸らはポツンと都市の外郭の一角にてテントを構えながら二人は話す。
「支部は変わってもやる事は変わらないのかよ!」
「何を今更、後叫ぶな、唾が飯に入る」
「スープですよー」と神癒奈達が炊き出しの料理を配る中、クレスはそう叫ぶ、お気楽能天気からサヨナラかと思ったら意外とそうでもなかった事に彼は驚いた。
「とは言ってもまだお前本部四課に馴染んでないだろう、ここの仕事は地獄だぞ、魔想体の回収だけじゃない、なり損ないの討伐や他の部隊の尻拭いまでさせられるからな」
「そうだよ地獄だよ! この前なり損ないの餌になりかけた時は本気で死ぬかと思ったよ!」
都市のなり損ないは危険だからなぁと永戸は言いつつパンを配る。第二支部と違って本部は補給が潤沢の為食糧の不足はない。
「だいたいなんなんだあの課長の爺さん、超怖いんだけど! あれでまだ戦えるってマジ⁉︎」
「ユリウス課長のことか? まぁあの人はいつもは優しいから、慣れてくれ」
そう、それは数日前に遡る……。
ーーー
「永戸、神癒奈、フィアネリス、本日付で本部四課に復帰と共に永戸は隊長に戻ります!」
「お帰り、諸君、部隊復帰おめでとうとでも言うべきかな」
敬礼をしてユリウスと挨拶を交わすと早速自身が座っていた椅子に座る。
「あー…懐かしいなぁこのふわふわの椅子の感覚、フィーネ、コーヒー淹れてくれるか?」
「えぇ、インスタントじゃない、給湯室で出来立てのブレンドコーヒーを入れてきますよ」
「あれから色々ありましたけど、結果オーライで戻ってこれましたよねぇ」
永戸達は久々の本部四課の空気にほっとする。やっぱこれだねーってやつ。
他の隊員達にはお土産感覚でハンバーガーを渡して、逆に隊員達からは復帰祝いとしてペンや手帳なんかをプレゼントしてもらった。
「お帰り、永戸」
「ただいま、ケイ、元気にしてたか?」
「してたさ、妹共々ね、向こうでの生活はどうだったかい?」
「狭苦しい生活だったよ、ここに戻れてよかった」
永戸はうんと背伸びをしてフィアネリスからコーヒーを受け取っては飲む。
彼の名前はケイ・ハインドウェイン、永戸達が第二支部に行ってる間この本部四課の隊長を務めていて、かつて異世界大戦があった時、永戸と共に戦った戦友だ、彼の聖剣、イクセリオスも、元はケイの聖剣を受け継いだものとなっている。
「にしても、一気に新人が四人も、あー、課長補佐も入れたら五人も入ってくるだなんて、四課もだいぶ大所帯になったよね」
「まぁな、俺の責任が増えるばかりだ」
ズズズとコーヒーを飲んでると、早速その新人達と課長補佐がやってきた。
「やぁやぁようこそ本部四課へ、歓迎しようではないか」
「クレス・スナークスです!」
「フローレア・ランディスノートと申しまする!」
「メルト・ミレイニア…です」
「私は葛城南雲」
「ランジー・トロイヤークト、本日付で課長補佐に任命されました」
五人勢揃いでユリウスの机の前に並ぶ、こんな光景久々だなぁと永戸は思うが、そろそろお約束がくるんじゃないかと待ち侘びていた。
「さて、君達がきてくれて嬉しいのだが、君達は四課についてどう思う」
「素晴らしき職場だと思いまする! 仲間と共に巨悪を倒す、まさしく正義の味方だと!」
「残念ながら不正解だねぇ、ここは地獄の一丁目だよ、さてもう一度聞こう、"君たちは四課についてどう思う"」
ああ始まった、いつもの課長の圧迫面接、と永戸とケイはコーヒーを飲みながら思う。しばらくは続くだろうと思い、その光景を眺め、数十分後、しなしなになった元第二支部四課メンバーを慰めたのだった。
ーーー
「あの課長ランジー課長よりも怖えよ! いつもニコニコしてるけど時々鋭い眼光で睨んでくるし!」
「まぁあの人も仲間を死なせたくない一心であんな態度をとるからなぁ」
遠くでは南雲とフローレアが警備として魔物狩りをしている、そんな中話は続く。
「でもいい人ですよね……私の移民手続きをスムーズにしてくれましたし」
「基本的にはいい人だよ、正義感強いし」
「なのに物騒な依頼を回してくる、恐ろしいぜ」
「今はお前らを試してるんだよ、信頼に足る戦士かどうか」
炊き出しを終えると次は物資の運搬へと入る、神癒奈達と一緒に物資を運んでいくが、第二支部の頃と違ってかなりの量があった。
「だいたいなんでこんな量を俺たちだけで捌けっていうんだ、無理があるぜ」
「死ぬ気で運ばないと終わらないぞ、他の四課のメンバーは出払ってるんだから、俺たちだけでやらなきゃならないんだから」
「わかってるよ、くそっ、これが新人の扱いかよ」
「まぁまぁいいじゃないですか、今日は討伐任務とかじゃあるまいし」
遠くで魔物の討伐を終え、やったぞと言わんばかりに槍と大剣を掲げる南雲とフローレアを見ながら神癒奈はそう言う。
「本部の四課って一体普段からどんな無茶苦茶をしてたんだ?」
「世界を救うのが当たり前、それが俺たち四課の務めさ、ボランティアは仮の姿に過ぎない」
永戸は荷物を下ろすと、汗を拭い、次の荷物へと向かう。それを見たクレスはゲンナリした。
「四課に就職するんじゃなかった…」
「諦めろ、殺させはしないが死ぬほど辛い仕事にはこれからどんどんついてもらうからな」
そうして彼らは物資運搬をしていくのだった。
ーーー
「ボランティア終えてきました」
「うむ、ご苦労、少し応えただろう、休みたまえ」
はぁああああっと新人達がぐったりする中、永戸達は椅子に座ってまったりする。この四課の空気がやはり好みなのか、永戸達は非常にリラックスした状態で過ごしていた。
「地獄だ…第二支部にいた頃の何倍も仕事が辛い…」
「組織の規模が違いますからねー、向こうと違ってこっちは大きいですから」
「退職届ならいつでも受け付けるよ」
「いや、遠慮しときます……記憶消されたりするのはごめんなんで」
クレスが冷や汗をかきながら清涼飲料水を飲む中、永戸は四課に来た依頼を確認する。
「依頼は…定期査察か」
「なんだ? 大事か?」
「いや、むしろ楽な部類だ、ある地域を見て帰ってくるだけだからな」
「本当か? 本当に楽なのか?」
疑い深いなぁと永戸は思うが、しかし定期査察なんて任務は二課が普通やる仕事だ、四課に回されるはずがない、この依頼、何かあると永戸は思った。
「まぁ、なるようにやれとしか言いようがないか
永戸はふっと笑うと、依頼を確認し終え次の仕事へと入ったのだった。




