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ヒトとキツネの異世界黙示録Ⅱ  作者: 遊戯九尾
第七章 第二支部という陰謀
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確実になっていく不和

 クレスに気をつけろと言われてからというもの、永戸達は家に帰って早速話し合いになった


「第二支部が…裏社会と通じてる? それも魔想体の取引までして」

「薄々嫌な予感はしてましたが、まさかここまでとは」


 神癒奈とフィアネリスに話すと、二人は驚きもすれば納得もした。


「確かに、それならば納得は行きます。この支部に特査があるのは不自然ですし、何よりその特査でさえ四課以外の実態は不明です、ただ一つ確証があるのは、第二支部は様々な案件に対応する本部と違って、どの課も魔想体の回収を主な任務にしていることですね」


 フィアネリスはここ最近の勤務の記録を出す。どの課も魔想体の回収をしており、それらが本部に渡っているというデータを見せた。


「ただ、少しこのデータ、妙なところがあるのですよ」

「妙?」

「見てください、回収された魔想体と本部に送られた魔想体の量を」

『っ?』


 永戸と神癒奈はよーくデータを見比べてみるとほんの僅かだが、魔想体の回収された量と送られた量とで違うのが見えた。


「あれ? 本部に送られてる量が少しだけ少ないです、それも、ほんの少し」

「これはこの一週間の量の記録です、マスター達の活動の記録もあります、このほんの少しの量が、もし支部長の手に残っていて、裏社会などに渡っているとしたら?」

「それって、横領って奴なのでは⁉︎」

「それで済めばよろしいのですけどね、資料課の手伝いに行った時、たまたまフローレアさんが落とした紙の記録をもう一度よく"観察"したのですよ、そうしたら…」

「そうしたら?」

「このようなことが以前から何度も起きている事が理解できました」


 それを聞いた永戸達は戦慄する。もしそれが本当ならば、今グナース支部長の手元には魔想体がいくつもあることになる。


「そのことを知ってる奴は?」

「資料課は確実、他は知りません」

「……この支部、だんだんきな臭くなってきたな、フィーネ、頼みがある」

「なんなりと」


 永戸が椅子で考え事をして、フィアネリスが後ろで指示待ちと、どこかの巨大人造人間のロボットアニメを彷彿とさせる構図になる。そして永戸は言った。


「この支部の資金や技術、そして人員の出所を洗い流してくれ、四課も含めて全部だ」

「四課も含めて、ですか?」

「あぁ、頼む」

「かしこまりました、それとこのことは他言しないように」


 そうして話がまとまり、永戸達は次の日に備え、休むのだった。


 ーーー


 翌日、今日も元気にと出勤をしてくると、いつものメンバーがいつものように待っていた。


「おはよう、隊長さん方」

「おはようございます…皆さん」

「おはようでありまする!」

「おはよう、今日も全員遅刻なしだな、結構なことだ」


 机でコーヒーを飲むクレス、もじもじしながら指示を待つメルト、目をキラキラさせながら今日の仕事を待ち望むフローレア、そして酒を飲みながら新聞を読むランジーと普通のメンツだった、だが永戸はここでクレスに言われた言葉を思い出す。


【気をつけろよ、あんたや神癒奈ちゃん、フィーネは大丈夫かもしれねぇが、組織にズブズブの裏切り者だっているかもしれない、そのことを覚えておけ】


「ああ、みんなおはよう」

「おはようございます! 皆さん!」

「おはようございます、本日も予定は特にございません、ボランティアにでも行きますか?」

「あーその事なんだが、お前らに話をしておきたくてな」


 フィアネリスの言葉をランジーが遮る。三人はどうしたのだろうと思ったが、ここで思わぬ発言が出た。


「支部長がお前達三人と話をしたがっているそうだ、行ってきてくれねぇか」


 そう言われ、永戸達は驚いた、まさか支部長直々にお呼びがかかるとは、だがこれは好機だ、うまくすれば、支部長の腹の内を探れるかもしれない、そう思った永戸達は頷くと言った。


「分かりました。少し行ってきます」

「あぁ、くれぐれも、失礼のないようにな」


 永戸達が部屋から出ていくと、ランジーはふぅっとため息をつく。


(あいつらの事だ、この支部の本当の意味についてそろそろ知る頃だろう、何もなく終わってくれよ…)


 そう思うと、酒を注ぐのだった。


 ーーー


 支部長に呼ばれ、永戸達はその部屋の前に立つ。


「行くぞ」

「はい」

「ええ」


 そうして永戸達は部屋の中に入る。するとそこには、筋骨隆々とした支部長が座っていた。


「四課より三名、ただいま到着しました」

「ご苦労、楽にしてくれ」


 そう言われると三人はそれぞれ楽な姿勢で立つ。さて、と支部長が立ち上がると三人に近寄った。


「お前たちの噂はかねがね聞いている、本部叩き上げのエース、世界を何度も救った英雄、そんなお前達が第二支部に来てくれて、こうして活躍してくれているところは、嬉しい事だ」

「お褒めいただき光栄です」


 支部長が笑うと、永戸はキリッとした顔で答えた。そのまま支部長の話は続く。


「都市の犯罪は増えるばかり、魔想体による被害も各世界で起こっている、そんな中こうしてお前達が活躍してくれる事で、この都市は回っていられる、そう、この支部の成果によって」


 支部長は腕を広げ喜ぶと、振り返り永戸達に聞いた。


「どうだ第二支部は、命懸けが常な本部と違って楽だろう」

「どちらにしても変わりませんよ、魔想体の回収をしているのですから」

「だが、世界の為にと常にこき使われる本部よりはマシなはずだ、その点第二支部はシンプルでいい、それほど大きな事案もそこまで回ってこない事だし」


 果たして本当にそうだろうか? とは永戸達は思った。だがまぁ支部長視点からすればそう見えるのだろうと思い、永戸達は話を聞き続ける。


「そこで提案なんだが、ここの一課から四課を統合して特殊部隊を作りたい、その重役に、お前達に任せてみようと思ってな」

「特殊部隊?」

「そうだ、私の命令によって動き、裁きを実行し、このミズガルズに私の力によって平和をもたらす、本部とは違う特殊部隊だ、お前達には特別待遇で入れさせてやろう、どうだ? 悪くない話だろう」


 永戸達はそれを聞くと、三人で顔を合わせあった。彼らには分かっていた、それは、特殊部隊と銘こそ打たれているものの、やることはグナース支部長の私設軍隊だと。この話に乗ればより良い待遇は期待されるだろう。だが、永戸達の中で、許されないものがあった。


「お気持ちは大変嬉しいですが、すみません、俺達はその提案には乗ることはできません」

「ほう、それは何故だ?」

「俺たちは異世界特別調査隊四課です、決して誰かの手にある力ではなく、世界を救う為のみんなの為の力です。残念ですが、俺達は俺達の正義を貫きます」


 永戸達四課は都市を守る最後の壁だ、私設軍隊の力などではない。世界を救う為の切り札なのだ、グナースの手で使われるわけにはいかない。そう告げると、グナースは目を丸くし、彼らに問いかけた。


「力によって得られる名誉や地位はいらないのか?」

「名誉ならとっくに持ってますよ、英雄という名誉が、これ以上の何を求めるというのですか、地位も必要ありません、俺たちはこのままの四課が一番性に合ってます」


 そう答えるとグナースは残念そうな顔をした。


「そうか、残念だ、お前達がいれば、我が軍も盤石だと思ったのだが、まぁいい、話は以上だ、もう出ていいぞ」

「ありがとうございました」


 永戸達は出ていくが、支部長のグナースは彼らに見えないところで、笑みを浮かべていたのだった…。


 ーーー


 支部長の部屋から出て、廊下を歩く永戸達。


「やっぱ、クロだったな」

「グナース支部長は特査を用いて私設軍隊を作ろうとしていた」

「しかもそれだけではございませんよ、話を聞いている間にデータ収集を終えておきました、聞きますか?」

「聞かせてくれ」


 廊下を曲がって四課のオフィスに行く中、フィアネリスのデータが語られる。


「まず第二支部ですが、構成している特査の大半が裏路地経由の者です、さらに言えば、他の構成員も、過去に何らかの事件があった者達が大半を占めます。

「経歴で言えばロクな奴がいないってことか」

「はい、そして物流ですが、本部からのものもございますが、やはり裏路地から回されたものもございます、既存の技術だけではなく、"大戦"時代のロストテクノロジーまで」

「大戦って、あの異世界大戦のことですか⁉︎ そんな時代の技術って…」

「大量破壊兵器です」


 その事を聞いた永戸は息を飲み、神癒奈は口を押さえた。


「まだ開発には至っていませんが、もしその技術が悪用などされたら…」

「この都市に大きな脅威が生まれる」

「でも、どうします? 相手は自分達のいる組織ですよ⁉︎」

「それはこれから考え…!」


 四課のオフィスに戻った永戸達だったが、そこで彼らは黙り込んだ。クレスとフローレア、南雲が倒れていたからだ、メルトとランジーの姿はない。


「クレス!」

「フローレアさん!」

「南雲さん!」


 慌てて駆け寄るが、どうやら意識を失っているだけらしい。二人はほっとするも、メルトとランジーの姿が無いことに気を向けた。


「メルト達はどこに⁉︎」

「ここですよ」


 直後、三人を高圧電流が襲い、地面へ倒れさせた。フィアネリスは即気絶したが、永戸と神癒奈だけは意識を保った。だが、力づくで取り押さえられ、白銀製の手錠をつけられる。


「メルト……これは……一体!」

「そのままの意味……です、貴方達は、組織に従わなかった、だからこの始末です…この事態は、貴方達が起こしたんですから」

「そんな……仲間じゃ…なかったんですか⁉︎」

「……ごめんなさい」


 そうしてもう一度高圧電流が流れ、永戸と神癒奈の意識も落ちたのだった。

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