第二支部の本当の意味
いつものように出勤の時間となり、永戸達は出勤する、一番街のお気に入りのダイナーで皆の分のハンバーガーを買い、鉄道に乗っては第二支部に出勤する。
「おはようございます」
「はい、おはよう、ん? いい匂いがするな、なんだそれは」
「俺たちがいつも行くダイナーのハンバーガーですよ、たまには皆にも振舞ってあげようと思って」
「本部とは違うのに、お前らも優しいもんだな」
皆にハンバーガーを配り、ランジーにも永戸はハンバーガーを渡す。
「うひょおおおお! これが一番街のハンヴァーガー! 隊長よろしいのですか⁉︎」
「構わん、俺たちの奢りだ」
「羽ぶりがいいな、隊長さん」
「たまには隊長として皆を労らせてくれ」
永戸がはははと笑いながらチキンバーガーを貪る。いつものように仕事に入るが今日は書類仕事もボランティアもなく暇だった。
「課長、今日は珍しく閑古鳥が鳴いてますね」
「普段からこうあるべきなのが四課だ、世界の危機とかそうそう起きてたまるもんか」
「まぁ、そうですね、何かできることとかないかなぁ」
神癒奈はふと考え、ハンバーガーを食べ終えたメンバーの皆としばし考えると、言った。
「偶には、他の課の手伝いでもいくのはどうです?」
「そうだな、俺たちはあくまで補充要員みたいなものだし、いいですよね、課長」
「あぁ、好きにしろ」
そうして永戸達は他の課を手伝いに行った。
ーーー
というわけで一課や二課などは肉体労働の男性陣たちが行き、こちらは表には出ない資料課の手伝いに来た神癒奈達女性陣。
「その資料はそっちの机に回しといて、後、予算案や依頼の紙は目を通したらハンコを押しといて」
「わかりました!」
言われた通りの仕事を行う神癒奈達。すると資料課の人達からこんなことを言われた。
「貴方達ね、毎回とんでもないデータを持ってくるのは、第二支部の資料課じゃあ扱いきれないのよ」
「はい…いつもすみません」
「まぁいいわ、貴方達のデータを元に、本部の一課や四課の装備がアップグレードされていくんだから、最も、今回扱う資料はこの支部の運営や依頼に関わる物だからそこまで関係ないけどね」
「気が楽でいいですね」
そう言いながら仕事をする神癒奈達、ぽんぽんとハンコを押していくが、ここでフローレアが転んで史料が散らばってしまった。それにフィアネリスがカバーし、宙に舞った紙を転移で一つにまとめる。
「あうー! すみませんフィアネリス殿ぉ!」
「いえいえ、これくらい問題ありません」
そうしてフィアネリスは資料を見るが、ここであることに気づく。
「おや、この資料……本部の名義ではないですね、名義は…ここの支部長ですか」
「その紙はダメ!」
フィアネリスが持っていた紙の束が、資料課の人に毟り取られる。フィアネリスは「はて?」と疑問を浮かべながら聞いた。
「見たところ普通の資料に見えますが?」
「こ、この資料は、ここの支部長直々に扱う資料だから、資料課外部の人間には見せられないの」
「…ふむ……」
フィアネリスは得意の全知で瞳を輝かせ、覗こうかと考えたが、余計な詮索は面倒を生むと判断し、やめた。
「あ、あはは、ここでの仕事はもういいから、他を手伝ってきて頂戴」
「かしこまりました、行きますよ、皆さん」
「はーい」
「は…はい」
「分かり申した!」
そうして四課は去っていくが、資料課の人は危ういと思い冷や汗を拭った。
「これがバレたら、確実に四課に詰め寄られる、あの天使が全知を使ってたら終わっていたわ…」
部屋を出て行った彼女達を見て、資料課の人間はそう呟くのだった。
ーーー
一方、こちらは一課と二課、永戸達は一課や二課が合同訓練をするのを見る中、彼らの装備のメンテナンスをしていた。
「まったく、やになっちゃうなぁ、なんで他人の装備を整備しなくちゃならないのやら」
「口の前にまずは手を動かせ、これ全部メンテするんだから」
山のように束ねられた装備をあの手この手で補修やメンテナンスしていく二人。夏場の暑い中むさい男達が訓練するのを横目で見ながら、Eフォンから小気味のいいジャズを流しながら二人は装備を触る。
「このジャズ、AIが作ったものだろう?、メカが作ったくせしていい音質鳴らしやがって」
「なら、フィーネのピアノも聞くか? あいつアカデミー時代ピアノで賞を取ったことがあるらしいぞ、その気になれば教会のオルガンだってひいてみせますよと言うくらいだ」
「AIやメカの進化って恐ろしいねぇ、いずれ人類を越えるんじゃないか?」
「お前はター○ネーター見たことないのか? 人類はAIに脳みその出来を追い越されるぞ」
そんな小ボケもかましつつ二人は整備していくが、ここでクレスがこんなことを言い出す。
「そういや、この前あんたらが何故第二支部は存在するのか気にしてたよな、実は俺も気になってたんだ」
「お前はここが就職先だろ? 気にすることなんかないのに」
「…それが気になるんだよ」
するとクレスは整備しながらもしみじみとした様子で語り始めた。
「俺は裏路地出身でさ、毎日を生きてくために色々やってきたわけ、んで、日々必死に生きてきた俺に何故かイストリアから紹介状が届いた」
「お前、前の仕事はなんだったんだ?」
「殺し屋。それも正義の味方の、悪徳役人とかを片付ける時代劇のアレみたいなのをしてきたわけ」
裏路地からやってきたとなると相当な実力者でなきゃダメだ、経歴もかなり潔癖でなければならない。余程善行をなしてきたのだろう、そう考えると永戸はクレスの評価を改めた。
「正直最初は驚いたさ、天下のイストリアがこの俺に仕事をくれるだなんて、まっ、知ってるクチじゃ、同じ魔想体回収の仕事をおってる連中もいるようだけどな」
「で、面接とか試験とか受けてここに?」
「そゆこと、だから俺は裏社会とも繋がってるし、表道も歩ける不思議なやつって訳、でだ、何故俺みたいな奴が第二支部に入れたか、気にならないか?」
「言われてみれば確かに、裏路地から入ってきた奴は見たことはあるが、紹介状まで送られた話は聞いたことがない」
永戸はかつての本部四課にいたある男のことを思い出すと、不思議に思い始める。
「そもそも何故第二支部にわざわざ特査まであるんだと思う? だってそうだろ、一般の兵士ならともかく、特査は本部だけで充分なはずだ、わざわざ一課から四課まで作る必要性はない、この部隊群は元々特殊部隊だからな」
「…ランジー課長はあくまで俺達は本部とのバランスを取るための左遷だと言っていた、だけど言われてみれば、第二支部に特査は必要ない」
「んで、そこでだ、俺も気になったんで裏路地のツテから個人で調べてみたんだ、そしたらこんな情報が見つかった訳」
クレスはEフォンを永戸に見せる。するとそこには、ある男と裏路地の組織が接触している写真があった。
「この男ってどっかで見たことあるな…どこだったか」
「おいおい、うちの最高司令官を知らない呼ばわりなんてあんたもすげーボンクラだな、グナース支部長だよ、その支部長が裏路地の組織と繋がっていたんだ」
それを聞いた永戸はふむ…と首を傾げる。
「で、その支部長が一体裏路地と何をしてたんだ? 予想はしたくないが」
「クイズしてやろう、1.魔想体を秘密裏に取引をしていた、2.支部の資金や技術提供を受けていた、3.人材を手に入れていた」
「おいおい、どれを選んでも大してロクな事じゃないな、……まさか、全部か?」
「正解だ、支部長は俺達や他の課が回収してきた魔想体を保有、あるいは横流ししている、んでそれを対価に裏路地から資金、技術、人材を提供してもらっていた」
「よくそんな情報を手に入れてきたな、バレたら射殺も辞さなめだぞ」
永戸が顔を青ざめる中、クレスはへへっと笑う。
「隊長の無茶と比べりゃこんなの朝飯前さ、それで、我らが隊長さんはどう思う?」
「どう思うったって、俺たちの組織だぞ、こんなことを大々的に公表したらイストリアの信頼に関わる、最悪第二支部は解体されるぞ」
「だがそれが起きてない、誰もがおかしいと感じるはずのこの問題で、誰も文句を言ってない、それはつまりどう言うことか…」
「まさか……この施設にいる連中は」
「お疲れ様です、永戸さん、クレスさん」
永戸が何か言う前に、神癒奈たちがやってきた。
「あぁ、はやかったな、どうしたんだ?」
「向こうの仕事が早く終わったんで手伝いに来ました!」
神癒奈がやってきた途端、クレスは永戸の耳にこう言い残した。
「気をつけろよ、あんたや神癒奈ちゃん、フィーネは大丈夫かもしれねぇが、組織にズブズブの裏切り者だっているかもしれない、そのことを覚えておけ」
「ああ」
その言葉を聞くと、永戸達は神癒奈達と合流して、一緒に作業をするのだった。




