彷徨う勇者の亡霊
各地に出現した勇者らしきものを永戸らは追いかける。勇者はギルドの中に入っていった。永戸達もギルドに入ると、そこでは大賑わいだった。
「我らが勇者様が戻ってきたぞ!」
勇者が来たことでギルド内で歓声が響き渡る、人々が勇者と触れ合ってるあたり、実体そのものは持っているようだった。
そんな中で永戸達が中に入り勇者に問いかける。
「なぁ、お前がこの国を救った勇者か?」
勇者は振り返ると永戸達に答えた。
「ああ、そうだ、何か私に用かな?」
勇者はにこやかな表情でそう答えるが、永戸は真実を告げた。
「この国の勇者は、すでに死んでいると聞く、それなのに何故、今こうしてお前は立っている。それに、違うところで勇者を見かけたという目撃証言まである、これはどういうことか」
永戸は真実を突きつけたが、勇者が何かいう前に街の人が言った。
「勇者様が死んだ? そんなはずがない! 勇者様はここにいるじゃない!」
「そうだそうだ! 勇者様が死んだなんて嘘、そんなのあるわけないだろ!」
街の人達はそう言うと永戸らに向けて罵声を浴びせ始めた。
「お前らはアレだろ! さては外から来た異端者だな! この国には勇者様がいる! もし怪しい動きをしたら勇者様がお前達を切るぞ!」
「邪な心を持つ者達ね! 貴方達なんか! 勇者様にやられてしまえばいいのよ!」
勇者は何かを伝えようとするが、その前に街の人たちが前に出ては次々と永戸らに罵声を浴びせ、しまいには石を投げ始めた。
「うわっ! 危ない奴らだな! 話を聞く気すらないのか!」
「痛っ!」
「神癒奈! おいいい加減にしろ!勇者のためなら他の人が傷ついてもいいって言うのかよ!」
神癒奈の頭に石が当たり、血が溢れてるのを見て、永戸が怒る。だが、街の人たちは攻撃をやめなかった。
「こいつらだろ! 昼間コソコソ勇者様について嗅ぎ回っていた奴らってのは!」
「こんなのに勇者様のお手を煩わせるような真似はいけない! 俺たちでこいつらを蹴散らしてやるんだ!」
街の人は武器を持つと永戸達の周りに集まっては威嚇する。
【マスター! 神癒奈さん! ご無事ですか⁉︎】
「神癒奈が怪我をした! この状況を打開したいが街の人を怪我させたくない!」
「…どうすれば……っ! 勇者が紛い物ならば、その勇者を撃ってください!」
永戸は人々の隙間から見える勇者に対して、新型の大型リボルバー銃『ブレイズエッジⅡ』を撃つと、弾丸はまっすぐ飛んでいき、勇者を貫いた。だが次の瞬間、勇者の姿は消え、その場には、魔想体の力場が残った。
「勇者様…勇者様が…消えた⁉︎」
「見ろ! これが真実だ! お前達が信じていた勇者はもういない! 今いる勇者は紛い物の亡霊だ!」
「黙れ黙れ黙れ! 勇者様は消えちゃいない! きっとどこかで、まだ戦っているんだ!」
その言葉に対して、神癒奈がぎりっ…と歯軋りをすると、頭の血を拭い、叫んだ。
「いつまで勇者伝説に縋って生きてるんですか! もう勇者は死んだのですよ! さっきの勇者が消えるのだって見たのに、それでもまだ信じられないんですか⁉︎ 街中に勇者の亡霊が出ていると言う噂があっても、それでもまだ勇者がいるって信じ続けてるんですか!」
神癒奈がそう叫ぶと、街の人達は意気消沈し、武器を下ろした。するとその中の一人がこう言った。
「仕方がないだろう、またいつ争いになるか分からないんだ、またいつ平和が脅かされるか……そんな中で、勇者がいてくれるって言う夢があるなら、意地でも縋りたいんだ、たとえ、死んでいたとしてもだ」
「私は魔物のせいで家族を失った……今はもう娘しかいないの、勇者様が守ってくれないと、私は安心して暮らせない! 偽物だっていいのよ! 勇者様がいないなら、私たちは、これからどうやって生きていけばいいのよ!」
その言葉に永戸達はしばし無言になる、だが、彼らは言葉に詰まることなどなく、静かにこう言った。
「誰かに頼って生きていくのは構わない、それが良き隣人であっても、知人であっても構わない。だがな、そこにもういない死した人を頼って生きていくのは違う。死んだ人は死んだ人だ、その人の遺志を継ぐのは構わない、だが死して尚も縋るのは違う。だから進め、他人の意思でではなく、自分の意思で」
そう言うと街の人達は何も言わなくなり、完全に戦う気を失った。彼らはもう分かっただろう、勇者はもういないのだと。永戸は少し考えるとこう言った。
「教えて欲しい、勇者の亡骸のある場所を、俺たちは、そこに、勇者が亡霊として生きている原因があると思っているどうか、力を貸してくれないか?」
そう言うと街の人達は頷き。永戸達に、勇者の亡骸がある場所を教えたのだった。
ーーー
勇者の亡骸がある場所が見つかり、永戸達は集まってはその場所へと向かう。
「大丈夫…ですか? 頭の傷」
「平気ですよ、神様ですから、こんなの怪我のうちに入りません!」
メルトに神癒奈が怪我をしたところを見せるとしっかりと治っていた。
「それで? どうして勇者の亡骸が怪しいと思ったんだ?」
クレスが永戸にそう聞くと、永戸は何の躊躇いもなくこう答えた。
「街を徘徊している勇者はおそらくダミーだ、現に俺が攻撃しても、魔想体の力場がでるだけでその場から消えた。とするとその力場を起こしている本体がどこかにあるはずだ」
「で、それがなんで勇者の亡骸なんだ?」
「さっき、勇者が消えて魔想体の力場が出たって言っただろ、とすると魔想体は勇者の近くにある確率が高い、案外墓に入ってたりしてな」
そうして四課のメンバーは目的地に着く。そこは、昼間きた教会だった。
「……行くぞ」
永戸達は教会に入る。すると、神官達が出迎えた。
「こんなに大勢で、一体何のようですかな?」
「勇者の遺体を調べたい。ここにあるのだろう? 街の人から聞いた」
「はぁ、ですが……よろしいのですかな? 後悔をなさっても知りませんよ」
「もとより覚悟の上だ」
そうして教会の中に連れられ、どんどん奥に入っていく永戸達。神聖な場所なのか、魔力の感覚が感じられたが、だんだん奥にいくに連れて、不穏な気配が感じられた。
「ここです、勇者様の遺体は、ここに安置されてます」
「確認させてもらおう」
永戸達は重い扉を開き、中に入る。するとその中は棺が中央に一つある部屋だった。
「その棺です」
「……」
永戸は棺の蓋を開けた。するとそこには、勇者が死して眠っていたが、その手には、魔想体が握られていた。
「やっぱり、ここにあったか、魔想体の回収を行う」
そうして魔想体に手を差し伸べようとすると、ドンッと銃の発砲音が聞こえた。その発砲で、フローレアが血を吐きながら倒れる。振り向くと、神官の一人が銃を発砲したのが見えた、他の神官達も、中を構えているのが見える。
「フロー! お前ら! なんのつもりだ!」
「バレてしまっては仕方がありません、確かに、勇者には魔想体が秘められていた。その力によって、勇者はこの国の力として根付き、人々の希望の灯火としてあり続ける、そう国王が判断して魔想体を死した勇者のそばに置かせた」
「国を守るために、世界を滅ぼす物質に手を出したと言うのですか!」
「この国の為なら、世界など必要な犠牲です、我々は、勇者と共にあり続ける」
「バカだなぁ、そうなると最初に滅ぶのはこの国なのに」
永戸は魔想体を取るのを一度やめ、神官達に振り向く。そして神癒奈が指を鳴らすと、偽装が解け、倒れたはずのフローレアは立っていて、銃弾はバリアで防がれていた。
「バカな⁉︎ 確実に一人殺したはずでは⁉︎」
「狐に化かされたんでしょう、私たちにその程度の銃弾は効きませんよ」
「異邦の悪魔め…勇者に触れるな!」
「悪いが、回収させてもらう!」
永戸がもう一度魔想体に触れると、バチバチと音を鳴らし、魔想体が暴走を引き起こした。
「何でありますか、これは⁉︎」
「魔想体から、力を…感じる…!」
あまりの力に、フローレアと南雲が驚く、すると神官が言った。
「おお! 勇者のお怒りに触れてしまったか! 魔想体と繋がった勇者が、異邦の悪魔に裁決を下すぞ!」
そうして魔想体の手によって目覚めた勇者は近くにあった大きな鎧を身に纏うと、墓の中にあった剣を手に取る。
「勇者様! どうかあの異邦の悪魔を滅ぼしてくださいませ!」
神官達が勇者にそう命令するが、勇者は振り返ると神官達に剣を振り上げた
「勇者様⁉︎ 一体何を、我々はあなたの味方です! おやめください!」
「……」
「ぐあああああっ!」
勇者の攻撃によって神官達は殺され、血を浴びた勇者は永戸達に振り返る。どうやら回収するにはこいつを倒さなければならないらしいと思った永戸達は、それぞれ武器を構えると言った。
「行くぞ!亡霊を始末する!」




