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ヒトとキツネの異世界黙示録Ⅱ  作者: 遊戯九尾
第五章 ざまぁ系の行き着く先は…
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歪に変わった英雄譚

 ヒルトがまっすぐ突っ込んで来る。しかし武器は持ってない、どうやら神癒奈達を殺す気はないらしい。だが神癒奈の弱点を狙ってるのか、正確な一撃を入れてくる。

 神癒奈はそれをガードして防ぐ。ダメージが貫通してくるが耐えれなくはないダメージだ。神癒奈も彼を傷つけたくないのか、夜廻桜を峰打ちでかまえ、ヒルトに振るう。だが、ヒルトはソレを軽々と避けた。


「神癒奈さん、無駄だよ、あなたの攻撃は、僕には見える。それに、そんな本気じゃない攻撃だと僕を倒せない」

「ええ、そうでしょうね! でも!」

「これならばいかがでしょう!」


 フィアネリスが武器を構えると、往来の人達は逃げていく、逃げてくれて結構、そう思うとフィアネリスは機剣ホワイトレクイエムから波動砲を撃つ。だが、ココが前に立つと盾で弾いた。


「波動砲を弾いた⁉︎」

「危うい、存在看破が遅れていたらこっちがやられていた……んで、貴方達はそんな存在だったんだね」


 ヒルトは心底残念そうに表情を変えると言った。


「異世界管理組織、イストリア、そんなものが存在していたなんて、ここへは、僕の監視に来たの?」

「そんなところ、って答えたら悲しみますか?」

「ああ! 悲しいよ!」


 ヒルトから再び黒い刃が飛び、今度は神癒奈が狙われる。


「焔月式抜刀術、零式!」

「っ! いけません!」


 神癒奈が零式で攻撃を弾き返そうとするが、神癒奈に命中する直前飛んできた刃の一本が軌道を変えて神癒奈を背中から襲う。フィアネリスが慌ててガードするが大きく隙を見せた。


「アイリス! 今だ!」

「はい! メガファイア!」


 アイリスから魔法で炎が飛んで来るが、神癒奈が手をかざすと炎が彼女から溢れた焔によってかき消される。


「向こうも炎⁉︎ いや…あれはそれを超える焔か! アイリス! 他の魔法で攻撃するんだ!」

「ならば! アクアニードル!」


 今度は水の針が飛ばされてくるが、神癒奈が再び焔の障壁を展開すると、水の針は蒸発する。


「なんて熱気なんだ!」

「…熱い! 絶対服の体温調節機能壊れてますよこれ! 開発部に絶対頼み込んでやる!」

「そんなこと言ってる場合ではありませんよ!」


 フィアネリスがそう言うと、ヒルトとココが同時攻撃を仕掛けてきた、後方ではアイリスが魔法の準備をしている。今度は本気で来るらしく、何が何でもイサキを確実に仕留める気だ。


「うおおおお!」

「そんなナイフで!」


 フィアネリスがヒルトのナイフ攻撃を盾で弾く。彼の能力は彼女に知れ渡っている、逆に彼女の能力も彼に知られているため、互いに一歩も引かぬ攻撃の応酬となった。

 しかし、大型の武器を持つフィアネリスだが、短距離に詰められると振り回しやすい分ヒルトにやや分があった。


「神癒奈ぁ! 邪魔しないで!」

「そちらこそ! 攻撃を止めてください!」


 ココと刃をぶつけ合い、睨み合いになる神癒奈だが、存在看破で純粋なパワーで上回られてるのか、ココの剣が重く感じた。


「このっ! どいて!」

「どきません!」


 ココが開いた手の盾で殴るが、神癒奈は耐え、返しで刀をココに打撃を入れた。


「ぁ…」


 その一撃でココは倒れ……。


「…」

「っ! 意識を落としたのに攻撃してきた⁉︎」


 ぐちゅとまるで人間じゃないような音を立ててココは立ち上がる。首は変な方向に曲がっており、まるで生き物ではないかのようだった。


「こいつ! ただものじゃない!」


 刀を峰打ちから元に戻し、今度はココを全力で斬りかかる。全力の斬撃を受け、ココだった者は倒れるが、黒い影となり、霧散する。


「ココ…? 今のは一体…そんな…まさかココは、最初から、"作られた存在だった?"」

「まさか…いや、そんなはずは!」


 狼狽えるヒルトにフィアネリスはまさかと思い、ビットをサイビットにし、魔法を詠唱していたアイリスを切り裂く。その時、やはりと言うべきか、アイリスも黒い影となって消えた。


「神癒奈さん! 明らかにこれは状況がおかしいです! 何か、危険なものが絡んでいる!」

「そうですね!」

「ココも、アイリスも…最初からいなかった…? じゃあ、僕の仲間は…」


 ココとアイリスを失い、ヒルトは狼狽える。その次の瞬間、ヒルトから黒いオーラが溢れ出した。


「そうだ、悪は、二人を殺したこの二人だ、悪は断罪しなければ……」


 ヒルトが短剣から変化した黒い剣を構える。神癒奈とフィアネリスは攻撃に構えるが、その時道に一本の聖剣が落ちてきた。


「後は、俺がやる」


 そうして現れたのは永戸だった、赤黒い稲妻を纏いながら現れた彼は、聖剣を手に取ると、ヒルトに構える。


「邪魔を、するな! 僕は今からそこの悪を切る」

「……もうお前の物語は歪みに歪みきってしまった、だから終わらせよう、"英雄殺し"として」

「英雄…殺し? 吟遊詩人じゃなかったのか」


 ヒルトがその言葉に驚く中、永戸は剣を振るい、ヒルトに斬りかかる。ヒルトは構えるが、一瞬で詰め寄った彼は剣でヒルトを斬り飛ばした。凄まじい剣気にヒルトは吹き飛ぶ。だが、斬られたところが淡く光ると、内部から見たくないものが見えた。


「魔想体……調査対象がようやくここで見つかるとはな」


 永戸達がこの世界に調査に来ていたのは魔想体が発生したと言う報告があったからだ、その回収に携わっていたが、まさかこんなところにあるとは、と永戸は思う。


「その石、どこで見つけた」

「知りたいかい? 気がついたら、ポケットの中に入ってたんだ、誰かとぶつかったときにでも入ってきたのかな」

「そんな偶然が…あっていいのか」


 永戸は剣を握りしめると神癒奈とフィアネリスを下がらせる。


「永戸さん! 存在が看破されたら大きく不利になりますよ!」

「分かってる、けど、俺の存在は看破できるかな?」

「黙れ!」


 ヒルトから黒い影が2体出てきては走る。その影にフィアネリスは覚えがあった。


「あれは、ドラゴンキラーのメンバーを襲った!」


 黒い影が迫り来るが、永戸は手をかざすと、ドロリと黒いタールを滴らせる。


「……絶望よ、世界に仇なせ」


 永戸の中に眠る絶望が目を覚まし、黒く染まった地面から真っ黒な巨大な狐を2匹召喚する。そしてそれが黒く染まった影に迫ると巨大な口で噛みつき、ガジリと噛むと、そのまま飲み込んだ。


「不味いか、そうか、悪い物を食わせたな、だが、今度は美味い肉だぞ」

「なんだ…何なんだその力は⁉︎」

「この世の全ての絶望……その使い魔だよ、まぁ、俺の趣味も混ざってるがな」


 2匹の狐の絶望と永戸がヒルトに近づく。ヒルトは剣で1匹の狐を斬りつけるが斬りつけても剣がすりぬける。


「な、なんで⁉︎ 何故斬れない!」

「絶望に恐怖する限り、俺には勝てない」


 ヒルトは永戸に向けて剣を振るうも、容易く弾かれる。


「何故! 何故お前の存在が見えない!」

「それは、俺がそこにいてそこにいない亡霊ゴーストだからだ!」


 互いに剣を交わしていくが、永戸の方が優勢で、ヒルトの体に傷がどんどんついていった。


「このぉ!」

「見誤ったな!」


 大ぶりな攻撃をするが、大きく弾かれ、2匹の狐がヒルトを捉えた


「ぐぁあああああっ⁉︎」


 噛みつかれ、そこから絶望の因子が流れ込んで来る痛みにヒルトが叫ぶ。


「喰え、少々異物があるかもしれないが、その時は吐き出せ」

「嫌だ! 死にたくない! 僕はまだ! あいつらに復讐をやり遂げてない!」

「……さっきの仲間の死で復讐が虚な夢だって分かったろ、分かったなら、絶望の底に沈め」


 狐に噛みつかれ、全身がズタズタになり、痛みで悲鳴を上げる中、狐の口からぺっと魔想体が吐き出される。永戸はそれを回収すると言った。


「後はお前らの好きにしていい、存分に、喰え」

「死ぬわけには! ならないんだ! イサキに復讐をするのは僕なんだ! 嫌だぁあああ!」


 そのままバリボリと喰われ、ヒルトは絶望の腹の中に収まる。すると、2匹の狐は永戸の方に擦り寄って来た。


「よくやってくれたな、もう帰っていいぞ」


 2匹を撫でると、2匹は喜ぶように吠えると黒いタールの中に消え、タールも永戸の元に戻る。だが、永戸も使った反動があるのか絶望が体の一部を覆っていた。


「やはり便利な能力ってわけにはいかないか、だが、使えるものは使わなきゃな」

「永戸さん!」


 神癒奈が近づくと、希望で体の絶望を打ち払う。その光景を見たイサキは言った。


「お前達は…一体」


 人ならざる物を見るような目で見るイサキに、永戸は答えた。


「ただの吟遊詩人だ、唄えないが、戦える」

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