やっぱり起きちゃったよざまぁ系
「これは…うわ…典型的と言うか何と言うか」
「私夜更かしした時夜中チラッとこんなアニメ見た気がします」
見事なざまぁ系の導入に永戸と神癒奈はドン引きする。フィアネリスも悩ましいのかため息をついた。
「これは明日が楽しみですね」
「楽しみであってほしくないんだが……どうするよ」
「ま、まぁ明日程度で立場逆転なんていう急展開はないでしょう、マスターたちも明日は羽を伸ばして調査を休んでみては?」
「外は暑いし、ギルドの中で涼みながらエールでも飲むか?」
永戸さんが酒を⁉︎ と珍しそうにする神癒奈とフィアネリス、だが永戸もたまには飲みたいのか、酒を求めた。
「では、かの冒険者たちの観測は私にお任せを、マスター達はビールでも飲んでリラックスしな、とでも言っておきましょう」
「そうさせてもらうよ」
そんなこんなで永戸たちは休む事が決定されたのだった。
ーーー
翌日、調査はフィアネリスに任せて永戸達はギルドで涼みながらエールを飲む。
「何で冒険者ランクが私より下なんですか?」
「目立たないために決まってるだろう、吟遊詩人で戦う奴…ゲームの中くらいしかいないだろ、できたとして歌ってバフかける程度のものだ、そんなのが冒険者ランクを上げられる訳がない」
まぁそれもそうかと神癒奈も酒を飲む。
「にしても、昼間から飲む酒は格別というか何というか、まぁあんまり好きじゃないから別に何とも思わないが、涼しいとは思うな、一杯だけにしてあとはジュースだな」
「相変わらず子供舌ですねぇ」
「ほっとけ、俺は酒よりジュースの方が好きなんだ」
そんなことを言ってるとヒルトがギルド内に入ってきた。永戸と神癒奈を見つけると、手を挙げては一緒の席に座る。
「お疲れ様です、お二方」
「はい、お疲れ、あれから何か収穫はあったか?」
「はい! 新しい仲間を連れてきました!」
「ココでーす! よろしく!」
永戸と神癒奈の前で気さくに話すヒルトとココ。二人からあれから起きた出来事を聞かされると、フィアネリスの情報通りだなと二人は思った。
「しかし、BランクモンスターをDランクが軽く討伐したなんて凄いな、どんな手品を使ったんだ?」
「そんな、手品だなんて、僕はただシーカーとしての能力を使ったまでですよ」
「それにしては強すぎやしないか?赤い点を突けば相手が死ぬなんて話聞いた事ないぞ」
「それもシーカーの能力なんですよ、僕が強いわけではないんです」
「本当かなぁ」
永戸は疑い深く話を聞くが、神癒奈はエールを飲み干すと、ふぅっと少し酔った顔で言った。
「まぁいいじゃないですか、こうして新しい仲間もできた事なんですし」
「それはそうだな、新しい仲間に乾杯だ」
そうして乾杯して、その日は普通に終わった。
ーーー
更に翌日、休憩も終えて調査にと近くの森にやってくる永戸と神癒奈。彼らは調査のプロフェッショナルだ、動物を避けての行動はできるし、戦闘になれば敵を一撃で殺す事だってできる。
ただ、今回は殺しに来たわけじゃない、Sランクパーティー、ドラゴンキラーの動向を探りにきた。フィアネリスの情報だと、まだこの森で小遣い稼ぎをしてると聞いて、永戸と神癒奈は双眼鏡片手にパーティーを探す。
「いた?」
「いませんね…そっちは?」
「分かんない、フィーネに座標をマークしてもらおうか、いっそ」
そう言ってるとドーンと爆音が聞こえてきた。永戸達は急行すると、そこでは、ドラゴンキラーが戦闘を行っていた、どうやら新しく仲間を募ったようで、同じシーカーを雇ったらしい。
「おい! 奴の弱点を早く教えてくれ!」
「そんなのわかるわけないだろ!シーカーの探知能力にそんなのはない!」
「なら、あんたが前に出て戦いなさいよ!」
「無茶言うな! シーカーは普通探索用の職業だぞ! 戦闘なんかとてもできるものか!」
それを見た永戸はうーわ…と引く。ヒルトと一般シーカーの差を見て、二人はざまぁ系のテンプレにハマってると思う。するとシーカーの方に動きがあった。
「お前らと組んでたら命がいくつあっても足りない! 俺は降りさせてもらうからな!」
そう言ってシーカーの方は逃げていく。
「待て! 雇われておいて仕事を放棄する気かよ! おい! くそっ! ヒルトがいなくなってからだ! パーティーがおかしくなったのは! 魔物には出くわす! 弱点がわからない! 魔物の動きが読めない! シーカーってのはそれくらいできる奴じゃなかったのかよ!」
(違うんだよなー、ヒルトが異常なだけなんだよなー)
永戸はジト目でそれを見守る。すると、別方向から何かが走ってくるのが見えた。
「あれは、ヒルトさんです!」
ヒルトがやってきては、モンスターを刈り取る。一撃で倒れたモンスターにドラゴンキラーのリーダー、イサキはヒルトに言う。
「ヒルト! 来てくれたか!」
「イサキ、何故ここに」
どうやら同じ爆発を見て動いてきたらしく、ヒルトはイサキをモンスターの上から見下ろす。
「ちょうどよかった! お前の力が欲しかったところだ! 他のシーカーや仲間が役に立たなくてよ! このままじゃ俺たちはSランクから降格してしまう! シーカーのお前の力を貸して欲しいんだ! もう一度パーティーに入って欲しい! 出てけと言ったのは謝るからさ、な?」
イサキがそう言うと頭を下げるが、苦悶の表情を浮かべているのは、遠くから見ていた永戸達からでも目に見えてわかった。それを、ヒルトは困惑しながら答える。
「残念だけど、それはできない、僕は新しい仲間を得たし、Sランクというランクに興味はない、僕は、大切な仲間を手放したくないから」
「そうだよ! これまでヒルトに酷い扱いしておいて今更戻ってこいだなんて虫が良すぎない⁉︎」
そう言われると、イサキは「ぐっ…」と苦悶の表情をより歪ませる。すると彼はこう言った。
「なぁ、俺たちは友達だよな? 友達の頼みだと思って、手伝ってくれないか?」
「ダメだ、それはできない、僕はもう、ドラゴンキラーのメンバーじゃないのだから」
その言葉で、完全に拒絶され、イサキはヒルトに敵意を向ける。
「ヒルト…こんだけ頼んでも言うことを聞かないとは、失望したぜ!」
「失望したのは僕の方だ、君には一貫性がないのか?」
「てめぇ!」
イサキがヒルトに斬りかかるが、ヒルトは寸前で回避する。
「なっ! Sランクの俺の攻撃が、こうも容易く!」
「冒険者同士での殺し合いは御法度だって教わらなかったのか? ならばもう、君とは、決別だ!」
「がはっ⁉︎」
ヒルトが拳で殴ると、イサキにクリーンヒットし、イサキは倒れる。倒れたイサキは立ちあがろうとするが、全身が痺れたように動けなくなり、ヒルトを恨めしそうに見上げる。
「メイ! 魔法で援護しろ! リメリルはさっさと俺を回復してくれ!」
「そうしたいけど、この雌犬が邪魔でできないの!」
「ヒルトの邪魔はさせない!」
ココがメイとリメリルの魔法や祈祷の詠唱を中止させ、二人にシールドでタックルすると吹き飛ばす。どうやらヒルトのシーカーの能力には看破した相手に対して攻撃力や防御力が上昇する効果があるらしく、その庇護に置かれてないメイとリメリルは一撃でダウンした。
「くそっ! なんで、ヒルトの方が強いんだ! 俺はSランクパーティー、ドラゴンキラーのリーダー、イサキだぞ!」
「そうやって肩書きに縋りつこうとするあたりが無様だよ…ギルドには報告させてもらうからね」
「待て! まだ戦いは終わっちゃいねぇ…!」
そうしてヒルト達は去っていった。こうしてざまぁ系のテンプレである力の誇示はなされた。
「どうしますか?」
「俺たちも撤退しよう、どうせあいつらもなんだかんだで生き残るだろう」
永戸達も撤退し、ギルドへと帰る。すると、さっそく話題はドラゴンキラーの件で持ちきりだった。
「あのドラゴンキラーが! 冒険者を狙っただって⁉︎」
「それも狙ったのは元仲間らしい、けどその仲間が撃退したんだってよ」
「元仲間って、あのシーカーの⁉︎」
「あぁ、何でもその辺のシーカーにはないすげー力を持ってるそうだ」
ヒルトの話を聞いたギルド嬢は、ドラゴンキラーの名簿に黒の印鑑を押した。
「今回の件により、ドラゴンキラーは罰としてSランクからBランクへと降格させていただきます!」
ドラゴンキラーの降格が決定され、ギルドはどよめく。
「2ランク降格だなんて前代未聞じゃないか⁉︎」
「けど、それだけの悪事をして活躍もしてないんだ、そうなっても仕方ない…」
冒険者達がざわめく中、永戸達はそれを遠くから見守る。するとフィアネリスから通信が入ってきた。
【これから、ですよ、ここからこの物語の歴史がおかしくなっていきます】
「…そうか」
フィアネリスの忠告を聞いた永戸はギルドの光景をもう一度見ると、外へでてったのだった…。




