フィアネリスの記録《邂逅と不調》
「よし、冒険者として一からやり直して頑張っていくぞ!」
そう言うヒルトはギルドの依頼で簡単な薬草採取の依頼を受けて森の中を進んでいた。Sランクパーティーから追放され、自身のランクもそこまで高くなく、単独だとDランク止まりだった。
元はと言えばイサキ(ドラゴンキラーのリーダー)の腰巾着みたいな扱いだったが、Sランク相応の扱いを受けさせてもらっていた。その恩もあって彼には下手に出れなくなっていたのだ。それをあの冒険者(永戸たち)に助けてもらったのだ。その想いを無碍にしないように頑張ろう、そう思っていたら、早速薬草を見つけた。
「地道に、頑張ろう」
薬草を摘んでは進んでいくヒルト、それからしばらく薬草が取れたが、一通り集めたところでギルドに報告に行こうとした、その時だった。
「きゃー!」
誰か女性の悲鳴が聞こえてきた。それに放っておけず、ヒルトは駆け出していく。すると、その先にいたのは犬耳の女性だった、剣士なのか剣と盾を持っていたが、熊型のモンスターに追い込まれて座り込んでいた。
「危ない!」
ヒルトが前に飛び出し、シーカーの武器、ナイフで応戦しようとした時、敵に赤い点が見えた。昔からちょくちょく、この赤い点を狙って攻撃をしてきたが、ここに命中すると必ず敵は倒れた。そして今回も、それを狙って攻撃をした。それは見事に赤い点を切り裂き、モンスターは倒れた。
「大丈夫⁉︎」
「だ、大丈夫…凄いね! ブランドベアーを一撃で倒すだなんてBランクの冒険者一人じゃ危ない相手なのに」
「なんてことはないさ、僕はシーカーだからね、僕はヒルト、君は?」
「私はココ! よろしく! ヒルト!」
ヒルトは周囲にモンスターの気配がないか調べると、ココの肩を持ち上げてはあるか、どうやら彼女は足を刻まれたらしく、木にもたれかけさせると、ヒールをこころみる。すると、傷は即座に治り、すぐに動けるようになった。
「一瞬で足が治った! 凄い! シーカーって初歩的な回復魔法しか覚えないのに!」
「それほどでも、これでも初歩的な魔法なんだよ」
「そんなことないよ! ヒーラーの回復に匹敵する回復だったよ!」
二人は立ち上がって歩き出す。同時にヒルトは存在隠蔽を使ってココと自分を隠しながら最適なルートで帰る。
「ココは冒険者を始めてどれくらいなんだい?」
「私はDランク! ヒルトは⁉︎」
「僕もDランクなんだ、一緒だね…っ」
ヒルトが足を止めてココを立ち止まらせる。すると目の前を先ほどの熊型モンスターが通って行った。
「ブランドベアー…!」
「いまならやれるか…!」
見えた赤い点に向けてナイフを構えると、背中から飛び上がってザクっと突き刺した。ブランドベアーは少し苦しんだが、血飛沫を上げるとそのまま倒れた。
「やっぱり凄い…Bランク級をナイフで一撃でやるなんて」
「たまたまだよ、僕が存在隠蔽をかけて隠れて攻撃しなかったらやられていた、ラッキーだったんだ」
「でも! それでもヒルトは凄いよ! 魔物もすぐに察知するし! 本当にDランク⁉︎」
「それは……」
ヒルトはこれまでの事情を説明した、すると、ココは怒った。
「ひどい! こんなにも役に立つヒルトをクビだなんて! イサキって奴! 許さない!」
「気にしなくていいよ、僕はあの人に助けられてたところあるし、それに…今はもう一人だから」
「じゃあじゃあ! 私とパーティーを組もう! 同じDランク同士、仲良くできると思うの!」
「いいの?」
ヒルトは若干驚くが、ココは興味津々で言った。
「全然構わないよ! ヒルトには何度も助けてもらったし! そのお礼!」
そうしてパーティーを組む事になったが、ココは不思議な感覚を感じる。
「あれ、なんか変な感じがする、感覚が敏感になった感じというか」
「シーカーの僕の感覚が共有されたんだ、これで敵の弱点や危ない攻撃が見えるよ」
「へぇ! ヒルトってそんな力があったんだ! よろしく! ヒルト!」
「よ、よろしく!」
こうして、ヒルトとココはパーティーを組む事になり、一緒に戦う事になった。
ーーー
一方、ドラゴンキラーは…。
「なんでだよ! なんで弱点が見えねぇんだ!」
Sランクパーティーであるドラゴンキラーが、同じ敵であるブランドベアーに苦戦していた。しかも一体どころじゃない、三体に囲まれていた。
「くそっ! メイ! 魔法は!」
「こんな状況で唱えられるわけないでしょ! っ! きゃあっ!」
メイが攻撃を受けると切り刻まれ、血が溢れ出す。
「メイ! おいリメリル! 早く回復をするんだ!」
「してます! ですが即座に回復しないんです!」
溢れ出す血が徐々におさまっていくが、完治には至らずで、何度もヒールをかけていた。
「なんでだよ! いつものように道を歩いてたら雑魚モンスターにあっただけなのに、何で同時に何頭もあって尚且つこんなに苦戦してるんだ! 俺たちはSランクパーティー、ドラゴンキラーだぞ!」
「イサキ! ここはメイのために撤退を!」
「畜生! 小遣い稼ぎのつもりが、どうしてこんな事に⁉︎」
そうして、大事なシーカーをなくしたドラゴンキラーは同じ森の中で撤退するしかなかった。




