ざまぁの後って何が残る?
「…暑いな」
「暑いですね、今地球じゃ夏ですからね」
「異世界ごとに季節って関係あるのかよ、しらねぇけど」
「さぁ? 神の私でもわかりません」
ーそんなふうにしゃべり合うのは我らがマスターのお二方、今回の任務はある異世界の調査という事で円周城の壁に囲まれた城下町、俗にいう"なーロッパ"にて調査を行っていました。はてさて、今回の任務は一体どんなものでしょうかー
「服の体温調節機能そろそろ壊れ始めてるんじゃねぇのか?」
「激しい戦闘に晒され続けましたからね、今度開発部に作り直してもらいます?」
「暑いからギルドに寄って飲み物でも飲もう…熱中症で死ぬ前に」
ーどんな冒険に…なるんでしょうか?(笑)ー
ーーー
と言うわけでギルドにやってきた永戸と神癒奈。血のように赤いコートの男と白い巫女服の女性がやってきたものだからギルド中の人間からジロジロと見られ、永戸たちはどうしたものかと困り果てる。ひとまず受付に挨拶だけでも済ますかといこうとしたその時だった。
「お前なんてパーティーに必要ないんだよ! 能力も地味なシーカーだしよ! 俺達Sランクパーティー『ドラゴンキラー』に必要ねぇ!」
「そうよ! あんたなんて邪魔邪魔! あたし達からもらった荷物を置いてさっさと出てったら?」
「そうです、貴方のような俗物がいると、パーティーに支障が出るのですよ」
永戸たちに注目していた者達があっという間に興味をなくし、なんだなんだと騒ぎを起こしてる方へ向く。永戸は気にせずギルドの姉さんからブドウジュースを二つ貰って神癒奈に渡すが、神癒奈は騒ぎをじっと見ていた。
「永戸さん、あれって」
「典型的なざまぁ系の導入だな、能力がないと思われた者がパーティーリーダーからクビを言い渡され仲間からあれこれ言われつつ出ていき、後で力があると分かったら立場が逆転してなんやかんやあって元のパーティーは転落していくって言うストーリーだ」
ブドウジュースをぐびぐびと飲みながら永戸はそう言う。よく見ると手も出しており、殴ったり蹴ったりと酷い有様だ。はぁぁぁぁとため息をついた永戸が止めに入った。
「おい、もうそのへんにしとけよ…」
「あ⁉︎ なんだてめぇ! Sランクの俺様になんか文句あんのか! テメェ冒険者ランクいくつだ!」
「Dランクだが?」
『えーーーーっ⁉︎』
これにはギルドの人どころか神癒奈ですら驚いた。あのなりでDランク、というか冒険者ランクが平凡なBランクに収めていた神癒奈が永戸が下にいたとは思わなかった。そんな中、Sランクの男は話す。
「てめ…Dランクだと…⁉︎ 俺たちが誰だかわかってんのか⁉︎」
「ドラゴンキラーだろう? なぁやめとけって…クビにするならクビって宣言してもうすっぱり切ってさ、新しい冒険者探したほうがいいよ」
「テメェが指図するんじゃねぇ! どこの雑魚かは知らねぇが痛い目をみたいようだな!」
Sランクの男が殴りかかってくるが、永戸はその拳を受け止めた。男は拳を引き剥がそうとするが、永戸から引き剥がす事ができない。
「ぐっこの…!」
「言ったよな、やめとけと、ランクはあくまで指標だ、ゆめゆめ忘れぬようにな」
「ちっおぼえておけよ! とにかくこいつはクビだ!」
そう言って男たちは去っていく、永戸はふぅっとためいきをつくとギルドの姉さんから再びブドウジュースを二ついただく。そして殴られていた男を立たせるとジュースを渡した。
「酷いやられようだな、ほら、奢るよ、神癒奈、来い」
そうして殴られていた男を対面に座らせて神癒奈と一緒に座る永戸、神癒奈は目立っちゃったなーとジュースを飲みながら思いつつ、永戸は話に入る。
「さっきの連中ってお前の仲間だったのか?」
「あっあぁ、僕の仲間だった、僕はヒルト、シーカーの職業をしてるんだ」
「シーカーねぇ…いい職業じゃないか、なのに何故クビに?」
「だって、シーカーって、戦闘力は低いし、探索能力とか、魔物から隠れる術とか、探知する能力しか持ってないじゃないですか、それを仲間から言われて、もう必要ないって言われたんですよ、道具持ちだってしてきたのに」
「そりゃまた可哀想に」
永戸が頼んでいた近くで獲れる猪肉のステーキを三人で食べ出す。神癒奈は楽しみにしてたようでうわぁと言いながら涎を滴らせて食べていたが、永戸は神癒奈に目配せする。神癒奈は曲がりなりにも神だ、フィアネリス程ではないが対象のステータスの開示などの能力は持っている。
(こいつはクロか?)
(クロです、彼はただのシーカーじゃありません。魔物を一撃で殺す魔眼や、存在隠蔽、存在看破など様々なスキルを持ってます)
神癒奈と念話で話して納得した永戸はなるほどねと思うと、男と話した。
「まぁほら、シーカーで上手くいかなくても、他の職業とかあるんじゃないか?」
「僕、戦うのが苦手で、シーカーくらいしかできることがないんです、この職業以外選べないんです」
「シーカーしかできないねぇ、それは困ったものだ」
永戸がため息をついてるとヒルトはこう言った。
「あの………貴方達は、普通の冒険者じゃないですよね」
彼は踏み込んだ話題をしてきた。永戸は再びため息をつくと、彼に言った。
「どうしてそう思う?」
「所作でわかります。貴方達の足取りや攻撃をあしらった時の反応速度、並の冒険者じゃない、Sランクどころじゃない、SSランク、いや、それ以上の強さを持ってるって」
「……さて、どうかね、俺はただの吟遊詩人だ、戦いではこいつのサポートしかできない」
永戸はいつもの吟遊詩人という嘘をつく。それを聞いたヒルトは少し違和感を感じたが、食事を終えると、席からたった。
「兎も角、助けてくれてありがとうございます、料理まで奢ってもらったし、この借りはいずれ返したいです」
「いいよ、俺の善意だ、気にすんな」
そうしてヒルトは去っていく。ステーキを食べながら二人は話す。
「これからどうします?」
「あのヒルトという冒険者を監視しよう」
「でも隠れてもバレちゃいますよ?」
「もっと上位互換となる能力者がこっちにはいるだろう?」
それを聞いた神癒奈はフィアネリスの事かと納得する
「取り敢えず、フィーネを呼ぼう、しばらくは彼の動向を探る形で動く、いいな?」
「分かりました」
ーーー
そういうわけで、永戸はフィアネリスを呼んで助けてもらう事にした。その日の夜、宿屋にて、フィアネリスを呼び、話をする。
「ふむ、ざまぁ系の道を辿るシーカーですか」
「なぁフィーネ、この話の行く結末は分かるか?」
「少し調べてみます」
フィアネリスは目を閉じて物語がどうなるか演算で調べてみる。すると、一分もかからずに答えが出た。
「答えが出ました」
「早いな、で、結末は?」
「典型的なざまぁ系です、そのドラゴンキラーと呼ばれるパーティーは新生したシーカー、ヒルトの手によって壊滅します、ですが……変です」
「変?」
永戸は変と聞いてフィアネリスに聞き返す、すると彼女はこう答えた。
「ドラゴンキラーというパーティーは壊滅にまで追い込まれますが、壊滅後も災難が続くんです」
「そんなのどこの物語でもある話だろう、魔王軍の手に堕ちるとか、パーティーメンバーが投獄されるとか」
「それが…その災難を起こすのが、ヒルトのパーティーそのものなんです」
「どういうことだ?」
永戸は訳が分からずフィアネリスにもう一度聞く。
「つまりは、イジメです、パーティーの崩壊後も、ヒルトとパーティーメンバーの手によってイジメが続きます」
「なんでまた、この手の物語って、ざまぁした後はもう何も残らない普通のつまらない物語になるんじゃないか?」
「それがそうならないんです」
変わった話だなぁと永戸は思い、ひとまず今後の行動を決める。
「フィーネは今後の彼らの動向を見てくれ、何が起きるか全部な」
「そういうと思って、彼が貴方から離れた後の動向を探知して記録しておきました」
「仕事が早い」
そういうわけでフィアネリスはヒルトの動向を映像にして映した。
「これが、貴方達のあった後のヒルトの動向です」
そこに映っていた映像を、永戸たちは見た。




