鬼の子は世界を知る
「全くお前たちと来たら! 休暇中に仕事を持ってきて! おかげさまで休暇はパァだ!」
「ボーナス出たからいいじゃないですか、都市の議会も喜んでることだし」
ランジーにガミガミ怒られながらも永戸たちはひとまず事態の解決に導いた立役者として都市から謝礼金を貰った。だが始末書は大量に貯まっており、やはりと言うべきか本部も出撃させたのが不味かったとそう言う始末書まで来ていた。
「はぁー、世界を破壊する物質を回収してきたのに、なんで始末書書かなきゃならんのかな」
「まぁ…みんな無事だったからいいじゃないですか」
ぐったりしてる永戸のテーブルにメルトが入れたコーヒーが運ばれてくる。部屋を変えてもらった本部にいた時と違って再び狭い部屋に戻ったため、給湯室はなくコーヒーもインスタントしかも三番街で買える安物の為味もチープときた。一番街のオフィスにいた頃のコーヒーが懐かしいと思いつつ永戸はコーヒーを啜る。
「良いではありませんか、今回の戦いは突発だったとは言え、我々に強い味方が来てくれたことですし」
「それはそうだけどさぁ」
「まぁいいじゃないの、結構可愛げのある嬢ちゃんだったしさ」
フィアネリスとクレスからも諭され、永戸はしょうがないなぁとため息をつく。アレからフィアネリスに記憶を辿ってもらって、魔想体を妖達に与えた人物を探ってもらったが、やはり姿だけしか分からず、情報は闇の中、とは言え収穫はあった。それも、人数もパワーも足りてないこの第二支部四課における更なる力が。
「みんな渡すプレゼントは何にしたよ?」
「私は無難にリボンのネクタイにしましたよ、それも和風柄の」
「私も無難にタオルを、そう言うマスターは?」
「俺か? 俺は実用を兼ねて、本部の武器開発部から特別性のハンドカノンを送ってもらったよ」
うわっ職権濫用だーと言いつつプレゼントを渡す相手を待ってるみんな。いつの間にかオフィスには机が一つ増えていて、そして待っていると、その相手がやってきた。
「本日付けで第二支部異世界特別調査隊四課の隊員になりました、葛城 南雲です、よろしくお願いします」
そうしてやってきたのは南雲だった。アレから四課に入ることを決め、ミズガルズに来ては試験に合格し、第二支部の隊員として活動することになった。新米ばかりの第二支部だが、これほどパワーの強い子が来てくれれば負担も減るだろう。だがランジー課長はまた頭を抱えるのだった。
「まさか新しく配属される子が酒呑童子を継ぐ者とは……上層部にどう顔向けすればいいんだ…」
「今回は神癒奈の時と違ってゴタゴタがあったわけじゃないし、問題はないと思いますけど」
「神癒奈の時の話は俺も聞いている、ユリウス課長が苦労していたこともな…だが実際遭遇してみると頭を抱えたくなるな」
「あの…すみません」
南雲がランジー課長の為に酒を注ぐが、ランジーはそれを見てあぁ…と悩み込む。そんな光景に永戸たちはふぅっとため息をつくと仕事に戻る。
「ここにあるプレゼントは?」
「みんなからのプレゼントです、受け取ってください!」
そうして南雲は受け取っていくが、最後に、隊からの支給品を受け取った。早速着ようとロッカールームへ行き、着ると戻ってきた、服装は、永戸のように血のように赤い和服だった。
「似合ってますよ! なんだか永戸さんみたいです!」
「おいおい、それって褒めてるのか?」
神癒奈に褒められ、南雲は満更でもない表情をする、そして仕事に入るが、早速ぼやきが出た。
「あの、妖と人とを繋ぐ為にここにきたんだけど…やる事が地味すぎやしない?」
「地味も地味さ、基本こんなデスクワークをして、んで時々ボランティアに出かける、今日のボランティアいつだっけ」
「確か、もうすぐだったはずです」
「あそ、じゃあ行くか」
と言うわけで飲み物を一気飲みしては準備をしだす四課の隊員、それを見て何をするんだろうと南雲は言う。
「これから何を?」
「ん? お前が望む、妖と人が繋がれる世界への一歩さ」
そう答えた永戸はにっと笑って見せた
ーーー
今回のボランティアは炊き出しだった。場所は月の都周辺の村々。
炊き出しに呼ばれ、南雲は何をすればと思うが、永戸から「適当に人を呼んできてくれ」と頼まれ、人を呼んでくる。すると、近くにいた人からこう言われた。
「貴方は、鬼の人……」
「あぁ、えっと、はい」
村の女性から鬼である事が見抜かれてしまうが、だが、彼女から拒否感などは感じられなかった。
「……でも、怖くない、そう、貴方が、最近神癒奈様の庇護に置かれた鬼たちなのね」
「あちらで炊き出しをしています、よかったらどうぞ」
そうして女性を炊き出しへと呼び込むと、神癒奈から言われる。
「夢への第一歩ですね」
「えっ?」
「今ので、一人とは言え、妖と人とでわかりあう事ができた、こう言った積み重ねが、いずれ大きな融和を生む、そうとは思いませんか?」
そう言われると南雲の中でほのかに何かが灯るようなポカポカした感じがした。
「きっと、そうかもしれない、私、これからここで頑張る、貴方の国も、守るように」
「はい、よろしくお願いしますね」
そうして、南雲を新たに仲間に入れた第二支部四課は、また一つ危機から何かを守り抜いたのだった。




