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ヒトとキツネの異世界黙示録Ⅱ  作者: 遊戯九尾
第二部最終章 全てに大団円を

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終わる物語と、続いていく物語

 オメガの発生源をパイルブレードで貫いた瞬間だった。発生源から大量の瘴気が溢れ出すと、全てのオメガが活動を停止し、霧散していった。

 地面に落ちる永戸は神癒奈にキャッチされる。そうして二人は火乃香たちの方へと向き合った。するとそこには、模倣体としての役目を終えたのか、親としての表情で向き合う別の次元の永戸たちがいた。


「おかあさん……おとうさん……! ぐすっ……やっと、帰って来れたよ、私」


 血が溢れ出す腹部を押さえながらも、火乃香は自分の本当の親たちと話す。


「よく、頑張りましたね。貴方の覚悟は、胸にしっかりと伝わりましたよ」

「あぁ、泣いてることしかできなかった火乃香が、いつの間にか英雄の風格を持ったのだから、俺も驚いたよ」

「うん……うん……!」


 そうして向こうの永戸たちは、火乃香を褒め称えると、二人に向き合った。


「……ここまで、火乃香を連れてきてくれてありがとうな、俺」

「誇ってください。次元侵食体、オメガは倒されました。貴方たちの旅路は、まだ終わらないんです」

「けどそれは……」

「貴方たちの旅が……」


 自分たちの物語は終わらない、だが、彼らの物語は終わるだろう、そう考えると、二人は手を伸ばそうとする。


「もういいんだ……俺たちは……こうして刹那の時を生きながらえた亡霊に過ぎない、亡霊は亡霊らしく、舞台の幕を閉じて終わるだけさ」

「火乃香も、自身が亡霊であると覚悟して、この旅を終わらせようと、自らの命を差し出したのです。もし、あそこで火乃香が命を賭けなければ、貴方達の物語は、終わっていたでしょう」


 永戸たちはその意味を受け取ると、うつむいてしまう。だが、向こうの自分たちは笑ってみせた。


「何悲しそうにうつむいてるんだ、そうやってうつむくから、今も悲しい物語が増え続ける、だからそうならない為に、戦い続けてきた、そうだろう?」

「……あぁ、そうだな」

「貴方たちは、これまでも、そして、これからも、異世界の脅威と戦い続けなければならない。それが、四課の使命なのだから。ほら、行ってください、みんなが待ってますよ」

「ええ、そうですね……」


 二人は重々しく振り返ると、立ち去ろうとするが、一歩、足を踏みとどめると、最後に火乃香に一言、言葉を残す。


「火乃香……」

「……なに?」

「来世は、こんな絶望じゃない、幸せな世界であるといいな」

「貴方と共に旅ができて、良かったです」

『じゃあな(ね)』


 永戸と神癒奈は振り返らず、揚陸船の方へと向かっていった。やがてその場が崩れ落ち始め、オメガによって保たれていた世界が、壊れ始める。


「お父さん……お母さん……」

「なんだ?」

「何? 火乃香」


 火乃香の親たちは優しく微笑む、すると火乃香は、笑いながら、泣きながら、小さな声で答えたのだった。


「私、命を賭けたけど……まだ死にたくないよ……もっと、いろんな世界を、見たかったよ」


 それを聞いた二人は、顔を合わせると、消えゆく魂の残り香に残った最後の力を使って言った。


「そうだな、せっかくここまで頑張ってきたんだ、クリアボーナスくらい、あげないとな?」

「この次元ではもう生きていられない、私たちとは会えませんけど、けど、貴方を託せられる、強い人たちに、貴方を託しましょうか」


 そうして、消えゆく世界の中で小さな灯火が灯ると、その世界は、消えていったのだった。


 ーーー


 消えゆく世界を見届け、永戸と神癒奈は静かに振り返る。そこには、暗い表情をした仲間達がいた。


「火乃香君は……?」

「あいつは、自分の最後の役目を果たしました」

「……そうか」


 そうしてユリウスがうつむくが、その時、悲痛な声が船内にこだました。


「なんで! なんで! 火乃香だけ……アイツだけ死んだの! アイツは、さっきまで同じご飯を食べてた仲間じゃない!」


 アンフェリアの拳が、火乃香と合わせた拳が、船の壁へぶつかる。永戸達には、何も言えなかった。


「どうしてよ! 火乃香はあたしと、一緒に学校行って! バ先でスイーツ食べて! 笑って過ごすべきだった! なのになんで! アイツだけ死んじゃったの!」


 アンフェリアが泣く声は、永戸と神癒奈の二人の心に突き刺さった。だが、そんな時でも、考えをやめない者がいた。


【あとは頼みましたよ、私】


 フィアネリスは、その言葉の意味を考えていた。

 それは、世界の運命を自分に託した言葉か? いや、もしそうなら、火乃香が命を差し出す結末を見据えてない事になる。

 もし、火乃香も託しての意味ならと……フィアネリスは、一年後の未来を予測する。するとそこには、フィアネリスの予想をくつがえす、驚くべき未来が待っていた。


「マスター、神癒奈さん、アン……火乃香の旅は、まだ終わってないかもしれません、むしろ、彼女にとってはこれからだとも言えます」

「えっ?」

「それってどういう?」

「フィーネ、何が、言いたいわけ?」


 その場の全員が、フィアネリスの言葉の意味を聞いた。するとフィアネリスは幸せそうな、満面の笑顔で言った。


「火乃香の魂は……♪」

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