決戦の時
次元生命体Xの捕虜を確保してから数週間、ここで、革命的なことがわかった。
「オメガを倒す手段が判明しました!」
フィアネリスが、大量の資料を抱えながらやってくる。それを聞いた永戸たちは驚いた。
「本当か⁉︎ それで、倒す手段というのは?」
「ゲル状の生命体はある特定の性質を配合させたビームを当てることで撃破が可能との事です。次元生命体Xは、その配合を知っていました」
フィアネリスがその性質の表を見せる。永戸たちにはこれがなんなのかは理解できなかったが、とりあえず、倒す手段が見つかっただけでもありがたかった。
「現在、対オメガ用の兵器の開発が行われてます。それと……」
フィアネリスが今度は別の資料を出してきた。それは、Xの戦艦に残されていたデータグラフだった。
「Xの次元探査装置によると、オメガが発生する異次元の異世界の位置はこの位置にあると判明、奴らは何十万年に一度発生する厄災のようなもので、発生源を撃破すれば、全てのオメガが蒸発、平和が訪れるとのことです。現在、それに乗り込む部隊を寄せ集めてます」
「乗り込むって、オメガと正面きって戦うのか?」
「えぇ、今回が、正真正銘のラストミッションです」
ラストミッションと聞いて、永戸たちは息を呑んだ。いよいよ決戦になるのかと。
「次元移送船に関しては、Xの座礁した船に戦艦の部品を使い、修理して乗ることが決定されました。こちらも突貫工事のため数日中に終わると思います」
「早いな」
「えぇ、それだけ、我々の肩に世界の運命が載ってると言うことになります」
それを聞くと永戸たちは、戦う準備をせねばと心で思った。
心では心配ではあったが、倒す手段が見つかったと言うのなら、試す価値はあると思った。
「……お父さん、終わらせよう? もうこれ以上、私たちみたいな犠牲を増やさないためにも」
火乃香の声を聞くと、永戸も覚悟を決めた。
「……そうだな、終わらせに行こう」
「えぇ、これで終われば、全てまとめてハッピーエンドですからね」
永戸と神癒奈は全員で頷くと。その襲撃の時まで、準備をしていくのだった。
ーーー
そして作戦決行の日、次元移民船を無理やり改修した揚陸船が、協力的なX達によって操作され、次元が移動可能になる。
その揚陸船を前に、永戸達は言った。
「なぁ? この船乗っても本当に大丈夫なのか? 突然Xが裏切ったりしないよな?」
「裏切らないよう、イストリアは小型爆弾のついた首輪を彼らにつけさせました、そうそう裏切ることはないはず」
「死なば諸共で次元の旅の途中で殺されることがなければいいんだがな」
そうは言いつつも永戸達は乗り込む。船の中は変わらずだが、いろいろ機械が修理されているのが見えた。
【本艦はまもなく離陸し、オメガの本拠地へとワープします。総員、出撃に備えてください】
「始まるようだぞ」
「なんだかドキドキしますね……」
船の一室に入り、永戸達はひとまず待つ事にした。皆、真剣な表情で身構えていた。
「……なぁ、こんなことを言うのもなんだけどさ、言っていいか?」
「ダメですよ、こう言う時に言うのは死亡フラグになるんですから」
「でも言いたいんだ。恥ずかしいから、一回しか言わないぞ」
「どうなっても知りませんからね?」
神癒奈の反対を押し切り、永戸は静かに息を吸うと、かつて大戦の終結時に死んだ友のことを思い出し、彼がいたらなんて言われるだろうと笑うと、彼女の手をとり、こう言った。
「この戦いから帰ったら、神癒奈、結婚しよう」
その言葉を聞くと、四課の全員はその場でおおっと声をあげた。あの朴念仁の永戸がとうとう告白したと。
「っ! ……バカっ! なんでそんな事、今言うんですか!」
「吊り橋効果って奴かな、ドキドキして、なんだか今言わなきゃと思ってしまったというか」
「それは……そうですけど」
あまりに恥ずかしくなり、神癒奈も照れる。二人して照れて沈黙の時間が生まれるが、次に神癒奈の発した言葉で、一同はさらにドキドキした。
「狐は愛する人を手に入れたら自分のテリトリーに置きたくなるものです。浮気とか絶対しませんよね?」
「しない」
「私を一人にはさせませんよね? 絶対に」
「それもさせない」
「子供は、何人作りますか?」
「一人だけでいい、名前はもう決まってる」
永戸たちの会話を聞くごとに、他のメンバーは照れたり驚いたり恥ずかしがったりとさまざまな反応を見せる。そんな中で、神癒奈は永戸にこう言った。
「なら、この先がどんなに絶望と混沌に満ち溢れても、私の隣に立って、戦ってくれますか?」
その言葉に、永戸は晴れやかな笑顔を見せると、答えた。
「あぁ、永遠に、お前と一緒に世界を見ていくことを誓うよ」
そうして永戸は神癒奈の指をギュッと握り、そのまま抱きしめた。
それを神癒奈は恥ずかしそうにしながら言う。
「本当に、バカなんですから。みんなの前ですよ? なのにこんな恥ずかしいセリフを連発して、ハグまでして、恥ずかしさで茹で上がりそうです」
「ごめん、でも、絶対に生きて帰る覚悟で行くから」
「……うん、分かってますよ、貴方は、殺しても殺しきれない人間だって、私が知ってますから」
互いにそう言った時、揚陸船は動き出し、次元のワープを始めた。航行中は暇になる、暫くは暇になるからと永戸達はイストリアのまずいレーションを食べていく。
「このまずいレーションから、俺たちの旅は始まったよな」
「えぇ、最初に会った時が、懐かしいです。あの時馬車で出会った二人が、今では揚陸船のワープの中ですからね。二、三年と続けてきた旅路ですけど、けれど、私たちの旅には、いろんな意味がありましたね」
二人で旅を懐かしみ、レーションを食べ終えると、全ての支度を整えた。そして遂に、四課のメンバーはラストミッションの地、異次元異世界の果てへと到達する。
「あれが……オメガの本拠地……」
「今回の作戦で、全てが終わります。天界からも、天使たちの部隊が何個か来ております、最初は、派手な空中戦になりますよ」
そう言っていると、先行隊か、天使たちが出撃していくのが見えた。
「では、我々も行きますよ、アン、準備を」
「わかりましたよ、センパイ」
「頑張ってきてね! アン!」
「ん、火乃香も……頑張ってね」
アンフェリアと火乃香はそれぞれ拳を合わせると、二人は別れたのだった。
艦載機出撃用のカタパルトに、フィアネリスとアンフェリアがやってくる。
「……フィーネ」
「おや? 貴方が私を名前で呼ぶとは、珍しい」
「……あたしもさ、帰ったら、しっかり勉強して、人を守る天使になろうと思うんだ、その……悪い、かな?」
「どうしてそんな事を今言い出すのですか?」
「隊長達を見てるとさ、あたしもなんか、そう言う大切なものがあったらいいなって思って」
ですか……とフィアネリスは呟くと、アンフェリアにこう言う。
「ならまずは、目の前の敵を倒し、世界を救うところから始めましょうか」
「うん」
そうして二人はカタパルトに乗り込むと、武装の最終チェックを行う。全てオールグリーンと出ると、カタパルトのゲートが開かれる。
「ラグナロック1! 飛翔します!」
「ラグナロック2! 飛び立つ!」
すると、カタパルトから射出され、フィアネリスとアンフェリアは出撃していくのだった。




