焔と共に
蜃気楼で体を強化した神癒奈が、村正を持ってFに斬りかかる。
「バカね! 私には境界線の力がある!」
停止の力場でFは防ごうとするが、その時、神癒奈は加速の力場を発動させ、力場を中和して斬り裂いた。
「何⁉︎」
「短時間だけですが、それでも貴方には追いつけます!」
神癒奈が焔を揺らめかせ、もう片手に夜廻桜を持つと、二刀流で斬る。Fは腕でそれを受け止めるが、徐々に傷がつき始める。
「永戸さん!」
「あぁ! 『アフターバーナー!』」
永戸もアフターバーナーを使用し、神癒奈から直接供給される魔力をフル活用きて斬る。今その場では、二つの焔がゆらめき、連続攻撃を仕掛けていた。
「ふざけた真似を!」
Fは自分たちの武器か、ビームソードを手にして二人と斬り合うが、某星間戦争の映画のように、光る聖剣や輝く妖刀とぶつかり合うと、音を立てながら鍔迫り合いになった。
「私も忘れてもらっちゃ困るよ!」
火乃香も空中から霊剣イクセリオスで斬りかかり、三人で攻撃を続ける。Fはその攻撃の猛襲で焦りを見せ始めた。
「一時的に、パワーをこちらと同等に増やすなど⁉︎ たかが小狐が、たかが人間が、そんな真似をするな!」
Fがビームソードを振るうと、永戸の剣を持っていた片腕が斬り飛ばされた。永戸は痛みで歯を食いしばるが、宙を舞うエクスカリバーを再び手に取ると、片手でも斬る。
「しぶとい奴め!」
Fが加速の力場で神速の斬撃を放つ。それが永戸の首筋を捉えるが、次の瞬間、零を使用してそれを上回る速さで永戸は背後に回ると、Fの背中を叩き斬った。
零のこもった一撃が当たる事で、Fの動きが少し鈍くなる。
「ただの家畜風情が!」
Fがキックをすると、永戸はそれを剣の刀身で受け止め、少し後ろに下がる、今度は神癒奈が斬撃を加えた。
「鬱陶しい!」
「褒め言葉として受け取っておきます!」
ビームソードで村正を受け止めようとしたが、斬れ味がまさったのか、ビームソードは二つに両断された。
Fはビームソードを捨てると、拳で神癒奈の持つ村正を弾き飛ばした。
「まだっ!」
神癒奈は次の武器、両剣の舞桜を手に取ると、クルクルと回転させながら斬る。
「焔月式両剣術、弐式!」
両剣の絶え間ない攻撃がFへと斬り込まれていく。Fはそれらを受け止めるが、焔が熱く感じるのか、少しずつ肌が焼けていった。
「火乃香!」
「はいっ!」
火乃香が脇から霊剣を突き刺す、停止の力場に阻まれるが、その時、永戸が片手でエクスキューターから対なり損ない用弾頭『血清』を撃ち出すと、それはFの停止の力場を突き破り、腹部に命中した。同時に火乃香の攻撃もFに当たると、零と白銀の両方の効果が発動し、Fから大きく力が削がれた。
「あぁあああっ! 力が、私の力が抜けるぅうううっ!」
Fが大きな隙を見せると、彼女の胸元の中央が蒼く輝いたのが見えた。恐らくそこが、神癒奈の力を取り込んだ心臓のある位置だろう。
「見つけた!」
神癒奈が飛び上がり、舞桜でその部位を引き裂こうとする。が……ここで限界が来てしまった。
「っ⁉︎」
蜃気楼と月光、両方を無理に使用したリバウンドが、ここできた。神癒奈の身体から力が抜けると同時に全身に強烈な痛みが走る。
「甘かった、わねぇ!」
Fが神癒奈の頭を潰そうと手を伸ばす。その時、永戸がその手を斬り飛ばした。
「この人間めがぁあああ!」
「行け! 神癒奈!」
強烈な痛み、それを堪えると、神癒奈はFの胸元に拳を突き出した。
心臓を奪う形で胸元に突き刺さると、そのまま心臓を引き抜き、彼女は握りしめた。心臓が握り潰されると。神癒奈の身体に力が宿り、元の力が戻ってくる。
すると、神癒奈の身体が再び輝き出した。
「くぅっ、しまった!」
Fの尻尾が一本へと戻り、同時に神癒奈の尻尾が九本へと変化し、身体が元の姿へと戻っていく。体内にエネルギーの炉心が戻り、膨大な魔力が流れ出す。
再び月光が宿ると、今度は蜃気楼ではない、本物の尻尾が焔で揺らめいた。
「私の力、返してもらいましたよ」
蒼い瞳がFを睨みつける。完全体で本気状態の神癒奈に、同じく本気状態の永戸、そして火乃香が立つと、Fは流石に勝ち筋を感じ取れなくなった。
「力を奪い返されるなんて……想定外だわ。これまで緻密に計画して、都市をおとす算段だったのに。
「ええ、神権で街の人も元通りにさせてもらいます」
神癒奈が舞桜を地面にコンコンと打つと、神権が発動し、街のあちこちにて光が起きた。これにより街中での戦闘が少しずつ収まっていく。
「……貴方の計画もおしまいです」
「おしまい? おしまいねぇ、ふふふっあっははは! まだ終わらないわ! こちらにはまだ、最後の手段がある!」
そうしてFは窓から身を乗り出すと、都市の空中にある戦艦の方へと戻っていった。
「まさか、無差別砲撃でもするつもり⁉︎」
そう神癒奈は思ったが、予想はその斜め上を行った。突如として飛行戦艦が変形し出したのだ。形を変えて変形していき、船尾は尻尾へと、船頭は頭部へと変形し、戦艦は巨大なロボット怪獣へと変貌した。
『これで、街ごと全て蹂躙してやる!』
怪獣から聞こえてくるFの声。それを見た三人はこう言う。
『はぁっ⁉︎ そんなのアリ⁉︎』
あまりにも衝撃的な事で、永戸たちは思わずびっくり仰天した。戦艦から変形した怪獣は、都市に降り立つと、口から吐く主砲と殴打、副砲にて、街を壊していく。
「えっちょっ⁉︎ あんなのどうします⁉︎ 街中ですし、私の力は使えませんよ⁉︎」
「と言うかそもそもあんなのに俺たちの攻撃が効くのか⁉︎ 今までとは桁違いのサイズだぞ⁉︎ 地球で見た怪獣の一回りも大きいぞ!」
「そんなこと言ってる場合⁉︎ 主砲がこっち向いてるよ⁉︎」
『え"っ』
怪獣が主砲をこちらに向けてきたのを見て、永戸は嫌な予感を察する。
「総員! ビルから離れろぉおおおおっ!」
永戸たちがビルから飛び降りると、同時に他の四課のメンバーもビルから降りていった。直後、主砲が炸裂し先ほどまでいた議会のビルは粉々に崩れ落ちた。
「あわわわわ!」
突然の自由落下に火乃香は慌てる。だが、神癒奈が永戸と火乃香二人を持ち上げると崩れ落ちるビルの壁面を滑りながら降りていき地面に衝突する前に停止の力場でなんとか凌いだ。
「ふぅ……なんとか助かった……な訳、ないですよね、まだ肝心の敵が残ってますし」
目の前で吠え立てる怪獣を見て、打つ手なしかと思う。その時だった。
【やぁやぁ英雄諸君、どうやら敵を追い込んだようだねぇ?】
憎たらしいフェレッタの声が通信から聞こえてくる。それに永戸は吠えるように答えた。
「今追い込んだけど追い込まれてる状況なんだ! あんなデカブツを真っ向から倒すだなんて聞いてないぞ⁉︎」
【あぁ知ってるよ、どうやらアレは戦艦でもあり機械の巨獣のようだねぇ、通常の手段ではどう足掻いても対処はできないだろう。普通なら手詰まりだ】
今もドカドカと街を破壊していく怪獣を見ながら、永戸達は通信を聞く。
【が、しかーし! 都市の技術を甘く見てもらっちゃあ困る! こんな事もあろうかと私は地下で切り札、いわゆる秘密兵器を開発しておいたのさ!】
秘密兵器? と永戸達は疑問に思う。一体アレにどう対抗するのだろうと永戸達は首を傾げる。すると、近くにあったイストリアの基地のグラウンドがら、何かがせりあがってきた。それは、例えるならば鋼鉄の巨人……もっと昔っぽく言えば、鉄の城……男の子なら誰もが憧れる"アレ"であった。
「おいおいおい嘘だろ……」
「あっははは、まさか……」
『人型巨大ロボットだってぇえええっ⁉︎』
その荒唐無稽っぷりに、永戸達は叫ぶしかなかった。




