奪還作戦開始
二日後、まともに食事が得られない難民達が暴れ回る中、四課のメンバーはエレベーター前に集まる……のだが。
「これが、装甲戦闘装備? 腕の部分だけ覆ってその他はただのパワードスケルトンじゃないか」
永戸達に渡された装甲戦闘装備だが、以前使われていた一級品のものではなく、悪質なパワードスケルトンに腕に装甲を被せただけのものとなっていた。
「なんだか走りづらいです」
小さな体ながら参加する事になった神癒奈もどこか残念そうにコメントする。するとフェレッタから通信が入った。
【あーすまない、地下で用意できる装備はそれくらいがげんかいだった。あとは君たちの努力次第だ】
「ちょっ!」
そう言い残すとブツっと電話が切られるあのマッドサイエンティストめ、こんな時に限って仕事をサボったなと永戸達は辟易する。
だが悩んでても仕方ない。全員がアーティファクトを持つとエレベーターに立った。
「皆、準備はいいね? 出撃!」
ユリウスの指示で、エレベーターのボタンが押され、上へと上がり始める。二日間、時間を空けていたのだ、都市が一体どんなふうになったかを考えると、皆奪還を胸に誓った。
他のエレベーターも上がっており、他は別の課が使っていた。
そうして上へと上がっていくと、都市の地上へと到着し永戸達は奪還作戦を開始する。
「GO!」
永戸の指示で全員が動き出す。パワードスケルトンは言うだけあって高出力で、ダッシュの速度もかなりあった。だが、彼らの前に獣人達が立ち塞がる。
『あれは……! ええと、なんだっけか? まぁいいや、殺せ!』
それらは一瞬戸惑いの様子を見せるが、即座に戦闘態勢へと入り、永戸達と戦う。
「フィーネ! こいつらは!」
「はい! 解析の結果、皆! 都市の住民です!」
「誰も殺さないで! 無力化だけに抑えてください!」
神癒奈の指示で、全員はアーティファクトを使わずに、ここの武装だけで無力化を行う。だが大抵はパワードスケルトンによるパンチだった。
「……前言撤回、普通に強い装備だこれ」
パワードスケルトンのパンチで吹っ飛ぶ獣人を見て、永戸はフェレッタが仕事をしてくれたとようやく理解する。だが僅かに動きが重く感じた。
「ビルまで走るぞ! あそこの奪還が第一だ!」
敵を次々薙ぎ倒しながらも先へ進む永戸達、だがその時、空中よりバイクに乗りながらXが銃火器を撃ってきた。
「アン! 分かってますね!」
「うん! 殺さないように、だよね!」
フィアネリスとアンフェリアが峰打ちで敵を倒す。この場で傷つけず航空優勢を取れるのはこの二人だけだ。リオーネの竜化は過剰火力に思えた。
だがそんなリオーネも腕と足を竜に変化させ、この中で数少ないパワードスケルトンなしの姿で戦っていた。
「ビルが見えたっすよ!」
桐枝の言葉で全員がここにやってこれたと思う。だが本番はこれからだ。ビルの中を徹底的に掃除し、制圧しなければならない。
「フィアネリスさん! 先行偵察を!」
「はい! 外壁から内部を隅々まで調べます!」
フィアネリスが全知によってビルの内部を調べ上げていく。その一方で四課はビルに突入すると、内部で敵X複数体と交戦する。
「チェスト!」
永戸が勢いよく殴り、獣人が壁に叩きつけられる。その隣にあったエレベーターに乗り込むと、永戸と神癒奈、火乃香は階層を上がっていく。
「まるで神癒奈を抹殺依頼から助けたときのようだな」
「何それ?」
「気にするな、昔の事だ」
最上階に到達すると、三人は降りて議会の部屋へと入る。すると、今までそこにあった議会の人たちは消えていて、代わりにFが禍々しい九尾の狐の姿で立っていた。
「あら? 貴方たち、みんなで揃って反撃にでもきたつもり? そんな付け焼き刃の装備で?」
「私の力、返させてもらいますよ!」
神癒奈は背中に背負われていた妖刀のアーティファクト『村正』を抜く。抜刀した時の振りで、壁に斬撃の痕が入った。それを見たFは少し驚くも、落ち着いた様子で向き合う。
「小狐がいくら集まっても狩の王の狐には勝てないのよ? それと、貴方は、誰? そこにいて、いないように見えるけれど」
「俺は誰でもない。死に損ないの亡霊だよ」
永戸はかつて絶望が自身にふるってきた剣、聖剣『エクスカリバー』を手に取る。最高峰の聖剣で、抜剣した途端に光が溢れ出した。
「そんな武器を揃えてきても、今の私はそこの小狐から力を奪った完全体。倒せるわけがないわ」
「倒せるさ!」
「私と永戸さん! それに火乃香が揃えば!」
三人で駆け出し、Fに対して斬りかかる。神癒奈がパワードスケルトンを軋ませながら、村正で斬るが、刀身を受け止められ、その場を斬るだけで終わってしまった。
「所詮、力を集めてもこの程度、貴方たちに勝ち目はない」
「そうでもないさ!」
永戸がエクスカリバーで三連撃を打ち込む。一撃目は肩の首、二撃目は肩の筋、三撃目は太ももの筋と、ピンポイントに弱点を狙う。だが……。
「っ!」
攻撃が届く前に受け止められ、永戸は驚く。その防御には見覚えがあった。
「停止の力場か!」
「小狐の力をそのまま使わせてもらってるの、ふふふ、どうでしょう?」
永戸はならばと零の力を解放し、力場にぶつけた。すると力場が砕け散り、永戸の攻撃がFに届いた。Fは血を溢れさせるが。傷はすぐに癒やされ、傷口がなくなる。
「今の私は不死の体、どんな手を使っても、貴方達では勝てないわ」
「それでも!」
火乃香が聖剣『カラドボルグ』を持ち、斬りかかる。だが、彼女はまだ未熟、簡単に払われると地面を転がった。
「……どうすれば奴を倒せるんだ、神癒奈ほどではないが厄介な敵だぞ」
「私も、どうしたらいいか……」
パワーと生命力が違いすぎる。神癒奈の力を取り込んだFがこれほど脅威になろうとはと永戸達は思う。
「言ったでしょう、勝てないと、貴方たち程度の力じゃ」
「……借り物の力で、何を言ってるんですか」
すると、距離をとった神癒奈が、そうポツリと呟いた。その目には、何か策があるのか、勝機を見出した目つきをしていた。
「私のエネルギーの炉心が心臓であったなら、その心臓を奪い返すまでです」
「そんな事、今の貴方の小さな体でできるの?」
「できます、私なら、貴方を超えられる!」
神癒奈はパワードスケルトンを腕以外外すと、村正を持ったまま、その場で力を込め始めた。
『月光!』
神癒奈がその言葉を言うと、空に月が映り、神癒奈にその力が託される。
「バカね! そんな体で、星からの膨大なエネルギーを受け止められるわけがないじゃない!」
「いいや、受け止めてみせます!」
神癒奈の身体が輝きだし、月光の力によって焔が溢れ出す。だが、その焔の溢れ出し方はいつもとは違い、一本の尻尾に残り八つの尻尾が生えたかのように焔がゆらめいた。身体にも焔のドレスが纏われ、膨大な熱量が彼女から溢れ出す。
「何だと⁉︎ 供給された魔力を、直接放射している⁉︎」
「神癒奈、その技術は……!」
「えぇ、永戸さんのアフターバーナーを参考に、私も真似をしてみました、言うなれば『蜃気楼!』」
体内から魔力ブーストを全開にし、直接供給された魔力を短時間ながらフルバーストで使用しているのだ、当然身体には負担はかかるはず、だが神癒奈は笑っていった。
「さぁ、見せてあげましょう! 追い込まれた狐がいかに凶暴になるかを!」
神癒奈は今だけ限定で蘇った全ての力を使い、Fに立ち向かうのだった。




