止まらない侵攻
「フェイタルポイント確認……」
その言葉で、まずは作戦の第一フェイズがクリアされたことを永戸達は確信した。事実、オメガは前面部、脚部と撃ち抜かれ、動きが止まっていた。だが……。
「注意! 相手の核に異常な反応を検知!」
「なんだと⁉︎」
フィアネリスの通達から、少し経つと、オメガが体を持ち上げ、再び動き始めた。
「冗談でしょう⁉︎ 三つのうちの二つの核を貫いたのですよ⁉︎ 一体どこに、体を動かす力が…⁉︎」
これにはフィアネリスも想定外だったのか、驚いては言葉をなくす。だがオメガが動いているのは事実だった。
「フィーネ! 状況を説明してくれ!」
「はっはい……! オメガは確かに二つの核を撃ち抜かれました、残るは一つ、後方部にある核です!」
Eフォンにそのデータが受信される。確かにオメガから二つの反応が消えていた、オメガは身体の後ろをドロドロと崩しながらも先へすすんでいる。その様子に、フィアネリスはある仮説を立てた。
「まさか、後方部にのエネルギーを前面と脚部に回して、意地でも都市に侵略しようとしている⁉︎」
その様子は的中しており、オメガの体内のエネルギーが、白銀砲弾で損傷した前面部と脚部に集中していた。先ほどまでのスピードやパワーとまではいかないが、オメガは歩みを止めない。
「狙撃班! 再チャージは⁉︎」
「今終わったところ!」
フェレッタから託された大型のバッテリーカートリッジ、それを使用してレールキャノンの充電率は最大まで高められた。次の射撃で決めようとコリーはスコープを覗く。
すると、オメガの口から光が溢れ出た。
「警告! ビームが飛んできますよ!」
「っ!」
オメガの口からビームが吐かれ、それはまっすぐ飛んでいき、それはコリーが撃つレールキャノンを貫いた。途端に巨大な爆発が起き、コリーとクレスは爆発に巻き込まれる。
「コリー! クレス!」
思わず永戸は叫んだ。二人は無事なのかと。すると、か細い声ながら、コリーの声が聞こえてきた。
「あっははは……こっちはなんとか無事……いたた……ちょっと体打っちゃったけど。クレス君が守ってくれた」
「隊長さん、俺たちは無事だ、だが最後の砲弾を装填していたレールキャノンがぶっ壊れちまった、まずい事になったぞ」
クレスとコリーの目の前には壊れて捻じ曲がったレールキャノンが鎮座していた。砲弾自体もダメになっており、次の射撃は見込めなくなっていた。
「作戦は失敗……撤退を提案します」
「……くそっ! 総員!」
撤退を……と言いかけたその時、都市の方から小型のロケットが飛んできた。それは空中でバラバラになると、一つの黒い武器ケースを、永戸の前に落とす。
「……これは⁉︎」
永戸はケースを開けると、そこには、大型の対物ライフルが中に入っていた。
ここで、永戸に通信が入る。
【やぁやぁ永戸君、都市から見た様子だと、作戦は失敗したようだね?】
「フェレッタ! 今はお前のつまらない話を聞いてる時間じゃない!」
【まぁ待ちたまえよ。倒す手段は何もなくなったわけじゃない、永戸君、君には以前、決戦兵器のテストを頼んだね? あの時使われた弾頭『血清』なのだが、この度正式に君専用の装備として認可が降りたよ】
こんな危機的状況に何を呑気に喋ってるんだと思うが、だが永戸はフェレッタの話を聞き続ける。
「隊長! 撤退の指示を!」
「待った! それで、血清が一体なんになるって言うんだ⁉︎」
【君専用のその装備だがね、ひょんな事から君がオメガに対しても有効と証明してくれた事で、試作型から正式採用型へと装備の開発が認可され、結果、君の装備が完成したのだよ。その装備を使えば、今のあのオメガも倒せるはずさ。さぁ、手を取りたまえ、対なり損ない用決戦兵器『エクスキューター』を】
永戸はエクスキューターと呼ばれる装備を手に取る。マガジンを確かめると、赤い血でコーティングされた弾頭のついた大型のライフル弾が装填されていた。
【君たちの幸運を祈るよ、ではでは】
そうしてフェレッタからの通信が切れる。永戸は大型ライフル、エクスキューターを手に握るとフィアネリスに指示を出した。
「フィーネ! どこでも構わない! 奴の一番脆い箇所に俺を飛ばしてくれ! 神癒奈はもう一度洛陽を!
「正気ですか⁉︎ それは戦術爆撃級の爆風の中に飛び込むということですよ⁉︎ マスター!」
「俺は正気だ! 今度こそ一か八かの賭けなんだ! 頼む!」
「ええい、仕方がありませんね!」
フィアネリスが舞い降りてくると、永戸を抱え上げ、空へと飛び立った。
「永戸さん! 本当にいいんですね⁉︎」
「最大火力をもう一度叩き込んでやれ!」
「どうなっても知りませんからね! 『洛陽!』」
そうして空から再び巨大な火球が降ってくると、オメガに命中し、大爆発を起こした。そうしてオメガの背中に再びぽっかりと穴が開く。
そんな爆風に吹き飛ばされそうになる中、フィアネリスはオメガの背中まで飛んだ、
「フィーネ!」
「はい! 行ってきてください!」
そうしてフィアネリスから降ろされると、永戸は爆発でむき出しになったオメガの背中の脆い部分へと落下していく。同時に、永戸はライフルを構えた。
「ターゲットロック!」
スマートロックによる照準で、狙撃銃の照準が補正される。落下しながらだが、これなら撃ち込める気がした。敵がなけなしの対空砲火のレーザーを撃ってくる。
片足がレーザーに貫かれ、ちぎれるが構うものか。
そして照準が合わさった時、永戸はトリガーを引いた。
「これで決める!」
次の瞬間、赤黒い弾丸がライフルから発射され、それがオメガの背中へとまっすぐ突き刺さり、内部へと撃ち込まれた。永戸は命中したかを確認する前にフィアネリスに回収されるが、次の光景を見た時、彼らは止まった。
オメガが頭を上げて弱々しく咆哮をしたかと思うと、そのまま倒れて、霧散していったのだ。それを見た永戸達は確信を得た。
「目標撃破を確認……都市の防衛は、成功!」
その言葉で、その場の都市の戦士達は歓喜の声を上げた。永戸はやりきったとため息をつくと、フィアネリスにぐったりと身体を預ける。
フィアネリスはそれを見てはくすりと笑うと、永戸を降ろしに地上へと舞い降りた。
「やった! やりましたよ! あの大型オメガを、私達は都市に侵攻される前に止められました!」
降りてきた永戸に神癒奈は思わず抱きつく。永戸はそれを見てはホッとするが、そういえば片足がなくなっている事に気づくと、そのまま二人で地面に倒れ込んだ。
「永戸さん?」
「疲れたな。こんな緊急事態にあったんだから、もうクタクタだ」
永戸はそう言っては微笑む。爆風で空はどんよりとしていたが、だが、今の永戸の気持ちは、晴々としたものだった。
こうして永戸達は都市に侵攻するオメガを撃破し、都市に一時の平和をもたらしたのだった……。




