こういうダンジョン系のお約束
ダンジョンの中に入った永戸達、中は薄暗く、明かりが少なかった。ので……。
『狐火』
ぽっぽっと火を灯し、道を歩いていく。神癒奈や火乃香は少しドキドキしていたが、永戸とフィアネリス、アンフェリアは落ち着いていた。
「お化け屋敷に来たわけじゃないんだぞ? 何故そんなにちぢこまる?」
「だ、だって似たようなものじゃないですか! 角を曲がればモンスターがいるかもしれないんですよ?」
「心配せずとも、地下三階の途中までは敵は出ないし、そんな高難易度ゲームみたいな待ち伏せはフィーネが探知してくれる。恐れることはないんだ」
そんなことを言いながらも永戸達は進むが、神癒奈達にとっては怖いものは怖かった。
「アン…絶対離れないでね…」
「火乃香はそういうのに弱いの?」
「弱いに決まってるじゃん! お化けとか、信じたくないから!」
「でもアンデッド系のモンスターはいるんだし、諦めてお化けはいることは受け入れなよ」
こっちの狐も震えていた。どうやら焔月の狐はそのなりの癖してお化けは苦手なようだった。
「永戸さん、何か気を紛らわす話をしてくださいよ」
「えー? 気を紛らわすって言われてもなぁ、フィーネ、なんかあったか?」
「ふむ、ではこういうのはどうでしょう? こういうダンジョンが関わる系のお話あるある」
それを聞くとあーっと永戸は閃いた。神癒奈に頼まれたんだ、まぁせっかくだしと永戸は言う。
「地球のゲームでな? "ダンジョン系"というのがあってな、入る度に構造が変わるダンジョンを深層奥深くないくまで攻略するっていう作品があるんだよ」
「なんで構造が変わるんですか?」
「謎だ、そこまでは知らん」
「ひぃいいいっ!」
いちいちやかましいなと永戸は思いつつ先へ進む。すると、カチッと何かを踏む音がした。
「あっ」
「どうしたんですか⁉︎ 今度は」
「しまったトラップだ……足のスイッチを踏んでしまった」
「おや大変ですね…ですが作動しないあたり、どうやら足を外した途端発動するトラップのようですね」
フィアネリスがじーっとトラップを見つめる。それを永戸がなるべく足を外さないようにして待ってると、フィアネリスは答えた。
「これは、性転換のトラップですね」
「……あのさ、ここ普通のダンジョンだよな? それってエロ本とかでよくあるダンジョンのトラップじゃないのか?」
「えろほん?」
「聞かなかったことにしてくれていい」
神癒奈が疑問を浮かべるのを見て、永戸は申し訳なさそうに目をそらす。それはそれとしてこのトラップ、発動されたらどうなることかと思う。永戸が巻き込まれることは免れない。だが他の四人まで巻き込まれて性転換されても困る。
というわけで……。
「マスターの犠牲は無駄にはしません……」
「永戸さん……ごめんなさい」
「おい勝手に殺すな、距離はしっかりとったな?」
四人が距離をとったのを確認すると、永戸はそっとトラップのスイッチから足を離す。すると、その場に急に煙が湧き出てきた。しばらくその場を煙が覆うが、永戸のシルエットだけははっきりと映った。
……のだが。
「マスター、大丈夫ですかー?」
「まぁ、怪我するわけでもない、俺は大丈夫……ん? なんだ? このひさびさに感じるいやーな感触は」
等身が小さくなった感じと声の聞こえ方が横の耳からではなく上から聞こえる感覚、そして妙なロリ声……もしや……と思い伸びた髪を見ると、黄金の髪に、そして腰の方を見ると一本の太い尻尾が出ていた。
「やっぱこの体かーーー!」
それは久々に味わった神癒奈の予備のボディーだった。女体化したらこの姿になるのかと絶望するが、幸いにも服装などは今の体に合わせて変化していた。
「永戸さん……なんて格好に」
「おいたわしやマスター……よよよ」
「お父さん、今の姿可愛いよ!」
「言うな! お前らは何も!」
コャーッと怒鳴るもこの体では色々と不都合が出る。イクセリオスは抜けず、リヴァンジェンスⅣと組み合わさったバスターソード形態でしか運用できず、ブレイズエッジⅡなども握れない、不都合だらけだ。
零は使えるが、小さな体故格闘も上手くできない。困る点だらけだった。
「仕方ない、このままでも先に進むか」
「切り替えが早いですね」
「こう対応しなきゃ、この仕事はやってけない、だろ?」
確かにと思いつつ一行はダンジョンの奥へと進む。
「それで? ダンジョンに定番のお話って他に何があるんですか?」
「他には、異世界転生者がダンジョンの主人になる話とかあるな?」
「例えば?」
「ある理由からダンジョンの持ち主になるんだよ、そのダンジョンに暮らしてたりとか、あるいはパーティ脱出の際の囮としてわざと落とされてひょんなことから強力な力を得て持ち主になったりとか」
「色々あるんですね」
そうして話していると、地下二階への階段が見えた。
「そういや? このダンジョンって地下何階まであるんだ?」
「五階まであります。今の所はちょうど半分、といったところでしょうか」
「ふーん……よし、さらに潜るぞ」
地下二階への階段を降りる。辺りはさらに暗くなり、狐火の灯りだけが頼りになった
「もうちょい明るくしたいな…今度はトラップを踏まない為に、ええと……『狐火』」
すると、神癒奈ほどではないが、ぽっと小さな焔が出てきた。
「火力調整すると単純な灯りになるなんて便利な術だよな」
「そうですね、基本の術ですけど応用がしやすいんです」
仄暗いダンジョンを少しずつ歩んでいく。するとフィアネリスが叫んだ。
「マスター危ない!」
「えっ?」
再びカチッと何かを踏む音がした。すると壁から突然槍が突き出てきた。
「のぉおおおおおっ!」
慌てて零を使用して回避する。フィアネリスの呼びかけがなければ串刺しになっていただろう……だが。
「いうのがワンテンポ遅いよ! なんで踏む直前で言うんだ!」
「これは失礼しました、地形も暗くトラップの探知にも慣れてないもので」
そうは言うが一瞬命が軽く散りかけた。もし前に立ってるのが永戸ではなかったら他ならば死んでいただろう。と、そう考えると、と永戸は話す。
「フィーネ? まさかとは思うが俺をトラップ探知機にしてないか?」
「まさかそんな、マスターを危険に晒す行為などするわけが……ねぇ」
「その目嘘だよな⁉︎ 確実に俺を探知機として使ってたよな⁉︎
目を逸らして汗を垂らすフィアネリス。それを永戸は追求する。が、ここで喧嘩してても仕方がない、前を歩いてて一番起こり得る死傷率が低いのは永戸と神癒奈なのだ。我慢するしかない。
フィアネリスに文句を言いつつも、一行はそのまま進んだ。




