こういうダンジョン系のお約束 その二
「あぁあああああ!」
ダンジョンの奥へ進み、いよいよ地下三階へと足を運んだ永戸達、だが、地下三階へ進む階段を見つけたときにトラブルが起きた。
永戸がまたもやトラップを踏みつけ、そうすると、急に背後から巨大な大岩が転がってきたのだ。で、現在彼らは地下三階を全速力で走っていた。
「ねぇ! もしかしてこれもダンジョン系のお約束なのぉおおおおお⁉︎」
「お約束どころかど定番! 古き良き古代遺跡探索系の作品には死ぬほど出てくるゴロゴロ岩だぁ! 喋ってる暇があるなら全力で走れぇえええええ!」
一行は探索やトラップなど知ったことかとどんどん奥へ走る。
身体強化や零などを使えば岩から逃れられるかもしれない、だが誰か一人がそれを使って逃げ延びたとしても他が助かるわけでもなし、振り返って停止の力場で止めようとしても間に合わない、と言うわけでバカな狐と天使達は全速力で走っていた。
「も、もう無理、あたし走れない……」
「アーーーン! こんなところで! こんなところで倒れないでくださいませ! 潰されて海苔みたいになっても良いのですか⁉︎」
ぐったりしたアンフェリアをフィアネリスが抱えて走る。元々アンは引きこもり故に肉体派ではなかった。こう言ったトラブルにはめっぽう弱い。皆必死になって走っていくと、曲がり角が見えた。
「曲がり角だ! あそこを曲がれば俺達は助かるぞ!」
そうして永戸達は曲がり角を曲がる。
だが……。
「なんでまだついてきてるんですかーーー⁉︎ 永戸さんの嘘つき!」
「俺だって知りたいよ! この岩、地面と壁を滑ってるんじゃないのか! 何か引っ掛かるものとかないのか⁉︎」
「っ! それです!」
引っ掛かるものと聞いて神癒奈はピンと思いつき、神権を使用して前方に小さな段差を作り上げる。
「飛び越えて!」
『うおおおおお⁉︎』
段差を飛び越えると、岩は段差と天井に挟まれ。動きを止め、そしてトラップとして元の場所へ戻るのか、光の中に消えた。
全員は生き残ったことに喜ぶが、ゼェゼェと息を吐く。
「もう嫌だ、宝箱とか求めるものか、こんなダンジョンもう二度と潜りたくないね」
「ど……同感です……もう何も期待は……っ?」
すると永戸達の目の前に、そこそこな大きさの箱がポンと置いてあるのを見つけた。これはもしや……と一同は思い、それに近づく、そして触れるかどうか確認して確かめると言った。
『宝箱だー!』
ここまで苦労してきた甲斐があったと思い、皆宝箱の蓋に手をかける。だがその時、永戸にある疑問が浮かび上がった。
「なぁ、これってワンチャン宝箱じゃなくてミミックという可能性はないか?」
「みみっく? なんですかそれは?」
「宝箱に化けて冒険者を捕食するモンスターだよ。フィーネ、探知を頼む」
「かしこまりました♪」
そうしてフィアネリスがじーっと見つめる。しばらく見つめて調べた後、彼女は指で丸を作った。
「探知の結果、100%シロ、普通の宝箱というのがわかりました!」
「おおー!」
一行は再びテンションが上がり、宝箱の蓋を開ける。すると中に入っていたのは……。
「……ですよね」
「うん、分かってました」
「期待して損した……」
「……スカね」
中に入っていたのは古い回復用のポーション一個だけだった。ここはまだ探索のされてる場所、おそらくは他の冒険者がいらないと残していったものだろう。永戸達は残念そうに箱を閉じると先に進む。
「あのさ、こういうのってさ、配信とかしないの?」
「配信?」
アンフェリアがそんなことを唐突に言い出す。火乃香はダンジョンに何故配信と疑問を浮かべると、永戸が答えた。
「この手のダンジョン系にはダンジョンで配信を行うという文化があってだな、まぁそこでトラブルに遭ったりはたまた助けられたりと色々あるんだが、そうして主人公は訳あって有名になってくというのがセオリーだ」
「時々思うんですけど、異世界って妙に技術が進んでたり遅れてたりしません?」
「それぞれの世界次第だな、世界によっては技術が一方こうだけ進んだのもあれば、割と原始的なのもある。光に飲み込まれた世界もあるし、闇に飲み込まれた世界もある。異世界というのは広いぞ、あれこれ見ても退屈しない」
そんなことを話しながら進む。すると、二課が通った後か、モンスターが倒れていたのを見つけた。
「さて、おそらくここからが未踏のエリアのようだな、気を抜かずに行こう」
そうして永戸達は奥へ奥へと行く。しばらく進むと、突然永戸はこんなことを言い出した。
「いつかだ、そう、いつかの話だ、四課から離れて、そんな異世界をのんびり旅をして、トラブルに巻き込まれたらあの手この手で解決して、あてのない旅をしたいと、俺は思うよ」
「それは……ふふっ、貴方らしいですね、戦いばかりの暮らしには疲れましたか?」
「あぁ、そうだな、正直疲れた。大戦で徴兵されるわ、四課で戦いまくるわで。俺はもう戦いばかりの暮らしには飽き飽きだ。異世界テンプレ的に言えば、"俺はもう戦うのが嫌になったから異世界を旅するスローライフが送りたい"だな」
永戸は振り向くとニッと笑う。それを見た神癒奈はおかしそうに笑った。そのまま地下四階へと入るが、そこは不思議な光景が広がっていた。
「これは…闘技場?」
一つの闘技場を囲うように、地下四階は一本の通路になっていた。その道を、永戸達は歩くが、闘技場を見ると、黒い巨体が見えた。それに対してフィアネリスが追及する。
「あれはキメラですね、あそこからして地下五階のボス……かと思われます。ですが、通常の個体ではありません、恐らくは……」
「あれは、オメガだよ」
火乃香の言葉で全員の疑問が確信に変わる。キメラからは生命的な恐怖感が出るオーラが出ており、いかにもな雰囲気で立っていた。
「おっ、四課がきてくれはった……と言いたいけど、隊長さん、なんか……ちっこくなってへんか?」
「トラップに引っかかった」
「解呪したいところですが、いかんせんそういったトラップ対策のアイテムは持ち込んでなかったゆえ」
「状態異常治しの薬とか持ち込んでなかったんか?」
「俺たちはその手のプロじゃない、お前らみたいに上手く呪いを解く方法を知ってるわけじゃないからな、だがまぁ……時間経過で解けるだろう」
永戸は地下五階への階段に足をかけると、そう言った。そして同時に、二課にこう忠告する。
「ここから先は俺たちの仕事、そうだろ?」
「あぁ、ウチらでは対処できなさそうな敵やからな、こっから先は任せるで」
「分かった」
地下五階に降りて、闘技場の門の前に立つ。門が開いては中に五人が入ると、門が閉じ、逃げ場は無くなった。そしてキメラが威嚇をすると、永戸は叫んだ。
「敵はキメラ型オメガ! 総員! 戦闘態勢!」
『了解!』
永戸達が武器を構えると、キメラとの戦いは始まった。




