ダンジョンへのいざない
休日、火乃香はアンフェリアと共にいつものギルド、エルデバの酒場に来ていて、二人でジュースを飲みながら喧騒を眺めていた。
「今日はやたらと賑わってるね?」
「そうだね、何かあったのかな」
ポテトをしゃくしゃく食べ、二人はギルド内の喧騒を見ている。するとそこにエルデバがやってきた。
「今日も冷やかしに来たのか、アンフェリア?」
「冷やかしも何も、あたし達に与えられる依頼とかないでしょ? 公務員なんだし。それに、ジュースとかの代金は払ってるから一応は客じゃん」
「はっはっは! 確かにそうだな」
高笑いするエルデバに、火乃香は気になることを聞いた。
「あの人達、どうして賑わってるの?」
「ふむ、それがだな、どうもこの都市の近くにダンジョンが生まれたらしい」
「だんじょん?」
火乃香は頭にはてなマークを浮かべて聞き返す。
するとアンフェリアが答えた。
「簡単に言えばお宝と魔物がある遺跡みたいなものだよ。でも、なんでダンジョンなんか急に?」
「都市の学術院が地層調査をしていたところ、たまたまダンジョンの入り口を見つけたらしい」
「ダンジョンってそんなたまたまで見つかるもんなの?」
アンフェリアはジト目になりながらジュースを飲む。
エルデバは依頼書を出すと、二人に事情を話した。
「今、そのダンジョンのお宝をめぐっては、都市のあちこちのギルドが争奪戦をしてるって感じだ、中は広いらしくてな、色々な探索者が深層まで潜っていってるのだが。いかんせん、モンスターが強くて探索はなかなか進んでないってところだ」
「ふぅん、うまく稼げてないんだ」
「残念ながらな、俺達も冒険者を送り込んだが、何人も返り討ちにあった。それに……ダンジョンの深層奥深くについて、ある噂があってな」
「噂?」
気になったアンフェリアはエルデバに聞いてみた。こういう時、噂と聞くと大抵ろくでもない物が来ると分かってはいたが、それでも好奇心がまさった。
「あぁ、噂によるとな……ダンジョンの奥底で、スライムの化け物を見かけたらしい」
「オメガを……?」
火乃香はその噂を聞くと、真実かどうか確かめたくなった。もし本当なら、このまま放置するわけにはいかないと。
「アン! そのダンジョンってところに行こう!」
「無理無理、あたし達は公務員、冒険者じゃない。仕事の電話が来ない限りは…」
と言ってると、ぷるるるると二人のEフォンに着信が入った。二人が同時にそれを開くと、その内容を見て目を見開いた。
「ダンジョンの…探索?」
「うげ……話してたらマジで仕事きた、世にいうフラグ回収じゃん」
仕事の内容はこうだ。ダンジョン奥地へと二課と共同して攻略していき、最終的にダンジョンの最奥にてオメガを撃破することだった。
二人はEフォンを置くと、火乃香は何が待っているのか興味津々になり、アンフェリアはため息をついた。
「どうやら、そっちの方に仕事が回ってきたようだな、いよいよ俺たちの出番はなしって感じか」
「まっ、サクッと片付けてくるから、ギルマスはあぐらでもかいてゆったりしてなよ」
とは言いながらも面倒くさそうにするアンフェリア。一方で火乃香は黙々とポテトを食べていた。
「火乃香はどうする? 今回の依頼」
「もちろん参加するよ、オメガを倒さなきゃだしね
ポテトを食べ終わると、食後のデザートまでもらおうとする火乃香。本当に仕事する気はあるんだろうかとアンフェリアは思うが、火乃香は未来から来た戦士だ、きっとやってくれるだろうと信じることにした。
「頼んだぜ、未来の英雄、お前らの頑張りを、俺は信じてるからよ」
「うん、頑張ってくる!」
「どうも」
そんなこんなで二人はダンジョンの奥へと入る事が決定されたのだった。
ーーー
指定の日となり、二人は永戸達と共にトラックで揺れながら目的地へと向かう。場所は都市の外郭で、所々にはモンスターがいて、ほんの少し危険地帯となっていた。
「そろそろ目的地だぞ」
「ダンジョンって私も入るのは初めてですね、どんなのが待ってるんでしょうか?」
「モンスターにトラップ、お宝、なんでもありだ。俺自身もこういう冒険者っぽいのあまりやった事ないから楽しみだよ」
永戸も行くのは珍しいのか、少し楽しそうにしていた。世界の命運を賭けた戦いに身を投じている割に、俗っぽい考えを持つものだと思われそうだが、彼らも戦士である前に人だ。ダンジョンとか聞いて盛り上がらない訳がない。
「フィーネ、ダンジョンの探索度はどうなってる?」
「探索度は50%を満たしはいる状態と言いますが、そこから先は強力なモンスターなどで阻まれているようですね」
「途中でダンジョンボスとかにでもあいそうだな」
そんな冗談を言いつつ、永戸らはダンジョン前の市場に到着した。市場ではダンジョン探索の冒険者に向けて商品が売られてたり、屋台が出てたりしていた。
「なんと賑やかな……」
「ここにいる連中は全部六番街で店を構えている冒険者向けの店屋さんだよ、こうやって店を開いては、ダンジョンに入る人たちのサポートをしたり士気をあげたりする便乗商法って奴さ」
そうして彼らは店が立つ中を歩き、部隊の集合場所へと集まる。そこでは、二課が既に準備に入っていた。
「神癒奈っちやないか、今日は探索の手伝い頼むで、特に一番奥のオメガを倒せるのはあんたらくらいやからな」
「はい、頑張ります!」
いつものように待っていたシグナイトと会話すると、永戸達も出発の準備をする。
「装備の不足はないな?」
「大丈夫、お昼の弁当とかも作ってきたから」
「火乃香が作ったのか? それは楽しみだ」
永戸はそれにほっこりすると、二課の人達とも会話し、情報を共有する。
「現在、このダンジョンは第三層の途中まで攻略されてます。ですが、その先はより強いモンスターがいるため、一般の冒険者じゃあ攻略が難しいとされてるようです」
「となると、俺らの出番か」
永戸は武器を取り出し、装着すると、他のメンバーも装備を整えた。
「まずは二課が先行します。四課はその後に来てください」
「万が一オメガとであったら俺たちに通達してくれ、そしてくれぐれも、交戦はせず逃げるように」
「わかりました、お互い、幸運を祈りましょう」
互いに挨拶を交わすと、四課の五人と二課のメンバーはダンジョンの入り口に立った。そしてダンジョンの扉が開くと、毒々しい色をした煙が溢れ出ると共に、下へ降りる階段が現れる。
「探索開始、ゆっくり進め」
そうして彼らは二課が先に入っていき、少し経つと四課もその中へと入っていくのだった。




