我は英雄フローレア也
フローレアが同郷のエルフ達の前に立っては勇者達から守るべく槍を構える。
「俺の剣が……⁉︎ 希少鋼でできた名剣が、一撃で⁉︎」
「フローレア、何故貴方が助けに⁉︎」
助けた側も攻撃してきた側もパニックになるが、フローレアは胸を張ってこう答えた。
「我が名はフローレア! 都市ミズガルズより出でし救世の英雄であり! この世の邪智暴虐を許さぬ者! 貴様は自らを勇者と名乗ったな! だが! 英雄であるフローを前にしてその名がどこまで通じるか! かかってこい!」
「フローレア…⁉︎」
雄々しく槍を振り回し、掲げると、フローレアは高らかに叫んだ。それを見ては他のエルフ達は驚くが、勇者の一味は武器を手にする。
「舐めた真似を…! ぶっ潰せ!」
先ほど剣を折られた勇者が予備の剣を抜くと、一味と共に斬りかかる。
「神癒奈殿! ここはフローにお任せを! その者達を村へ!」
「でも、フローレアさん! 貴方一人で大丈夫なんですか⁉︎」
「フローとて四課の一員、このような敵、恐るるに足らず!」
フローレアは襲いかかる勇者達の攻撃をいなしながら、神癒奈達を逃がしていく。
「一人で四人にかなうってのかよ! 笑わせる!」
「笑止! 勇者の名を語っておきながら悪虐を尽くすなど!」
勇者の一人の剣を弾くと、槍を突き刺し、肩を貫いた。
「なっ⁉︎ 力が抜ける…⁉︎」
「効くであろう! 白銀による一撃は!」
フローレアが槍を抜くと、そのままもう一度貫こうとする。が、槍を掴まれてしまった。
「っ!」
「今だ! やれ!」
勇者の男が仲間に指示し、一味の魔法使いがフローレアに魔法を浴びせようとする。だがここでフローレアは体をそらすと、足で男を蹴り、魔法を回避しながら掴んだ手を離させた。
「何をぼーっとしてる! 全員で畳み掛けるんだ!」
「おうっ!」
「はいっ!」
今度は斧使いがフローレアに振りかぶるが、彼女はそれをサイドステップで避けると、槍を切り上げた。
「あぁああっ!」
切られたところから血が溢れ出す斧使い、それをカバーするかのように今度は弓使いがフローレアに向けて矢を放つ。しかしフローレアは連続で放たれたそれらを全て弾ききった。
「なんだ、こいつ! ただのエルフにしてはやるぞ!」
「そうであろう、何故ならばフローはイストリアの異世界特別調査隊四課、そこに属しているのだからな! 『射抜け!』」
そう叫ぶと、能力で生成された矢が降り注ぎ弓使いに何度も突き刺さった。血が溢れて弓使いが倒れ、勇者達は残すは三人となる。
「てめぇええっ! 何がイストリアだ! そんなもの知るか! てめぇみたいな雑魚に勇者が負けるかってんだ!」
「くっ!」
剣使いの勇者がフローレアに向けて片手で炎の魔法を放つ。炎で一瞬くらんだ隙に、勇者は剣でフローレアを斬った。
「危ういっ! が……隊長殿達の剣と比べると、まだ甘い!」
剣が頬を掠めるが、フローレアは寸前で避けきると、槍を地面に突き刺し、空中に飛び上がると上から足を振り下ろした。
「喰らえ! 隊長仕込みの喧嘩武術!」
「んぐぁっ!」
勇者の頭に鉄製のガードがついた靴がめり込み、勇者はふらふらとその場で倒れかける。だがそれに耐えると、斧使いと共に剣と斧で一斉に攻撃を仕掛けてきた。
「槍が…⁉︎」
一度に振られた二撃によって、ガードに使われた槍が折られ、同時に剣がフローレアの胸部を斬る。
服装が斬撃が防いでくれたが、衝撃で吹き飛ばされ、木に叩きつけられた。
「へ……へへへ、手間かけさせやがって、さっさと殺してやるよ」
ずるりと崩れ落ちるフローレアの体、そこに勇者が剣を突き立てる。だが、剣がフローレアを貫こうとした途端、彼女はその件を手づかみで防いだ。
「なにっ⁉︎ なんてしぶといんだ!」
剣の刃がフローレアを貫こうとするが、フローレアはそれを両手でしっかりと持ち、抗う。
「まだ…!」
「あっ⁉︎」
「まだ負けてはおらぬ! フローレアは気高き英雄! 蛮族との戦いで、命を散らすような者ではない!」
フローレアがそう叫んだその時だった。光の線が通って行き、勇者の片腕を撃ち抜いたのだった。
「あぁああああっ!」
「っ⁉︎ 一体、今のは…」
フローレアが光が飛んできた方を見る。するとそこには、永戸がリヴァンジェンスⅣをバスターマグナム形態にして立っていた。
「そうだ、負けてない」
「隊長殿!」
フローレアも立てるようになったのか、剣使いの勇者を蹴飛ばすと、永戸のもとへ走った。
「無事か?」
「切られはしましたが傷はありませぬ! 村人は!」
「三人とも無事だ。皆お前のことを見ては驚いてたぞ、それに」
永戸がチラリと巻くと木の上から矢が飛び、勇者達の足や手を貫いた。
「ぐぅっ! くそう! どっから攻撃が来やがった!」
「この森はエルフが統治する森だ! 余所の悪しき者め! この森から出ていけ!」
他の守人のエルフが二人、助けに来てくれた。フローレアはそれに喜びを隠せない。
「村の者でありますか!」
「あぁ、でもまさか…あのフローレアが一人で戦っていたとは、信じられん」
「だが、彼女の勇敢さは本物のようだ、森を出て行った時のような姿とはまるで違う、戦士として育った」
矢を放ちながら、エルフ達はそう言う。永戸はフローレアに、分離させたリヴァンジェンスⅣを貸すと言った。
「フロー、剣の心得はあるか?」
「ありませぬ、ですが、隊長殿から借りた剣を振るえると言うのならば、フローは力を尽くしましょうぞ!」
永戸がイクセリオスを構え、フローレアがリヴァンジェンスⅣを構える。そして永戸が言った。
「お前に合わせる、任せるぞ」
「了解である!」
フローレアがトリガーを引くと、剣がブーストし勇者達の方まで飛んでいった。
「この野郎!」
斧使いが射抜かれた片腕が使えない状態で斬りかかるが、フローレアはその斧を勢いよく剣で弾くと、再びブーストさせ、一回転すると斧使いの首を刎ねた。
「よくも!」
魔法使いが呪文を詠唱しようとするが、その時、赤黒い稲妻がほとばしると、永戸が踏み込み、魔法使いの近くまで寄った。
「助け……!」
その心臓を、イクセリオスによって貫くと、魔法使いは即死し、残すは剣使いだけとなる。
「くたばりやがれ! あがっ!」
剣使いが片手に持つ剣で永戸に斬りかかるが、後方から飛んできたエルフ達の矢が、剣使いの足を貫くと、彼はガクンと崩れ落ちた。
「ひぃいいいっ! お許しをぉおおおっ!」
男はその場で降伏しようとするが、その時、フローレアが近づくと、彼女は言った。
「許されぬ、例えどう許しをこおうとも、死神の鎌は、振り下ろされなければならぬのだから」
そうしてフローレアは男を肩から斬り下ろした。その一撃を見たエルフ達はフローレアの成長を感じた。そして、それは永戸でさえもそうであった。
「……お前」
「今のは隊長殿の真似でありまする。かつて最初に、英雄を倒した時に言った隊長のセリフが、今でも焼きついてるゆえ」
だが、それはあの時とは違う、フローレアは覚悟を持って相手を殺したのだ
「……やはり、変でありましたか?」
「……いいや、強くなったな、お前」
かつて、英雄に選ばれようとしていた彼女とは違うと、永戸はそう思うと、フローレアを連れては村へ帰るのだった。




