閉ざされた村
フローレアの故郷のエルフの森、その中の村の村長の家にて、永戸達は尊重と座談をしていた。
「そうですか…貴方がたがフローレアの部隊の仲間達ですか、フローレアが何か世話をかけていませんか?」
「少し無鉄砲ですが、ちゃんと言うことは聞くいい子ですよ」
「隊長殿! フローはしっかり仕事をこなしております!」
「フロー、騒ぐ気持ちもわかるが一旦落ち着こう、な?」
フローレアが抗議するが、ひとまず落ち着かせた。でだ、と永戸は村長に聞く。
「それで、村長、この村と外界との交流についてはどうでしょうか?」
「確かに、いい提案ではあるわ、私達エルフは、この森の中を自治しながら暮らしてきたけど、外部からの助けが来るならありがたいわね」
「じゃあ…」
「でも、この森のエルフは、外の世界の人を怖がっているの、そう簡単には受け入れられないわ」
「…何故?」
外の世界を怖がる理由を問いかける。すると村長はこう答えた。
「私達は、先祖代々から森の中でずっと暮らしてきた。けれど、それは同時に外の世界を知らぬと言うこと、籠の中の鳥が檻を開けても広い空へ飛び立たないように、私達エルフは皆、外の世界が怖いのよ」
「なら、俺たちとの交流はどうでしょう? 俺達と関わって、少しずつ外の世界を知るんです」
「それもいいけど、村の者達は皆、貴方達を煙たがるでしょう、異端のエルフが連れてきた異端者として」
そう答えられるとうーんと永戸は悩む。何か彼らを惹きつけられる物はないのだろうかと。永戸が悩んでいると、火乃香が乗り出して言った。
「やらないよりはやってみてみんなの反応を見ようよ!」
火乃香の言葉で永戸はぴたりと止まる、そうだ、やらずに後悔するよりやって後悔しようと、彼は決断すると、村長に言った。
「確かに、まずはひとまず俺たちにできることをやろう、村長さん、いいですか?」
「いいわ、貴方達に委ねます」
「それじゃあ早速準備だね!」
火乃香が外に出ては荷車へと向かう。彼女の底抜けな明るさを見ると、永戸達もどこか癒される気がした。
「いい子ですね、あの子は」
「えぇ、あの明るさは俺たちにとっても眩しく思えます」
永戸達も外に出ようとするが、その時、村長に呼び止められる。
「少しよろしいですか?」
「なんですか?」
「最近、この森でよくない噂が立ってます。森の動物や魔物を乱獲しては、なんでも経験値? にする者がいると」
「…ふむ?」
永戸は今の話を聞いて、何やら嫌な予感がすると悟る。こう言う時、大抵永戸らに回される厄介ごとを。
「…気をつけておきます」
その言葉だけを残し、永戸達は火乃香の所へ行くのだった。
ーーー
「すみません、薬品や生活用具などは足りてますか?」
神癒奈とフローレアが荷物を抱えてはエルフの家一軒一軒を回る。他の皆は炊き出しに行ってて、今はこの二人が配達をしていた。
「フローレア? 忌み子のお前が、何故帰ってきたんだ」
だが、どの家に行ってもフローレアは受け入れられず、荷物も受け取りが拒否された。二人は村の隅で、座り込んでは話す。
「みんな受け取ってくれませんでしたね…」
「仕方がありませぬ、この森の住人は都市とは違って他を頼りにはしませぬ故」
「フローレアさんも…皆さんから嫌われてましたね、いいんですか? アレで」
「それは…仕方のないことである。フローは…異端者故」
だがそう話すフローレアの背中は、どこか悲しみを堪えているように見えた。
「…我慢しなくていいんですよ、本当は、皆から好かれたいってことを」
「……フローは、このままでもよいのです。四課の皆がいてくれれば、それで」
フローレアはそこでじっと堪える。すると、神癒奈が頭を撫でた。
「神癒奈殿?」
「フローレアさんは偉いです。皆に認められてもいいと思います。貴方は、都市と世界の平和を守ってる。立派な戦士なのですから」
「…すまない……少しだけ、泣かせて欲しい」
ポロポロと涙をこぼすフローレア。それを見た神癒奈は、優しい声をかけ続けた。
「……フローは、決して忌み子ではありませぬ! この力は、民を守り、世界を救うための力故!」
「知ってますよ、貴方が背負う覚悟も、戦う意味も、四課の人達はちゃんとわかってますから」
そうして話していると、エルフの村の若者達が通りかかった。
「あそこにいるのは忌み子のフローレアじゃないの?」
「いつものようにメソメソ泣いて、エルフ族の恥晒しめ」
そうしてフローレアを糾弾しようとするが、すると彼女らの背後から凄まじい殺気を浴びた笑顔を持つ天使が現れた。
「私達のフローレアさんに、一体何のご用で?」
「えっ? ちょっと今から躾を……ひっ⁉︎」
その場に現れたフィアネリスに気づき、エルフ達は悲鳴を上げる。笑顔が冷たく彼女達に突き刺さると、フィアネリスは言った。
「森で隠居暮らししかできない引きこもりが、次フローレアさんを侮辱したらその首を掻き切ってさらし首にしてさしあげます」
『ひぃいいっ! ごめんなさいー!』
そうしてエルフの女性たちは去っていく。それを眺めると、フィアネリスは神癒奈達に近寄った。
「あっフィアネリスさん。……何だか後ろの方が騒がしかったんですけど、何かあったんです?」
「いいえ、些事です。その様子だとどの家も受け取り拒否をされたようですね。こちらは炊き出しをしようと思いましたが、エルフ達から『乞食のような真似はしない』と怒られました、誇り高いと言いますか、あれではただの傲慢ですね」
「仕方がありませんよ、ここは復興地帯と違って、物資も食糧も何もかも行き届いている場所ですから」
神癒奈はフローレアを立たせると、三人で道を歩く。そうしていると、神癒奈の嗅覚が何かを感じ取った。
「っ? どうしたのでありますか?」
「……血の匂い」
「何をおっしゃいます。エルフの者達が狩りでもして……」
そう言おうとしてフィアネリスは止まる。フィアネリスも全知で血の匂いを追いかけたのか、何かの異常に気づいた。
「……神癒奈さん、この血の匂いは、獣から出た匂いではありません、人です」
「……獣じゃない、としたら……」
「えぇ、少々厄介な事態になったのかもしれません、私はマスター達を呼びます、神癒奈さんは、血の匂いをフローレアさんと共にたどってください」
「分かりました!」
「分かりもうした!」
フィアネリスと別れ、神癒奈とフローレアは匂いのする方へと向かう。するとその先にいたのは。何やら物々しい格好の四人の一味と、怪我をしたエルフ達だった。
「経験値稼ぎに来てみれば、上質なエルフと出くわすなんてなぁ? なぁに、心配するな、男は殺すが女はいただく」
「この…下賤な奴らめ!」
怪我をしたエルフの男性を守りながら、エルフの女性達は男性が持っていた弓矢を構え、一味に向けて放った。だが、その矢は命中する前に謎の障壁によって弾かれ、地面に転がってしまう。
「なっ……何なの、その力⁉︎」
「あぁ? 知らないのか? チートだよチート、俺達は勇者で、神様からこういったチートを貰っては、世界のために戦ってるのさ!」
「馬鹿は休み休み言いなさい! 民を傷つける者が、世界を守る存在であるはずがない!」
「ごちゃごちゃうるせぇ、なぁ!」
勇者の一味のうちの一人がエルフの一人に剣を振りかざす。殺されると思ったエルフは身を屈めるが、その時だった。
『砕けろ!』
その一言と共に突き出された槍が、傭兵の持つ剣を砕いたのだった。
「なっ何⁉︎」
「貴方は…フローレア⁉︎」
「……我がエルフの同胞を、傷つけさせるなどはしない」
フローレアが、エルフ達の前に立つと槍を構え、向き合ったのだった。




