仕事のない時の四課
異世界特別調査隊四課、目的はボランティアや異世界の破滅の阻止など多岐に渡るが、だが、彼らもいつも忙しいわけではなかった。
窓際部署と呼ばれるだけあって、時には仕事が入り込んでこない時がある。そんな時は…。
「みんなー、賭けポーカーの時間だぁ」
永戸が机の引き出しからトランプを取ると、皆でポーカーをやり出した。しかも現ナマをかけて。
「さぁ、ゲームを始めよう」
「なぁ…隊長さん…いくら課長らがいないからって職場で賭けポーカーはまずいんじゃないか?」
「課長は賭け事が嫌いですからね、ですが、いない間はこうして羽目を外すわけです」
トランプを手にポーカーをしていく永戸達、フィアネリスなんかもそれに参加しているが、第二支部組は呆れていた。
「はぁあ、火乃香ちゃんやアンフェリアが見たらなんていうのやら」
「おや、ならば書類の山と睨めっこでもしますか? こういう時間も悪くはないですよ?」
今現在、火乃香とアンフェリアは学校で、四課には社会人しかいない。そんな中でフィアネリスは手持ちの現金をオールインした。
「強気じゃないか、フィーネ」
「ふふふ、強い役が揃いましたので」
「なら俺は勝負を降りる、そっちがその気なら、一番安全な策を打つ」
永戸が降りる中、他のメンバーはベットしたり降りたりする。そうして出されたカードは…。
「ストレートです、いかがでしたか?」
フィアネリスがいい役を出し、他のメンバーはベットした事を後悔しながら現金を出していく。
「おほほ、懐が暖かくなりますねぇ」
「フィアネリス殿は勝負強いでありますなぁ。そのお金、一体どこで使うつもりでありますか?」
「本を買う時に使います、まぁ最も、それでも金は余るので基本的には貯蓄してますが」
「ギャンブルするくせにそういうところは律儀なんですね…」
「マスターと一緒に七番街のカジノで荒稼ぎしたら黒服の男達が現れて、全員ボコボコにしたら出禁を喰らったのもいい思い出です」
何だその物騒な思い出と第二支部組は思うが、よくよく考えればこの二人は規格外の能力持ちだ、悪用すればそんなこともできなくはないと考え、ゾッとする。
一方で南雲や煉禍たちはお茶を飲みながら暇な時間を満喫していた。
「仕事がないって退屈だけど、でもこれでお金がもらえるならコスパいいよね」
「ですね、戦わなくてもいいというのは素晴らしい事だと思います」
同じ日ノ本関係の異世界出身者故か、まったりとした時間を楽しむ二人。その一方で、神癒奈は羊皮紙と睨めっこしていた。
「神癒奈さんは一体何を?」
「んー? 神様の仕事ですね、転生者リストを眺めては転生許可を出すという仕事ですよ、今は代理で天界の天使達にそれを任せてます」
「神様、大変そう」
「最近は転生者も大人しい方が増えてきましたけど、神になってから最初の頃はとにかく酷い転生者を扱われてましたね」
二人からそう言われつつ、やれやれと思いつつ、神癒奈はリストに許可の印をつけていく。
「ちょっと見てもいいですか?」
「はい、大丈夫ですよ」
煉禍と南雲が転生者リストを眺める。そこには確かに、さまざまな人が転載することが書かれていた。
「神様も忙しいのですね」
「私のところはいいですよ、前に任務先で聞いた末端の天界なんてデスマーチだそうですからね、女神が過労で疲れる、なんて話もあります」
転生者リストの処理を終えると、神癒奈はお茶を飲んだ。時刻はもうお昼、昼ごはんの時間だ。
「今日は弁当持ってきてませんし、食堂のうどんでも食べましょうかね?」
昼ごはんのことを考えながら、一同はまったりと午前の時間を過ごすのだった。
ーーー
午後はパーソナルトレーニングの時間だった。永戸達はグラウンドで第二支部組と共に走る。
「ぜーっ…ぜーっ…もうだめ、走れない」
「何弱音を吐いてるんですか、走りなさい!」
「神癒奈殿! フローも、目が回ってきたであります…!」
「倒れたら一周追加ですよ!」
鬼と言われる中、彼らは走っていく。するとメルトがその場に倒れた
「ばたんきゅ……」
「メルトォオオオオ! 起きろ! 一周追加されたいのか⁉︎」
「止まるんじゃないですよ…」
「ダメだ! 伸びてる! 隊長さん! メルトを休ませてあげてください!」
「仕方ないなぁ、長距離ランニングは中止、小休止を挟んだ後は実戦形式のトレーニングを行う」
そう言われると第二支部組のほとんどがやったぁと思いながら地面に突っ伏した。
「これくらい、何ともないのに」
「煉禍…俺達はあんたらみたいな大戦経験者の戦闘民族じゃないんだ、こんなパーソナルトレーニングなんて第二支部ではなかったんだよ」
「でもついていかないと、いつか死ぬ事になる」
「南雲も適応が早いなぁ、俺羨ましいよ」
クレスがくたばる中、煉禍と南雲は汗を拭いてはスポーツドリンクを飲む。
「情けないぞ、そんなのじゃいざって時になり損ないの餌になるだけだ」
「隊長さん…無茶言わないでくれよ…俺は狙撃手だよ? いつ走るっていうんだ」
「逃げる時に決まってるだろう、狙撃手が狙われたら一巻の終わりだぞ」
「ステルスクロークとか言う便利な道具があるのに狙われるのかよ」
「当たり前だ、道具頼りもほどほどにな」
永戸達は倒れた第二支部組にスポーツドリンクを渡して休ませる。一方で呼吸の整った南雲と煉禍はモックアップの剣を取っては互いに素振りを始める。
「くそっ…フィジカル強者め…」
「フローは、もうおしまいであります…」
「だめ…動く力が出ない」
術師や狙撃手のメルトやクレスは兎も角、前衛を担当するフローレアまで倒れるとなると、永戸のトレーニングはよほどハードだったのだろう。彼女達は地面にべったりとくっつきながら疲れ果てていた。
一方で煉禍と南雲は、互いにモックアップの剣を取ると、武器を使った実戦トレーニングを既に始めていた。
「流石は大戦帰り、私も負けてられない」
「センスがいい……一歩も引けないな!」
互いに剣を打ち込み合う二人、強さは五分五分で、鬼と人狼であるだけあって、激しくぶつかり合っていた。
「神癒奈、俺たちもいつものトレーニングを始めるぞ」
「はい、そうですね、では剣を手に取ってください」
こちらは互いに信頼してるだけあってか、実体剣を手にしていた。そして互いに打ち込みを始めると、赤黒い稲妻と焔の揺らめきがグラウンドにてほとばしる。それを見ては第二支部組は思った。
(やっぱ本部はイレギュラーが多い…)
疲れて倒れたままの第二支部メンバーにとって、全力で特訓する彼らの姿は、どこか眩しく思えたのだった……。




