不時着した謎の船
翌日永戸らは早速ユリウス達に報告し、四課主導で二課も連れた調査活動を行うこととなった。勝手に契約をしたのは怒られたが、かといって、このまま放置するというのも許されはしない、
調査には案内役として段三郎商会の者も来ており、調査は大規模な形となる。さて、彼らが外郭に来て調べる船だが…。
「大きい……」
「こんなのが、いつの間に都市の外に不時着してたなんて」
都市から十キロほど離れた山の影に、宇宙船が横たわっていた。各部には穴が空いており、どこからでも入れそうだった。
「どの勢力にも属さない、外宇宙からやってきた未知なる生命体の船! これはまた、興味をそそられますね……ふへへ…!」
フィアネリスが涎を垂らしながら船を舐め回すように見る。この手の調査ならフィアネリスは本気で頼りになる。だがマシンノイドの時と同じようにこれも未知の文明、完全に解析できるかは分からない。
「神癒奈っち〜、入り口の通路の安全は確保したで〜、調査開始や」
そう言うのは神癒奈の友達のシグナイト、二課が来るという事は、当然彼女もきている。念の為の防護服も着て、彼女は入れる所から顔を覗かせては安全を確認した。
「ひとまず、入ってみましょうか?」
「そうだな、調査を始めよう」
そうして宇宙船内部の調査が始まった。まず中に入って感じたのは、この船がまだ墜ちて少ししか経ってないような所だった。電力は切れてないのか、中は明かりがついていた。
「これはまた、面白い船ですね、私の記録にも載ってません」
「フィーネの全知って、全知なのに時々知らない事があるよな、なんでだ?」
確かに、マシンノイドの時もそうだった。フィアネリスの全知は、その名をもちながら、全てを観測するには至っていない。
「私が観測できるのは、人が踏み入り、調べ尽くした範囲です。まだ見ぬ未踏の未知の文明や存在に関しては私の全知をもってしても分かりません、それに、観測をしなければ、未来を知る事もございませんし、未知の存在やイレギュラー要素が混ざると、未来は仮定できないXとなります。ですが、仮説程度ならば、いくつか立てる事はできます」
「それでも構わない、お前の頭にはいつも頼りっぱなしだが、こういう時に一番頼れるやつだと信じてるから」
あちこち火花が飛び散る宇宙船の中を、永戸達は進んでいく。フィアネリスは壁の配管やコードから、この船の動力がどうなっているのかを調べた。
「気づいているでしょうが、この船、不時着こそしてますが、動力そのものは生きております。幸い船自体は動くことなどはないと思いますが、居住区まで行くと、何か見つかるかもしれません」
「船内のマップは分かるか?」
「段三郎商会が調べた範囲ならば」
ここでフィアネリスが空中にマッピングされた地図を映し出した。その地図を見て、永戸は俗に言うメト○イドヴァニア的なものを感じ取る。
「こう言うのって、調べるうちに強化アイテムとかが出てくるのがセオリーだけど、段三郎商会は何か手に入れたんだろうか?
「その話にはノーと答えておきます。探索の痕跡を見た所、この船を調べたのは内部の60%、それも、どの区画も重要視されてない区画しか調べてません」
「じゃあまだ安心ってところか」
その言葉に、フィアネリスは一瞬首を傾げるも、永戸からあの後話された内容を思い出しては口に出した。
「マスター、契約すると言っておきながらあの狸を信用しなかったのですか?」
「そりゃそうだろ、お前の営業スマイルを一体どれほど見てきたと思ってる。あの笑顔はお前と同じ、なんか腹にいちもつ抱えてるような笑顔だった」
「あら、私が裏で暗躍するような言い回しですね? その発言、少々傷ついてしまいます」
「事実陳列罪だろ、お前は俺と神癒奈の為ならどんな騙す行為だってやるペテン師だろうが」
「決戦兵器の天使にペテン師と言ってのける貴方の精神もだいぶ闇を抱えてると思いますが?」
言ってろと思いつつ永戸達は、ひとまず調査された範囲の隅…開かない扉の区画にたどり着いた。
「ここから先がまだ未調査の場所です。ですが、我々ではセキュリティを突破できず、悩んでいたところです」
そう話すは商会側の狸、ほーうといいつつ、二課のシグナイトがひとまずドア周辺を探ってみる。
「このセキュリティ、電子キー方式か、構造も結構複雑や、民間の組織がこれを突破するのはなかなか骨が折れそうやな、まぁ、ウチらに任しとき」
そう言ってシグナイトは二課のメンバーを呼び、ドアの解錠作業へと入る。電子キーの認証板の蓋を開けてはコードが繋がれ、カタカタとパソコンをいじる。
「どうや?」
「突破できなくはありません、少し時間はとりますが」
「かまへんかまへん、その辺のものみるからな」
シグナイトの言う通り、永戸達は解錠がされている間、その辺りのものを調べた。
「と言っても、何も気になるものはありませんよね? 機械とかも下手に触ると危なそうですし」
「そうですね。ですが私は勝手に触ってしまいます」
「危なそうって私言いましたよ?」
フィアネリスが興味本意で近くのコンピューターにアクセスし、情報がないか調べる。未知の言語で書かれていたが、フィアネリスは一つずつそれを解読していくと、ある事が分かった。
「これは……ほう?」
フィアネリスが意味ありげな笑みを浮かべながら何かのファイルを覗く。そこに何が書かれているかは分からないが、フィアネリスが読むあたり、何か興味を引くものなのだろうと分かった。
「何か分かったか?」
「えぇ、どうやらこれはこの船の住民のログのようです。それにはこう書かれてました」
【船が不時着してから一週間、この船に何者かが立ち入ってきた。未知の生命体に、我々は恐怖し、船の区画を閉鎖し、立て篭もることにした。幸いにも備蓄ならある。他艦との連絡は欠かさず続けているが、近くの街に行った者達は今頃どうしているだろうか? 幸い、現地生命体はこの区画まで入る術を知らないらしい。ここで籠城を続けて、街に行った者たちが結果を出すか、他艦が来るか、どちらかを待つとしよう】
「なぁ…この話ってつまり…」
「都市には既にこの船の勢力が来ており、同時に、この先の区画には、惑星外生命体がある、となりますね」
永戸とフィアネリスは今扉を開けては不味いのではと察する。
「ドアの解錠、完了しました!」
その言葉を聞き、永戸達は顔を青ざめながらギギギと振り返る。
ドアが開くと、未知の区画への侵入が可能になった。永戸達は銃器を構えながらそろーりと侵入するが、中はやや薄暗く、不気味な感覚がした。
次の瞬間だった。奥の方でガタンと何かの音が聞こえた。永戸はライトをつけ、その方をまっすぐ見る。どうやらここは居住区画らしく。各部屋はぐちゃぐちゃになっていたが、ベッドなどが置いてあった。
「……な、ななな、永戸さん、こっちきてください」
神癒奈の震える声に、永戸はついていき、その先にいたものをじっと見る。するとそこには、全身毛で覆われた獣人が、こちらを見ていては立っていたのだった。




