休みのショッピング
休みの日に、永戸が玄関のポストからチラシを取ると。少し不思議なチラシを見つけた。
「…なんだこのチラシ」
見たところ、何かの百貨店のオープンセールのチラシのようだった。開店したのは一番街の住宅街が隣接する地域で、その百貨店の名前は…。
「妖百貨店?」
また何か変わった百貨店だなぁと永戸は思うも、こういうことは家事に詳しい神癒奈とフィアネリスに聞いてみる。
「どうかしました?」
「それが、変わった百貨店がオープンするらしい」
永戸は神癒奈にチラシを見せる。神癒奈はそれを見ると、首を傾げた。
「妖百貨店…妖怪達が経営する百貨店でしょうか?」
「見た感じはな、神癒奈はどう思う?」
「一番街の一等地に建てられてますし。結構な企業が関わってると思いますね?」
リビングに戻ると、二人はフィアネリスをひとまず呼んでみる。
「はい♪ いつも貴方のそばに、それで一体なんのご用件でしょうか?」
「コレなんだけどさ、このお店どうおもう?」
永戸達はフィアネリスにチラシを見せる。彼女はそのチラシを見ては解析をさせた。
するとフィアネリスはこんなことを言い出す。
「これは、日本の大妖怪、段三郎狸が経営する百貨店のようですね」
「段三郎って言うと、確か化け狸の中で一番偉いやつ、だったっけ」
「そうですね、でもそんな段三郎が、どうして百貨店なんか」
「狸は商売で縁起がいいですからね、起業でもしたのでは?」
フィアネリスがそう言っていると、玉藻前いつものロリ姿でリビングにやってくる。
「ん? お主ら何集まって見ておるのじゃ?」
「あー玉藻、それがだな」
永戸達はひとまずチラシについて説明した。すると玉藻前は苦い顔をする。
「うげ…段三郎じゃと? あの爺……こんな店開いておったのか」
「知り合いですか? 玉藻様?」
「知り合いも何も、奴とは腐れ縁じゃ。妾が王宮で国を動かす者なら、あやつは商いで国を動かす者、言わばあやつは裏の世界から国を牛耳る奴じゃ」
そりゃまた大きな話だと永戸達は思う。国を裏から操るとは、本当に大妖怪、大物なんだなと。玉藻前は彼について話し続ける。
「化かすのも妾より上手くてのう、狐七化け狸八化けと言うじゃろう? あやつは妾よりもしたたかで、食えん奴じゃった」
そんなことを言う玉藻前に、全員が納得すると、神癒奈はバッグの中にそのチラシを入れた。
「まぁ、買い物したいものが沢山ありましたし、折角だから買い物に行きませんか? そこへ」
「わざわざ段三郎の店に行くのか? 他に行く店があるじゃろう」
「折角チラシ貰ったんですから、活用しなくては、クーポンもついてますし」
「お主も中々したたかになったのう…」
神癒奈の提案により、永戸達は段三郎の店、妖百貨店へと行くことが決まったのだった。
ーーー
「で、きたのはいいけど……広くない?」
折角だからと連れてきた渚がそんなことを言う。永戸達はそれぞれ別れて百貨店のあちこちを歩いていた。
「おにぃちゃんは何か欲しいのある?」
「新作のゲームとプラモデルくらい…かな?」
「だよね、みゆにゃん達はそりゃあ、生活用品とか買い足したくなるけど、ボク達ズボラ組にはそういうのいらないもんね」
「ズボラ言うな」
店のあちこちを見渡しながら、二人は歩く。永戸は真っ直ぐ歩くが、渚はその周りをうろうろするかのように歩いていた。
「忙しない奴だなぁ」
「えへへー、だって、久々におにぃちゃんと二人の時間が作れたんだもん、実質デートだよ」
「お前は恋人じゃなくて家族だろうが」
永戸は渚の頭をデコピンするが、渚は照れながら永戸と歩く。
「今は邪魔者もいないし、おにぃちゃんとゆっくり時間を過ごせるね」
渚が腕に巻き付いては、永戸をすりすりする。側から見れば仲のいいカップル、或いは兄妹に見えた。
「折角だからさ、ボクと一緒に買い物満喫しようよ、ボクはおにぃちゃんとこうして時間を過ごせればオールオッケーだし」
「はいはい、ただ引っ付きすぎるな、目立つから」
二人は歩いては商品を見ていく。すると、いつも渚が飲んでいる特製エナドリがセールで売られてた。
「おにぃちゃん! ボクのエナドリあったよ! しかも今ならゲームとのコラボでアクリルフィギュアが貰えるってさ!」
「お前のエナドリって、お前専用じゃなかったんだ」
「うん、元々は魔族や妖怪が生命力を補給するために作られたエナドリだからね」
渚はそう言っては試飲用のを一杯いただく。永戸もそれを手に取ると不思議な顔で見た。
「コレって人間も飲めるのか?」
「飲めるよ。人間にはただの滋養強壮しか効果はないけど、味は保証するよ」
「ふむ…」
そう言われると余計に気になり、永戸は一杯ぐびっと飲んだ、瞬間、永戸の体内の狐の因子が反応し、いつもより体が軽くなるのを感じ取った。
「すごい、なんか元気がみなぎってきた」
「でしょー? ……えっ? ほぼ人間のおにぃちゃんにも効くの?」
「部分的には、らしいな」
体から力がみなぎる感じはする。普通のエナドリと違うのは確からしい。永戸は自分の分も手に取ると買ったのだった。
「気に入ってくれた?」
「まぁ、たまのデスマーチ中に飲む程度には」
二人は次の店へと歩く、次の店では和風のお菓子が売られていた。
「ゴマ煎餅だ」
「おにぃちゃんこう言うお菓子は好きだっけ? もっとポテチとかジャンクなの好きだったよね?」
「神癒奈が割と食べるんだよ、俺も好きでさ、二人でテレビ見てる時はこのお菓子の取り合いになるんだ」
「ボク以外のところでイチャイチャしやがって…」
渚は神癒奈との仲良し具合にむすっとする。だが、お前も食ってみろと永戸から試食の煎餅が口元に持ってかれると、渚はあむっとその煎餅にかじりついた。
「おいひぃ」
「だろ、こう言うお菓子も悪くないだろ」
「うん、なんか程よくしょっぱくて味わいやすい」
神癒奈のことなどすっかり忘れて、渚はぽりぽりと煎餅を食べながら、永戸達はそれを買った。
「結局ボク達もなんだかんだ買い物してるね」
「そうだな」
それからいろいろ巡って、気分がてらで二人でアイスクリームを買っては、フードコートで休憩する。神癒奈達がいたら豪遊するなと言わんばかりに買ったが、今回ばかりはオープンセールで許してくれるだろう。
「でもなんだか不思議な感じだよね、妖怪が経営する百貨店なんてさ、なんか裏がありそう」
「そう言うこと考えてると大抵フラグになって後々痛い目を見るからやめてくれよ…」
永戸はこれまで一体どれだけそんな目にあったのやらとため息をつきながら、アイスを食べる。所が、渚には何が見えているのか、本気そうな顔で言った。
「おにぃちゃんは気づいてないと思うけど、店員さんみんな妖怪だったよ」
「へーそっかー。……マジ?」
「大マジ、ここ、感じからして人が来る所じゃないね、おにぃちゃんはギリ狐の要素があったから入る条件は満たされてたけど、普通の人なら寄ってこない結界が敷かれてる。ここに買い物に来るのは亜人や魔族、妖怪とかだけだよ」
そういえば、このフードコートにいる人は確かにどれも普通の人間ではないと永戸は思った。亜人ならともかくとして、その他の種族が賑わっていた。
「おにぃちゃん、この感じマジで嫌な予感がするよ?」
「神癒奈達が何かに巻き込まれてなければいいが…」
永戸は神癒奈達を心配した。狐と狸の仲が悪いことは知っている。だからこそ、彼女らが段三郎の関係者に何かされないかと、心配になったのだった…。




